オーガスチン弦の怪(再掲)



先日知人から、以前のアノ記事がもう一度見たいのだが、見つからない…との問い合わせがあったので再掲する。この記事を書いた数年前の時点では多くのギター愛好家には初耳の話で、mixiの仲間内でも少々話題になったもの。現時点では多少アップデートが必要な内容もあるが、そのまま記しておく。

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◆ 黒・赤・青の高音弦はまったく同じもの
ギター用ナイロン弦の元祖;オーガスチン社の弦には古くから黒・赤・青のパッケージがあり、この順番でテンションが強くなる…というところまでは70年代からの共通認識であったと思うが、実はこの3種類の高音弦はまったく同じもの。テンションの違いはそれぞれの低音弦の違いだということに1年ほど前に気付いた。このことを話すと多くのギター弾きから「えっ?そうなの」と言われる。


black.jpg red.jpg blue.jpg


最近オーガスチン弦の黒・赤・青はダダリオ社プロアルテ弦の様なパッケージに変り、裏面には弦のゲージが記されている。高音弦の数字は3種類とも同じ。販売店でのバラ売り価格も同じ。同社HPによれば、この3種に使われている高音弦は<Classic>と称し、ローテンションだと記されている。その上のテンションに<Imperial>があり、さらにその上に<Reagal>があるとも書かれている。一方低音弦には<Black><Red><Blue><Gold>がある。この低音弦<Black><Red><Blue>が高音弦<Classic>と組み合わされてお馴染みの3つのパッケージが出来上がっている。これは最近になってそうなったのか、昔からそうなのかはよく分からない。

最新の弦テンション情報。2017年5月5日現在:Classic・Regal・Imperialの三つの使い分けがはっきりした。この表によると、Classic・Regal・Imperialの区分けは高音弦による。低音弦はClassic・Regal・Imperialとも各テンションごとに同じもの。つまり高音弦3種類、低音弦4種類の組み合わせで12種類のパッケージが出来上がっている。現代ギター社ならこれら組合せパッケージがすべて入手可能なようだ。
詳細はこちら → http://www.albertaugustine.com/classical

201705_Augustin_t-chart.jpg


◆ 不良弦が多いと言われるが…
また不良弦と多いと言われるオーガスチンの高音弦だが、その理由は「音質重視のため、古いデュポンの成型機を使い続け、音程を整えるための研磨を一切していないからだ」とAria創業者;荒井史郎著「ギターに魅せられて」に書かれている。しかし、最近のオーガスチン高音弦をみるといくらか乳白色に見えて、完全なクリアナイロンとは違うように感じる。もしかすると音程確保の研磨工程が入っているのではないかと思ってしまう。それにそもそも弦自体の音程不良より、押弦時の力の入れ具合による音程の変動の方がずっと大きいと感じていて、私自身は音程に関してオーガスチンの高音弦を気にせずに使っていた。

◆ 結局どうなのよ
この話、オーガスチン弦の黒・赤・青パッケージの高音弦は<Classic>という名のローテンション仕様でみな同じという件について決着をつけるべく、オーガスチン社のサポート宛にメールで問合せたところ早速返信があった。問い合わせた内容は「以前は黒・赤・青の高音弦はそれぞれ別物だったように記憶しとるが、いつから変ったんじゃい?」「ナイロンがやや乳白色に見えるが、以前はクリアで透明だったんちゃう?」という2点。以下がオ社からの返信だ。

Dear Maestro YOTA
Thank you for your message. No, the Classic trebles have always been the same. We merely added the information you saw online so that we might help our customers avoid confusion.
Also, we have not changed the Classic nylon formula, and yes, it is a bit milky. If you would like a crystal clear Augustine String, I suggest you try our Regal and Imperial trebles, coupled with your favorite Augustine basses!
Warm regards,
Stephen

…昔から同じだヨン。みんなが混乱しないようにサイトに追記したまでよ。仕様も変っていないヨン。クリアがよけりゃ、リーガルかインペリアル買ってチョ。…まあ、そんな内容だ。ちなみに国内ディーラー元締めの荒井貿易にも問い合わせてみた。以下が荒井貿易からの返信。

マエストロ与太様
お問い合わせいただきましてありがとうございます。
オーガスチン黒・赤・青の高音弦ですが、基本的に同じ物です。(リーガルはまた別です。)
これは以前からそうなのですが、オーガスチンがRED1弦などバラ弦もカラー別にパッケージを用意している事から別物という認識がされている場合が多いのが現状です。(当社も一時期まで別物という認識を持っていた時期もございました。)  色に関しましては、製造方法に関しては変更されておりませんので材料の微妙な変化だと思われます。ご参考になりましたら幸いです。

…基本的には同じ物です…<基本的には>少し前からよく使う常套句だが、じゃ<応用的には>どうなのよと突っ込みたくなるなあ。いずれにしても荒井貿易も気付かないで別物として扱っていたということがはっきりした。仕様についてもよくわかっていない様子。 そんなこととはつゆ知らず、長い間、大方の愛好家は黒・赤・青の高音弦は別物と思っていて、雑誌のコメントでもそれらしい表現があったり、我々もその違いを実感するような感覚を抱いてきた。クラシックギターの弦の評価に関してはオーディオ評論に近い、かなり怪しい世界のように思うことしきりだ。


◆ 更なる疑惑
その後同社のパッケージを見ていてまたぞろ疑問が出てきた。本当だとしたらかなりショッキングなので小声で言おう。実はオーガスチン高音弦<Classic>はダダリオ社プロアルテ弦のノーマルと同じではないだろうかと疑い始めている。そう思い始めている根拠は以下の3点。


R0012756 (480x480) string_A_Pro (480x480) R0012771 (480x480)


(1)パッケージが酷似
以前オーガスティンのセット弦パッケージは透明ビニール製の袋に入っていた。ところが1年程前からプロアルテのエコパッケージのような紙製の袋に入っている。しかもその形状、外形・切り欠き形状などがそっくりなのだ。但しパッケージの中の1本1本弦の包装は異なる。

(2)ゲージが酷似
プロアルテは以前からパッケージにゲージを表記している。一方オーガスチン弦はついこの間までゲージ表示をしていなかったが、(1)の紙パッケージになってから表示を始めた。インチ表示において小数第3位を四捨五入するとまったく同じ表記になる。

(3)弦の見た目が酷似
手持ちのデジカメで二つの会社の3弦を接写してみた。左からプロアルテ・オーガスチン、そして参考用にハナバッハの3弦を並べた。ハナバッハが完全なクリアナイロンなのに対して、プロアルテとオーガスチンはやや乳白色が混ざっていて、その度合いもほどんど区別できない。 もっともこんな素人のデジカメ写真で判定できるものではないが…


以上3点。もちろんいくらでも異論は出るのは承知だ。以前に記事にも書いた通り、オーガスチン社は弦の仕様は昔から変えていないというのだが、どうもクサい。売れ筋の廉価ノーマル弦に限ってプロアルテとオーガスチンは共通仕様でコストダウンを図っているのではないかと。 もちろん音が違うという意見が山ほど出てくるだろう。品質が比較的均一と思われる楽器(例えば河野ギターやヤマハ等)を2本用意して、同時比較出来ればその判定も可能だろうが、オーディオのブラインドテスト同様、音の記憶に頼る判定は中々難しいと思う。 


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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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