夏の夜の妄想



八月も今週でおしまい。今月で夏が終わるわけではないが、なんとなく安定を欠く夏。不純な天候ばかりが報道される。これも夏型気圧配置が弱いことに起因するようだ。しっかりせえよ、太平洋高気圧! さて週明け月曜日。今夜は夏の夜の妄想を…

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しばらく、いや随分前からアンプ選びでしゅん巡している。
現有のラックマンL-570に特段不満はない。一昨年、予防保全を含むメンテナンスパックも施したから、当面不具合が発生することもないだろう。とはいえ、さすがに発売から四半世紀以上を経過している。そろそろ人生の行く末を考える歳になったこともあり、これからの人生黄金期の二十年(実態はそんなバラ色とは程遠いが)を共に安泰に過ごせるかどうかを考慮すると、バブル期の贅沢な設計思想で作られているとはいえ、ぼちぼち退役も考慮しないといけないと考えている。ダメになったらそのとき考えればいい、アンプがなくなるわけでもなし…。その通りではあるのだが、アンプの入替えはスピーカのそれとは違って音質が180度変わってしまうようなリスクは少なく、浮気をしても痛い目にあうリスクが少ない。つまりオーディオとしてのお楽しみ的要素が強い。音そのものが廉価モデルとさほど変わりなくても、デザイン、操作感覚、存在感などが選択の基準になるのも、道楽のお楽しみが由の世界だからだ。

この手の妄想の前提として、ひとまず懐事情は横に置くことにして…
現有機のレベルから考え、候補はプリメインの上位モデルかセパレートへの移行を考えている。次にどのメーカーにするかだ。同じラックスマンで行くのが妥当なのだが、ラックスマンのプリメイン上位機種に少々不安があることから、世評ではまったく異なる音質キャラクターのアキュフェーズを本命としている。プリメインならE-600(この機種はおそらく今秋モデルチェンジされるだろう)。セパレートならパワーアンプA-47+プリアンプC-2450(このプリアンプは出たばかりの新製品)が候補。このクラスのプリアンプにはレコード再生用にAD-2850というフォノモジュールが用意されている。優れたモジュールのようだが、価格もそれなり。フォノモジュールだけで国産の中級プリメインアンプが買える。プリアンプを一つ下のモデルC-2120にする手もあるが、こちらはオプションのフォノボードが現有のL-570より確実に見劣りしそうで悩ましい。もちろんそれぞれの機種のひとつ前くらいの中古という選択もアリだ。

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アキュフェーズは手堅い設計思想と継続的メンテナンスとで国内外オーディオマニアの強い信頼を得ているメーカー。外見デザインも安易に変えない。しかし、客観的にみると年商二十数億の小規模メーカー。大企業の一部門であれば真っ先に整理対象になりかねない規模だ。市場拡大がそうそう望めない本格オーディオの世界にあって企業活動の維持には苦労していると推察する。それが証拠に、安易なモデルチェンジはないというアキュフェーズの各モデルではあるが、実際はいずれも4~5年周期で確実にモデルチェンジをし、同時に価格もアップしている。モデルチェンジに際しては「最新の技術を投入し…」「全面的に見直し…」というふれこみがもちろん付くが、多くがマイナーチェンジの域を出ない。大きな技術変革は10年に一度くらい。最近でいえば、音量調整にAAVCと称する技術(入力信号を電圧一電流変換。その後必要なレベルに応じて電流加算したのち再び電圧レベルに戻す方式)くらいではないだろうか。それに加えて周辺技術として、音量ボリュームにメカとセンサーを組合せた操作感覚に優れたデバイスを投入したこと、スピーカへの接続回路の開閉を機械式接点のリレーからMOSFETの半導体スイッチに変えて信頼性とダンピングファクターを向上させたこと、小信号回路をパラレル動作させてSN比を改善したこと…くらいだ。アナログオーディオの主要回路に関しては、すでに技術革新はほとんどない証左ともいえる。そんなアキュフェーズではあるが、やはり日本オーディオ界でのリファレンスであることに違いはなく、数年ごとのマイナーチェンジと価格アップも、アキュフェーズ存続のための応援費用と考えるのが妥当だ。

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気になるメーカーは他にもある。
漆黒のフロントパネルにブルーアイズのマッキントッシュの存在感はどうだ。過去何度か身売りを繰り返して経営主体は変っているようだが、そのデザインと音質のポリシーはアキュフェーズ以上に一貫している。こちらも数年ごとにモデルチェンジをし、価格もアップしている。プリメイン上位機種は最近MA9000がリリースされた。しかし45キロを超えるその重量は、衰え行く老体を考えると諦めざるをえない。そこまで考えるなら、マークレヴィンソンやクレル、ジェフローランドはどうか。いや、いくつかの国内ガレージメーカも個性的な製品を出している等々。おっと、球アンプを自作という道もあるが、小学三年のときからラジオ工作で真空管と付き合い、三球ラジオ(三球・照代にあらず)からオールウェーブ受信機にSSB送信機、各種アンプと十分遊んだので、もう球はいいかなと。

オーディオ選びで悩んでいます…という質問に対して<識者>から必ず出てくる答えが「試聴してご自分の耳でよいと思いものをどうぞ」というものだ。その通りだろう。しかしスピーカならともかく、ことアンプに関して、音質の良否、自分の好みとのマッチング等、静寂良質な試聴室であっても判断できる自信はぼくにはまったくない。従ってアンプに関しては、もっぱら機能と面構え、操作感覚で選ぼうと考えている。アンプは見た目が100%。でも35億も存在しない…こうして妄想はいつ果てることなく堂々巡りを繰り返す。

横浜に本社工場があるアキュフェーズ社。誠実な日本のメーカイメージそのものだ。


マッキントッシュMA9000



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プチ本番予定



mixiのコミュニティーに<クラシックギター・プチ発表会>というものがある。人前で弾く機会をもって、日頃の成果を発表するもの。練習の励み、場慣れ、といった副次的目的もある。主催者が適当な会場を押さえ事前告知、参加希望者はエントリーして当日現地集合。15~20分の枠で好きなように弾く。参加者は演奏者であると同時に聴衆。互いに弾き、聴くという、ごく内輪の地味といえば地味な企画だ。それでもギター人口の多い関東一円では京浜地区を中心に毎週何箇所かで開催されている。ぼくは2011年にひょんなことからmixiに入ったのをきっかけに何度か参加したのだが、ここ数年すっかりご無沙汰。たまたま今月末に当地で開催の報があったので久々にエントリーすることにした。


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…とはいっても、日頃の練習もしていないし、常備している手持ちの曲もない。20分の時間枠を埋めるべく、何とか楽譜を追いながら止まらずに弾ける曲でいこうかと思案中だ。楽譜の棚をざっと見回し、過去に弾いた曲もあたり、バッハのチェロ組曲第1番の抜粋をメインにすることにした。プレリュードとサラバンド、それとメヌエット1・2。これで9分程度。あとは昨年いくつか演奏動画をアップした佐藤弘和氏の小品か、あるいはソルの小品をいくつか弾こうかと考えている。

チェロ組曲をギターで弾くにあたっては、まず楽譜の選択が必要だ。全曲版として手元にあるのは、40年以上前に世界に先駆けて出た小船幸次郎版、同じく日本人の佐々木忠による十数年前に出た版、Melbay社のイェーツ版、それと原曲チェロ版(ベーレンライター版)がある。原曲のチェロ版からの編曲に当たってはギターでの調の選択と、ポリフォニックな処理としての音の付加が鍵になる。先日来それらの版を見比べながら第1番を弾いているのだが、どの版にしようか決めかねている。佐々木忠版は原曲ト長調に近い一音違いのイ長調を選び、更に低音の音域確保のためイ長調ながら6弦をDに下げている。その結果、全体に落ち着いた響きでチェロによる原曲の音響イメージ近い。イエーツ版はハ長調。原曲への付加音が比較的少なくすっきりした印象で悪くないが、ハ長調という調性はギターでは案外弾きにくいところがある。今のところ全曲版先駆への敬意を込め、小船幸次郎版で弾こうかと思っている。本当は第1番全曲を弾きたいのだが、小船版のアルマンド、ジーグは付加音された音がかなり多く、しかもそれらの不自然さがどうしても気になってしまいパス。上記の3曲に留める予定だ。


数年前にmixiの集まりで弾いたときの音源。このときも第1番から抜粋でプレリュード・サラバンド・メヌエット1/2を弾いた。途中何度も止まって弾きなおすという<あってはならない>失態を繰り返してしまった。こっぱずかしいけど貼っておこう(^^; 楽器は英チャペル社オリジナルの19世紀ギター(1860年頃)。アクィーラ社の19世紀ギター用ナイルガット弦(アンブラ800)を使用。室内騒音多し。クッション付きの椅子の座り心地が演奏には最悪で、往生した記憶がある。



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バッハで初見練習



ギター弾きの中には、ソロを弾いているときはかなりの難易度の曲を弾きこなしているにも関わらず、ちょっと二重奏で遊びましょ、と楽譜を広げて合わせると思いのほか弾けない輩が多い。あれだけ弾けるなら、このくらいの二重奏は初見でいけるだろうという当てがまったくはずれることがしばしばだ。他の弦楽器や管楽器の連中に比べ、ギター弾きの初見能力が格段に低い現実をみると、彼らとの差を痛感する。


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初見に強くなる方法については、おそらくネットに様々なアイデアやノウハウが出ているだろうから、それらを参考にするのもよいだろうが、やはり基本は多くの楽譜に触れることだろう。以前、スケール練習についての記事を書いた。その中では、マンドリンやヴァイオリン向けの教則本に出いているエチュードも有効だと記したが、先日YOUTUBEでこれはいいかも…というものを見つけた。まあ、もったいつけるほどの話ではない。以下の貼った楽譜付きの音源に合わせて、その楽譜を弾くというもの。

例えばこれ。バッハの協奏曲ト長調BWV980。画面上に流れる大譜表の上段を音源に合わせてギターで弾く。調性もギターで弾きやすい調だし、ほとんどがローポジションで弾ける。旋律楽器のエチュードに比べ、和音を基本とした音形が多く、ギター曲によくあるパターンが盛り込まれている。余裕があれば、下段の低音も所々入れる。32分音符の速いパッセージなどは飛ばしてもよいだろう。多声になっているところ、密集した和音などで無理がある部分は、とっさの判断で重要度の低い音を省略する。


もう一つこれはどうだろう。同じくバッハの協奏曲ロ短調BWV979。こちらもギターで扱いやすい調性だし、音域も低い。ここでも、多声になっているところ、密集した和音などは、いくつか音を省略してもいいだろう。



いずれも、音源と同じ速さで、ともかく止まらずに弾き通す。画面では赤いマーカーがあるので、落ちることはないだろう。ぼくなりの判定基準では、この2曲が音源のテンポで一緒に弾き通せれば(もちろん初見で)、<初級に近い中級レベル>は合格かなと思う。ソルのやさしい二重奏程度は初見で合わせられるだろう。おそらくまともなプロ奏者なら、二段譜を合わせて程々に音の取捨選択をして、適切なテンポで独奏曲として弾けるに違いない(もちろん初見で)。

以下はヤマハが設定した初級の初見課題例。初級者なら一応音を間違えずに出すレベル。中級者なら、曲の構成(形式)、テンポ等を30秒程で把握し、曲想は弾きながらナチュラルに引き出す…という感じかな。
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カリン・シャープ(G)



先日の記事に書いたアナベル・モンテシノス。彼女のCDと一緒に知人U氏からお借りした盤がもう一枚あった。…U氏、どうみてもジャケ買いだな(^^;


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ドイツ生まれで現在オーストラリア在住のカリン・シャープ(1973-)のギター。独白(Soliloquy)と題された盤。彼女のデビュー盤にあたる。1995年に録音され2002年にリリースされている。収録曲は以下の通り。

1. 深想(バリオス)
2. ワルツ第3番(作品8より)(バリオス)
3. ワルツ第4番(作品8より)(バリオス)
4. ソナタ(ホセ)
5. ステレ(記念碑)(ホートン)
6. 舞踏礼讃(ブローウェル)
7. ギターのための4つの気晴らし(ブラカニン)
8. ダンサ・ブラシレーラ(ブラジル舞曲)(モレル)

このブログではもっともらしくギター弾きを自認して与太記事を書いているが、ぼくは昨今のギター事情にはまったく疎い。今をときめく人気ギタリストについてもまったく不案内。カリン・シャープも今回この盤で初めて聴いた。1995年の録音からすでに20年余が経っていること、またこのデビュー盤のあともコンスタントにアルバムをリリースしていることから、すでに中堅奏者という位置付けになるだろう。彼女はドイツで生まれ、5歳で母親の手ほどきでギターを弾き始めたそうだ。8歳のときオーストラリアに移り住み、10代でいくつかの国際コンクールで入賞して世界的なキャリアが始まったと、この盤のライナーノーツに記されている。この盤に収められている曲は、いずれもギターの特性を生かした技巧が盛り込まれているが、どれも高いレベルで難なく弾き切っていて、世界的にもトップレベルの一人であることがすぐに分かる。

収録曲のうち、19世紀的手法で書かれているバリオス作品をのぞくと、いずれも20世紀の音楽。ブローウェルは前衛的要素を含むが、それ以外は調性感もしっかりしたモダンな和声と、ギター特有の技法を盛り込んだ佳曲が並んでいる。モーリス・ラヴェルに賞賛されながら、スペイン内乱で短い命を終えたアントニオ・ホセ(1902-1936)のソナタはレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサが1934年に第1楽章のみ初演を行ったものの、その後忘れた存在だったが、1990年に楽譜が出版された。このカリン・シャープの録音がこのソナタの世界初録音だと、何かで読んだ記憶がある。曲の規模、内容からしても、20世紀のギターソナタとして定着しつつある曲の一つだ。イリーナ・クリコヴァも2009年録音のナクソス盤でこのソナタを録音している。ホールトン、ブラニカンという二人のオーストラリア人作曲家の作品は、いずれもこの盤で初めて聴いた。このアルバムに付された「独白」というタイトルをそのまま音にしたような作品。ともに4つ楽章から構成され、それぞれが異なる心象風景を語るような作品。調性感は強く聴きやすい佳曲だ。

この盤を聴き、そしていくつか見たYOUTUBE音源から、彼女の技巧レベルが極めて高いことが分かる。この盤でも、高速パッセージ・ポジション移動・トレモロ等、いずれもまったく不安を感じさせない。優秀な録音がとらえたその音も、いかにも現代的なクリアーでキレがあり、また低音から高音まで豊かな響きに包まれ、申し分がない。ライナーノーツによれば使用楽器はサイモン・マーティーの1995年作とのこと。偶然だが、イリーナ・クリコヴァそして先日記事に書いたアナベル・モンテシナスも同じサイモン・マーティーの楽器を使っていて、90年代終わりから現代までサイモン・マーティーの楽器はプロ奏者御用達の一つとして定着している感がある。もっとも、たまたま見たカリン・シャープの動画によると、最近になってアナ・ヴィドヴィッチと同じジム・レッドゲートに変えたようだ。


アルベニス<アストリアス> 音を聴く限り、何箇所か編集カットされているようだ。


歌伴も


カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲


アントニオ・ホセのソナタ



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アンセルメのブラームス



きょうは昨日ほどではない程々の暑さながら湿度高く、仕事の帰途、いつも以上の疲労感でなんだかヘロヘロ。帰宅後、ぬるめの湯につかってようやくひと息ついた。幸い明日から三連休。少々散らかっていた部屋の片付けをしたところで音盤タイム。引き続きアンセルメ&OSR盤の検分。


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本命フランス編・ロシア編も気になるが、今夜もまた<その他欧州編>のボックスを開けた。先日の記事でベートーヴェンの第1・第3について書いたが、すでにベートーヴェンは半分ほど聴き終えた。さて、次には何を…と考え、独墺系の山をひと通り見渡そうかと、ブラームスを聴くことにした。このセットに収められているブラームスは以下の4枚。

Disc10
ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68
ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 Op.90
Disc11
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 Op.73
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
ブラームス:悲劇的序曲 Op.81
Disc12
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98
ブラームス:大学祝典序曲 Op.80
ブラームス:悲歌 Op.82
ブラームス:アルト・ラプソディ Op.53
 ヘレン・ワッツ(コントラルト)
 スイス・ロマンド放送合唱団・ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団
Disc13
ブラームス:ドイツ・レクィエム Op.45
 アグネス・ギーベル(ソプラノ)
 ヘルマン・プライ(バリトン)
 スイス・ロマンド放送合唱団・ローザンヌ・プロ・アルテ合唱団

交響曲・序曲は1963年9月、声楽入りの3曲は1965年10月の録音。今夜はこのうちDisk10をプレイヤーにセットした。

アンセルメ&スイスロマンド管というと必ず引き合いに出されるのが、このコンビ唯一の来日となった1968年の公演。それまでレコードでその素晴らしい音楽に触れていた愛好家が、実際のコンサートで聴いたこのコンビにいささかがっかりしとという逸話だ。いわく、あれは録音マジックだったのか、いわく、学生オケ並み…ある音楽評論がそんなネガティブな論評をしたとされ、今日まで言い伝えられている。また、彼らの本命はフランス・ロシアの色彩的な管弦楽曲であり、独墺系の曲には相応しくないとの声も、その後長く続いた。一方で90年代になってこのコンビのベートーヴェンやブラームスがCDリリースされた際、予想以上の関心を集め、実際のセールスも好調だったと、ものの本に記されている。もっとも、ここでまたこんな話を書くから、また引き継がれるのかもしれないが…

あまり愉快ではないそんな話を思い起こしながらのブラームス第1…
ラックスマンL-570のボリュームノブを11時頃に合わせ、CDプレイヤーD-500のプレイボタンを押す。冒頭のトゥッティに身構えていると、予想を上回る量感のオケサウンドが押し寄せて、思わず声を上げそうになった。テンポは中庸ないしやや遅め。ほとんど緩急を付けずにインテンポで進む序奏。これまで聴いたベートーヴェンより幾分くすんだ響きで、おそらく管楽群の響きを抑え気味にコントロールしているのだろう。それにしても量感豊かで堂々した開始に驚いた。主部に入っても、テンポをほとんど動かさない。強弱のディナーミクもあまり変化がない(そもそも、この曲のスコアをみると、慣習的演奏のテンポやディナーミクを変えている箇所で、実際は楽譜に何の指示もないことが多い)。 そして、ところどころでソロをとる木管群がややひなびた音で響く。へートーヴェンやハイドンでは、パッと飛びぬけるようなソロの音色だったものが、このブラームスでは明らかに異なる。

総じて、演出臭さがまったくなく、練習初日、ひとまず通してみようか、というときの感じに近い。もちろんアンセルメの指示や注文があり、リハーサルを経てのセッション録音だと思うが、それほどガチガチに細部まで決め、周到にチェックをし、という演奏には思えない。録音の日付まで確認できないのだが、おらそらく英デッカの注文もあって、せっせと録音を重ねていた頃のこのコンビの姿を反映しているように感じる。それをもって、細部の詰めの甘さ(細部のアンサンブルや木管群の音程など)を指摘することも出来るだろうが、それより、このコンビの素の姿がそのまま出た、のびのびした曲の運びを良しとしたい。第2楽章は弦楽群がよく歌うが、抑制が効いていて持ち味の明るさと軽快さがアダにならないよう配慮しているかのようだ。第3楽章もよくある演奏にように速めのテンポでせわしなく動くことなく牧歌的。終楽章はそれまでの楽章と少し異なり、テンポ・ディナーミクともに動きが見られる。弦楽群も木管やホルンも音に明るさを増してのびのびと歌い、堂々としたコーダに向かって勝利を謳歌する。

数学者だったアンセルメ。音楽への思い断ち難く、指揮者に転じるべく助言を求めたのはベルリンのニキシュとワインガルトナー。最初のコンサートはベートーヴェンプロ。アンセルメ=フランス物という図式はいささか作られたイメージの側面も否定できない。


この盤の音源。交響曲第1番ハ短調の全曲。


同。悲劇的序曲。



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アンセルメのパリ・セット



台風一過で夏空広がる関東地方。梅雨明け以降、はっきりしない天気が続いていたが、少々遅れて夏本番到来。明日の予報は久々の猛暑日。まあ、でも程々に願いたい。さて、先週届いたアンセルメボックス。本命のフランス音楽集・ロシア音楽集を差し置いて、もっぱらその他欧州編<The Great European Tradition>を引き続き検分中。今夜はその中からこの盤を取り出した。


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ハイドンの交響曲を中心にした3枚。収録曲は以下の通り。
Disc15
ハイドン:交響曲第82番ハ長調『熊』
ハイドン:交響曲第83番ト短調『雌鶏』
ハイドン:交響曲第84番変ホ長調
Disc16
ハイドン:交響曲第85番変ロ長調『王妃』
ハイドン:交響曲第86番ニ長調
ハイドン:交響曲第87番イ長調
Disc17
ハイドン:交響曲第22番変ホ長調『哲学者』
ハイドン:交響曲第90番ハ長調
ハイドン:トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe-1
 パオロ・ロンジノッティ(トランペット)
フンメル:トランペット協奏曲変ホ長調
 ミシェル・クヴィット(トランペット)

いわゆるパリ・セットと称される第82番から87番の交響曲が並ぶ。のちの傑作ロンドン・セット(ザロモン・セット)に比べると、幾分小規模ではあるが、いずれもハイドンの熟練の技が光り、標題が付された第82番ハ長調「熊」と第84番ト短調「めんどり」を含め、聴き応えのある曲が並ぶ。1957~1968年、いずれもスイスロマンド管本拠地ジュネーヴ・ヴィクトリアホール(写真右)でのセッション録音(交響曲は1965年)。きょうはこのうちDisk15をプレイヤーにセットした。

アンセルメのハイドン?…と色眼鏡で見る向きもあるかもしれないが、どっこい、これが立派なハイドン。スイスロマンドの明るく聞達な弦楽群と個性際立つ管楽群、60年代に入りステレオ収録技術に一段と磨きのかかった英デッカの録音。そしてそうした素材を素直かつ堂々と引っ張るアンセルメの棒。期待をはるかに上回る快演だ。
第82番「熊」は第1楽章冒頭から量感豊かに響く弦楽群と、その合間をぬって楚々としたフレーズを奏でる木管群とが、曲に明快なコントラスト与える。堂々としているが大げさにならず、チャーミングな表情もあって音楽が単調にならない。この演奏のあと、定評のある大指揮者と名門オケの演奏を聴いたが、すべてが曖昧模糊とし、早々にストップボタンと押してしまった。第2楽章もAllegrettoの指示通り。歌い過ぎず、もたれることなく進む。第3楽章のメヌエットは恰幅のいいグランドスタイル。続く第4楽章とのコントラストも明快となる。序奏なしの劇的なト短調フレーズで始まる第83番「めんどり」もハイドン交響曲の傑作の一つだろう。ここでもスイスロマンドの明快な響きが際立つ。また他の曲同様、弦楽群と管楽群とのコントラストが際立っていて、ハイドンはこれほど色彩的であったかと、感じ入ってしまうほどだ。

近年ハイドンの交響曲は人気で、その理由はピリオドスタイルによる復興という側面もあるだろうが、それ以上にやはり曲自体がいいからだろう。100曲以上を数える曲のいずれもが職人的な技法でそつなく書かれている。ぼく自身の嗜好もあるだろうが、モーツァルトの初期交響曲はほとんど聴くことがなくても、ハイドンはいずれも捨て難い。アンセルメのハイドンは今回のボックスセット以外に単独でも出ている様子。ロンドン・セットのあとに何かハイドンを聴こうかと考えている輩には、パリ・セットを、そしてアンセルメ盤をファーストチョイスとして推してもよいかなと思う。


この盤の音源で第82番ハ長調「熊」


第83番ト短調「めんどり」の第1楽章展開部の途中まで。LP音源。



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アナベル・モンテシノス(G)



昨年秋に拙宅へ遊びに来てくれた知人U氏が、「与太さん、これ聴いてみてよ。」とCDを貸してくれた。


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スペイン出身で現在オーストリー在住のアナベル・モンテシノス(1984-)のギター。2011年録音のナクソス盤。ナクソスはかねてより若手ギタリストの録音に積極的で、国際コンクールで優勝した奏者へのインセンティブという形でCDを製作し、新人実力派の発掘に尽力している。アナベル・モンテシノスは2002年タレガ国際コンクール、2010年ミケーレ・ピッタルーガ(アレキサンドリア)国際ギターコンクールで優勝、それを受けて最初のアルバムを2003年に、そして今回の録音と、共にナクソスからリリースしている。YOUTUBEでは以前から彼女の演奏に接していたが、きちんとCDで聴くのは今回初めて。二作目のこの盤の収録曲は以下の通り。

グラナドス~モンテシノス:詩的なワルツ集、ゴヤのマハ
ファリャ~ベーレント:代官の踊り
リョベート:クリスマスの夜、盗賊の歌、聖母の御子
ロドリーゴ:スペイン風の3つの小品(ファンダンゴ、パッサカリア、ザパテアード)
キローガ~トレパト:タトゥー、おおマリア、緑の瞳
ソル:魔笛の主題による変奏曲Op.9
プホール:トナディーリャ、タンゴ、グアヒーラ

王道のスペイン物が並ぶ選曲。中ではキローガの作品が少し珍しい。ソルを除きいずれもスペイン近代の作品ではあるが、曲想は19世紀ロマン派プラス20世紀のスパイス少々。唯一古典期作品のソルが少々違和感がないでもないが、古典の解釈も聴けるという意味では悪くない選曲だ。

国際コンクール優勝者らしい切れのいい技巧とブリリアントな音。スピーカで聴いていると、サイモン・マーティー製ギターの特性もあってか、ふと二重奏かと錯覚するほど響きが豊かだ。表現としてはかなりロマンティックで、テンポ・音色とも積極的に変化させている。古典期での作品でこれをやられると鼻に付くところだが、ことスペイン物をモダン楽器で弾くということであれば十分納得の解釈。技巧に難があると、そうした解釈が<ごまかし>に聴こえることもあるが、その点はさすがに不安はない。 スペイン物らしいキャッチーなメロディーとリズム、わずかに効いた近代的な和声のスパイス。高い技巧と豊かな響き。モダンクラシックギターの今を聴くには好適のアルバムだ。


この盤の冒頭に入っているグラナドスの詩的ワルツ。おそらくこの盤の録音セッションでの光景。


同。ファリャの三角帽子から<代官(市長>の踊り>。ジークフリート・ベーレントの版を使用。


ビジュアルも一級のラテン美女だ。


アナベル同様ミケーレ・ピッタルーガ優勝者で夫君のマルコ・タマヨと。
う~ん、仲良すぎるゾォ~!(^^;



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Author:マエストロ・与太
音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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