きょうは昨日ほどではない程々の暑さながら湿度高く、仕事の帰途、いつも以上の疲労感でなんだかヘロヘロ。帰宅後、ぬるめの湯につかってようやくひと息ついた。幸い明日から三連休。少々散らかっていた部屋の片付けをしたところで音盤タイム。引き続きアンセルメ&OSR盤の検分。 本命フランス編・ロシア編も気になるが、今夜もまた<その他欧州編>のボックスを開けた。先日の記事 でベートーヴェンの第1・第3について書いたが、すでにベートーヴェンは半分ほど聴き終えた。さて、次には何を…と考え、独墺系の山をひと通り見渡そうかと、ブラームスを聴くことにした。このセットに収められているブラームスは以下の4枚。 Disc10 ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68 ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 Op.90 Disc11 ブラームス:交響曲第2番ニ長調 Op.73 ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a ブラームス:悲劇的序曲 Op.81 Disc12 ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98 ブラームス:大学祝典序曲 Op.80 ブラームス:悲歌 Op.82 ブラームス:アルト・ラプソディ Op.53 ヘレン・ワッツ(コントラルト) スイス・ロマンド放送合唱団・ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団 Disc13 ブラームス:ドイツ・レクィエム Op.45 アグネス・ギーベル(ソプラノ) ヘルマン・プライ(バリトン) スイス・ロマンド放送合唱団・ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団 交響曲・序曲は1963年9月、声楽入りの3曲は1965年10月の録音。今夜はこのうちDisk10をプレイヤーにセットした。 アンセルメ&スイスロマンド管というと必ず引き合いに出されるのが、このコンビ唯一の来日となった1968年の公演。それまでレコードでその素晴らしい音楽に触れていた愛好家が、実際のコンサートで聴いたこのコンビにいささかがっかりしとという逸話だ。いわく、あれは録音マジックだったのか、いわく、学生オケ並み…ある音楽評論がそんなネガティブな論評をしたとされ、今日まで言い伝えられている。また、彼らの本命はフランス・ロシアの色彩的な管弦楽曲であり、独墺系の曲には相応しくないとの声も、その後長く続いた。一方で90年代になってこのコンビのベートーヴェンやブラームスがCDリリースされた際、予想以上の関心を集め、実際のセールスも好調だったと、ものの本に記されている。もっとも、ここでまたこんな話を書くから、また引き継がれるのかもしれないが… あまり愉快ではないそんな話を思い起こしながらのブラームス第1… ラックスマンL-570のボリュームノブを11時頃に合わせ、CDプレイヤーD-500のプレイボタンを押す。冒頭のトゥッティに身構えていると、予想を上回る量感のオケサウンドが押し寄せて、思わず声を上げそうになった。テンポは中庸ないしやや遅め。ほとんど緩急を付けずにインテンポで進む序奏。これまで聴いたベートーヴェンより幾分くすんだ響きで、おそらく管楽群の響きを抑え気味にコントロールしているのだろう。それにしても量感豊かで堂々した開始に驚いた。主部に入っても、テンポをほとんど動かさない。強弱のディナーミクもあまり変化がない(そもそも、この曲のスコアをみると、慣習的演奏のテンポやディナーミクを変えている箇所で、実際は楽譜に何の指示もないことが多い)。 そして、ところどころでソロをとる木管群がややひなびた音で響く。へートーヴェンやハイドンでは、パッと飛びぬけるようなソロの音色だったものが、このブラームスでは明らかに異なる。 総じて、演出臭さがまったくなく、練習初日、ひとまず通してみようか、というときの感じに近い。もちろんアンセルメの指示や注文があり、リハーサルを経てのセッション録音だと思うが、それほどガチガチに細部まで決め、周到にチェックをし、という演奏には思えない。録音の日付まで確認できないのだが、おらそらく英デッカの注文もあって、せっせと録音を重ねていた頃のこのコンビの姿を反映しているように感じる。それをもって、細部の詰めの甘さ(細部のアンサンブルや木管群の音程など)を指摘することも出来るだろうが、それより、このコンビの素の姿がそのまま出た、のびのびした曲の運びを良しとしたい。第2楽章は弦楽群がよく歌うが、抑制が効いていて持ち味の明るさと軽快さがアダにならないよう配慮しているかのようだ。第3楽章もよくある演奏にように速めのテンポでせわしなく動くことなく牧歌的。終楽章はそれまでの楽章と少し異なり、テンポ・ディナーミクともに動きが見られる。弦楽群も木管やホルンも音に明るさを増してのびのびと歌い、堂々としたコーダに向かって勝利を謳歌する。 数学者だったアンセルメ。音楽への思い断ち難く、指揮者に転じるべく助言を求めたのはベルリンのニキシュとワインガルトナー。最初のコンサートはベートーヴェンプロ。アンセルメ=フランス物という図式はいささか作られたイメージの側面も否定できない。 この盤の音源。交響曲第1番ハ短調の全曲。VIDEO 同。悲劇的序曲。VIDEO ★★追伸★★ ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。 ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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台風一過で夏空広がる関東地方。梅雨明け以降、はっきりしない天気が続いていたが、少々遅れて夏本番到来。明日の予報は久々の猛暑日。まあ、でも程々に願いたい。さて、先週届いたアンセルメボックス 。本命のフランス音楽集・ロシア音楽集を差し置いて、もっぱらその他欧州編<The Great European Tradition>を引き続き検分中。今夜はその中からこの盤を取り出した。 ハイドンの交響曲を中心にした3枚。収録曲は以下の通り。 Disc15 ハイドン:交響曲第82番ハ長調『熊』 ハイドン:交響曲第83番ト短調『雌鶏』 ハイドン:交響曲第84番変ホ長調 Disc16 ハイドン:交響曲第85番変ロ長調『王妃』 ハイドン:交響曲第86番ニ長調 ハイドン:交響曲第87番イ長調 Disc17 ハイドン:交響曲第22番変ホ長調『哲学者』 ハイドン:交響曲第90番ハ長調 ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe-1 パオロ・ロンジノッティ(トランペット) フンメル:トランペット協奏曲変ホ長調 ミシェル・クヴィット(トランペット) いわゆるパリ・セットと称される第82番から87番の交響曲が並ぶ。のちの傑作ロンドン・セット(ザロモン・セット)に比べると、幾分小規模ではあるが、いずれもハイドンの熟練の技が光り、標題が付された第82番ハ長調「熊」と第84番ト短調「めんどり」を含め、聴き応えのある曲が並ぶ。1957~1968年、いずれもスイスロマンド管本拠地ジュネーヴ・ヴィクトリアホール(写真右)でのセッション録音(交響曲は1965年)。きょうはこのうちDisk15をプレイヤーにセットした。 アンセルメのハイドン?…と色眼鏡で見る向きもあるかもしれないが、どっこい、これが立派なハイドン。スイスロマンドの明るく聞達な弦楽群と個性際立つ管楽群、60年代に入りステレオ収録技術に一段と磨きのかかった英デッカの録音。そしてそうした素材を素直かつ堂々と引っ張るアンセルメの棒。期待をはるかに上回る快演だ。 第82番「熊」は第1楽章冒頭から量感豊かに響く弦楽群と、その合間をぬって楚々としたフレーズを奏でる木管群とが、曲に明快なコントラスト与える。堂々としているが大げさにならず、チャーミングな表情もあって音楽が単調にならない。この演奏のあと、定評のある大指揮者と名門オケの演奏を聴いたが、すべてが曖昧模糊とし、早々にストップボタンと押してしまった。第2楽章もAllegrettoの指示通り。歌い過ぎず、もたれることなく進む。第3楽章のメヌエットは恰幅のいいグランドスタイル。続く第4楽章とのコントラストも明快となる。序奏なしの劇的なト短調フレーズで始まる第83番「めんどり」もハイドン交響曲の傑作の一つだろう。ここでもスイスロマンドの明快な響きが際立つ。また他の曲同様、弦楽群と管楽群とのコントラストが際立っていて、ハイドンはこれほど色彩的であったかと、感じ入ってしまうほどだ。 近年ハイドンの交響曲は人気で、その理由はピリオドスタイルによる復興という側面もあるだろうが、それ以上にやはり曲自体がいいからだろう。100曲以上を数える曲のいずれもが職人的な技法でそつなく書かれている。ぼく自身の嗜好もあるだろうが、モーツァルトの初期交響曲はほとんど聴くことがなくても、ハイドンはいずれも捨て難い。アンセルメのハイドンは今回のボックスセット以外に単独でも出ている様子。ロンドン・セットのあとに何かハイドンを聴こうかと考えている輩には、パリ・セットを、そしてアンセルメ盤をファーストチョイスとして推してもよいかなと思う。 この盤の音源で第82番ハ長調「熊」VIDEO 第83番ト短調「めんどり」の第1楽章展開部の途中まで。LP音源。VIDEO ★★追伸★★ ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。 ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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昨年秋に拙宅へ遊びに来てくれた知人U氏 が、「与太さん、これ聴いてみてよ。」とCDを貸してくれた。 スペイン出身で現在オーストリー在住のアナベル・モンテシノス(1984-)のギター。2011年録音のナクソス盤。ナクソスはかねてより若手ギタリストの録音に積極的で、国際コンクールで優勝した奏者へのインセンティブという形でCDを製作し、新人実力派の発掘に尽力している。アナベル・モンテシノスは2002年タレガ国際コンクール、2010年ミケーレ・ピッタルーガ(アレキサンドリア)国際ギターコンクールで優勝、それを受けて最初のアルバムを2003年に、そして今回の録音と、共にナクソスからリリースしている。YOUTUBEでは以前から彼女の演奏に接していたが、きちんとCDで聴くのは今回初めて。二作目のこの盤の収録曲は以下の通り。 グラナドス~モンテシノス:詩的なワルツ集、ゴヤのマハ ファリャ~ベーレント:代官の踊り リョベート:クリスマスの夜、盗賊の歌、聖母の御子 ロドリーゴ:スペイン風の3つの小品(ファンダンゴ、パッサカリア、ザパテアード) キローガ~トレパト:タトゥー、おおマリア、緑の瞳 ソル:魔笛の主題による変奏曲Op.9 プホール:トナディーリャ、タンゴ、グアヒーラ 王道のスペイン物が並ぶ選曲。中ではキローガの作品が少し珍しい。ソルを除きいずれもスペイン近代の作品ではあるが、曲想は19世紀ロマン派プラス20世紀のスパイス少々。唯一古典期作品のソルが少々違和感がないでもないが、古典の解釈も聴けるという意味では悪くない選曲だ。 国際コンクール優勝者らしい切れのいい技巧とブリリアントな音。スピーカで聴いていると、サイモン・マーティー製ギターの特性もあってか、ふと二重奏かと錯覚するほど響きが豊かだ。表現としてはかなりロマンティックで、テンポ・音色とも積極的に変化させている。古典期での作品でこれをやられると鼻に付くところだが、ことスペイン物をモダン楽器で弾くということであれば十分納得の解釈。技巧に難があると、そうした解釈が<ごまかし>に聴こえることもあるが、その点はさすがに不安はない。 スペイン物らしいキャッチーなメロディーとリズム、わずかに効いた近代的な和声のスパイス。高い技巧と豊かな響き。モダンクラシックギターの今を聴くには好適のアルバムだ。 この盤の冒頭に入っているグラナドスの詩的ワルツ。おそらくこの盤の録音セッションでの光景。VIDEO 同。ファリャの三角帽子から<代官(市長>の踊り>。ジークフリート・ベーレントの版を使用。VIDEO ビジュアルも一級のラテン美女だ。VIDEO アナベル同様ミケーレ・ピッタルーガ優勝者で夫君のマルコ・タマヨと。 う~ん、仲良すぎるゾォ~!(^^;VIDEO ★★追伸★★ ブログランキングポイントは下降傾向。引き続き、下記のバナークリック<一日一打>のほど、お願いいたします。 ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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