大萩康司Gt&小池郁江FL@横浜美術館
きのう水曜日は都内での仕事を昼で終え、予定していたコンサートへ。
大萩康司のギターと小池郁江のフルートによる…横浜美術館「ファッションとアート 麗しき東西交流」展に寄せて…と題された平日のマチネ・コンサート。


開催中の展覧会は…江戸末期の開港以来、横浜を一つの拠点とする東西の文化交流が、人々の生活や美意識にどのような影響を及ぼしたのかというテーマを、19世紀後半から20世紀前半のファッションと美術に焦点を当てて紹介する…ものとのこと。その展覧会に似つかわしいプログラムということで、大萩・小池両氏が選んだ曲は以下の通り。20世紀初頭から現代までの時系列を追いながら、理詰めではなく、時代の感性に響くような選曲が並んだ。
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イベール:間奏曲(1935年)
ドビュッシー:シランクス~パンの笛(1912年)※フルートソロ
武満 徹:海へⅠ~toward the SEA~(1981年)
ラヴェル(ロンラン・ディアンス編):亡き王女のためのパヴァ―ヌ(1910年)※ギターソロ
吉松 隆:デジタルバード組曲 作品15(1982年)
~アンコール~ラヴェル:ハバネラ形式の小品
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小池 郁江(フルート) 大萩 康司(ギター)
2017年6月14日(水)15:00~ 横浜美術館レクチャーホール
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ファッションがテーマの展覧会に寄せたコンサートということもあってから、小池郁江は黒のドレスの上から鮮やかな前結びのだらりの帯を下げ、大萩康司は古代日本をイメージする黒のセットアップ(イッセイミヤケ作品とのこと)で登場。曲が始まる前から聴衆のため息がもれる。
幕開き冒頭から疾走するイベールでスタート。この曲のエキゾティズムを殊更強調することなく、軽やかで流麗なフレーズが続く。小池郁江は循環呼吸を駆使しての演奏だろうが、無窮動風に際限なく続くメロディーをいとも軽々と吹き抜けていく。大萩氏のギターも曲の起伏に合わせて絶妙の音色配分を施し、音量乏しいギターのハンディを感じさせない。会場の横浜美術館レクチャーホールは完全にデッドなアコースティックであったが、ほどなく耳が慣れ、フルートとギターというコンパクトでフレンドリーなアンサンブルの良さをあらためて感じた。続くドビュッシーの「パンの笛」は弱音のコントロールが見事。ぼくはフルートにはまったく不案内だが、あれほど安定したピアニシモのロングトーンは並みのテクニックでは出来ないだろうと感じた。続く武満徹のアルトフルートとギターのために書かれた「海へI」。アルトフルートの深く渋い音色と、武満徹の透徹したハーモニーを聴いていると、当日の美術館ホールそのものが海になり、ぼくら聴衆がその深く青い世界に沈み込んでいくようにさえ感じる。大萩氏の愛器1962年作ロベール・ブーシェからは透明感ある高音と深い低音が響き、申し分がない。
昨年秋に亡くなったローラン・ディアンス編の「亡き王女のためのパヴァ―ヌ」は、ディアンスらしい和声の付加と大萩康司の音色コントロールが光る。今回のコンサートに誘ってくれたフルート&チェロ両刀使いの知人がコンサートのあと、「こんなパヴァーヌは初めて。ギターの多彩な音色は素晴らしい。」と絶賛。もちろんその通りだが、ギター弾きの視線で見ていると、いかにも難易度の高そうなディアンスのアレンジに内心落ち着かない。見知った楽器の演奏というのは純粋に音楽に浸るとのはちょっと違った要素が入ってきて良し悪しだ。
コンサート後半。小池氏は大萩康司のソロの間に緑の帯に替えて<お色直し>。会場からは二度目のため息。フルート吹きには人気のある吉松隆デジタルバード組曲は、オリジナルのピアノパートをギター用にアレンジしたもの。楽譜も出ていて、大萩康司は過去にもこの曲を何度か弾いている様子。今回小池氏との合わせは二度目とのことだったが、そんなことを感じさせない息の合った演奏だ。冒頭のフルートとギターのユニゾンによる高速スケールからしてアマチュア中級ギター弾きには手が出そうにない。現代曲ではあるが、吉松隆らしい歌、意表をつくアクセントや、リズムの決めどころなど、聴きどころ満載。それを名手ふたりが鮮やかに決めていく様は圧巻だった。
日本でもっとも都会的風景の一つ横浜みなとみらい地区で聴く、梅雨の晴れ間のマチネコンサート。耳にも目にも洒脱でファッショナブルな午後のひとときを堪能。終演後は、同行したフルート&チェロ両刀使いの職場の同僚にして小池郁江の高弟でもあるK氏、そしてその知人の某老舗楽器店幹部Y女史と共に隣接のカフェでひとしきり音楽談義のオマケもついて楽しい一日を終え、帰途についた。
武満徹 海へI
吉松隆 デジタルバード組曲抜粋。これはオリジナルのピアノ伴奏。当日のギター伴奏版もよく出来ていて聴き劣りしない。
★★追伸★★
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