秋の音楽といえば何だろう…ぼくの場合最初に思い浮かぶのはやはりブラームスだ。彼の故郷北ドイツの港町ハンブルグの街に枯葉が舞い、陽射しのない空に低く冷たい雲が垂れ込める。鬱々としたメロディー、歌い過ぎないロマンティシズム、渋さ極まる和声。嗚呼、ブラームス…(^^;

…というわけで、枯葉舞う季節にはいささか気が早いのだが、秋の先取り。久々にこの盤を取り出した。 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団によるブラームスの交響曲全集。数年前にCBSソニーからリマスタリングされて再発されたのを期に手に入れたもの。録音時期は1966~1967年。

先ほどから第4番ホ短調を聴いている。
いきなり結論めいてナンだが、演奏はいずれも期待に違わず素晴らしい。まずテンポ設定がいい。「標準」といってもまったく個人的な感覚だが、その標準よりもわずかに遅めのテンポ設定。しかも大きなフレーズの切替ポイントでかなり大胆にテンポを落とすところもある。セルは19世紀的ロマンティシズムに根ざした演奏様式とは無縁というのが通説だが、こうして聴くとやはりその伝統を背負っていることを感じる。遅めのテンポだと全体としての響きが渾然一体となって重くなりがちだが、そこはさずがにセル。響きの透明度が高く、各パートの存在が手に取るように分かる。これこそがセルの真骨頂だろうか。もちろん録音の影響もあるが、そうした響きを目指して演奏し、録音技術陣もそれを最善の形で残そうとした結果だ。
セルのトレーニングを受けて鉄壁を誇ったクリーヴランド管弦楽団のアンサンブルも申し分ない。1stヴァイオリンがメロディーをとると、まるでひとすじの絹糸のようにメロディーが歌われる。そのメロディーをヴィオラとチェロが引き継ぐといったフレーズなど、こういうパート間の受渡しがあったのかとあらためて気付かされる。特に緩徐楽章での演奏にそうした美点が顕著に現れ、あらためてその美しさに心打たれた。管楽器の扱いは弦楽群とのバランスを取り調和を図っている一方で、ブラームスの曲でしばしば重要な役割を果たすホルンパートなどは、時にオッと思うほどの強奏を聴かせる。 周到に組立てられた展開、個々のフレーズの扱い、精緻かつ明晰な各パートの動き、そうしたもののベースの上に成り立つブラームスらしい音響と情緒の現れなど、秋色のブラームスにふさわしい名演だ。
第4番の第2楽章。4分10秒からの副主題の提示、そして9分10秒から同主題の再提示と盛り上がる展開はこの楽章この曲のもっとも素晴らしいフレーズの一つだ。
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注文していた靴が届いた。

神戸の小さなメーカーで職人二人がコツコツ手仕事で作っている。一般市販するほど作れないので、年に二回、春と秋に全国数箇所で受注会を開いて注文を受ける。実は昨年秋に初めてその受注会とやらに行き、そのとき頼んだものが気に入ったこともあって、今回二回目の注文となった。三ヶ月ほど前に頼み、意外と早く届いた。
ダービーシューズというのかな。これ以上ないくらいプレーンなデザイン。ちょっとキザですが…英国トラッド。革張りの底もいい感じ。靴紐はもちろん平紐。注文といっても、足型を取って…というものではなく、デザインとサイズのサンプルを実際に履いてみて、あとは皮の色を選んで注文確定。従来、女性物がメインだったが、最近は男性物も徐々に増やしている様子。 メンテナンスしながら、一生とはいえないまでも、十年や十五年は履けるだろう。値段も思ったほど高くはない。もう少し若い頃にこういうものを選んでおけばと後悔するが、まあ、その頃はそういう余裕も考えもなかったから仕方ない。

一年近く前に、とあるブランドの既製品で同じ系統の靴を黒とこげ茶の二足購入しているのだが、まだ実際に履いていない。今回のものを頼むとき、デザインがかぶるかなあと思ったが、出来上がってみると、雰囲気はかなり違うので、まあよかったかなと。
左:某英国ブランド 右:今回注文品

手前が今回のもの 右二足が昨年買った色違い二足

就職してからメーカーの工場勤務が長く、着る服といえば会社支給のユニフォームだったが、還暦を過ぎて、今更ながら少々身支度に気を遣うようになった。ようやく涼しくなって秋到来も間近。この靴に合うようなセットアップを着てコンサートにでも行こうかと、落ち込みがちな日々にあって、気分をあげるべく画策している。
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関東地方はきのうきょうと、一気に秋の風が吹き抜けた。陽射しは強く、日中の気温は28度を超えたが湿度低く快適。このまま残暑もなく夏が終わるとは思えないが、心地よい涼風に安堵に一日だった。 さて、きょう昼過ぎにギターを弾こうかと、久々にラミレスを取り出すと、なんと1弦が切れている。夏の間、ほとんどケースから出さずにいたのが影響したのかもしれない。ひとまず切れた1弦だけ交換…と、そのときふと思い出し、こんなものを取り出した。




アコースティック・サウンド・エンファンサー<O-Port>なるアイテム。名古屋の楽器商社キクタニが数年前から扱っている。ギター愛好家にはすでにご存知の方も多いだろう。どちらかというと、いわゆるアコギ向けに相応の人気があるアイテムのようだ。クラシックギター弾きには、着脱可能な樹脂製<トルナボス>といえば理解が早いだろう。
トルナボスについてはすでに様々な情報が流布されているので説明は不要だろう。ぼくも十年以上前に興味をもって、硬めのボール紙(紙テープの芯など)を使ってにわか工作をトライしたことがある。トルナボスの効果については様々に言われているが、もっとも顕著なのが低音の増強、あるいは低音ウルフトーンの引き下げだ。オーディオスピーカのバスレフレックスの原理と同様の機能・作用ともつと考えれば分かりやすい。トルナボスは100年以上前から知られ、昨今の新作でもトルナボス付きモデルを作る製作家もいる。一般には木材あるいは金属板などで円筒状に作られ、ギターのサウンドホール内部に装着される。構造に工夫を凝らして着脱可能なものもある。昨年のちょうど今頃、イギリスの製作家:デイヴィッド・ホワイトマンのトーレスモデルの新作を紹介され試奏したが、それには木製の着脱可能なトルナボスが付属していた。この樹脂製O-Portなる商品は比較的柔らかい樹脂で出来ていて、写真のように折り曲げながらサウンドホールに挿入して装着する。ギター本体に加工は不要で、いつでも取り外せる。今回はその魅力的な中高音に比して、低音域がやや弱いラミレスに装着して、その弱点を補正できるかという試み。
弦を緩めてO-Portを強引に折り曲げてサウンドホールの挿入する。O-Portには大小二つのモデルがあって、クラシックギター用は小ということになっているが、一般的なクラシックギターのサウンドホール径85mm前後には小でも少しきつい。ぼくの場合もO-Portに施されている指板部分の切り欠きを少し加工して、事なきを得た。いったん装着すると樹脂の弾力で保持され、しっかりとした印象で、演奏中に外れたり、ずれたりする心配はない。
さて肝心の音やいかに…
当初の目論見通り、低音は確実に増強される。ぼくのラミレス1aのウルフはA付近にあるが、それがF#~G辺りにまで下がり、弾き手のお腹にドスンと響くような低音になる。田邊雅啓ロマニリョスモデルやオルディゲスのような、かつてのスパニッシュ系をイメージさせるドッスン低音に近くなる。一方高音は、ラミレスが本体もつ艶やかで張りのある音がかなり減衰し、音が胴の内部にこもるような響きになる。人によっては、このくらいのややくすんだ響きの高音が好みという向きもあるかもしれないが、もともとラミレスがもつ中高音のイメージを変えずに、低音だけ増強したいという目論見からは遠い結果となった。
先に記した通り、このアイテムを手に入れたのは数年前、確か2010年頃。もちろん手に入れてすぐ試してみたが、そのときの印象は今回の印象と同じ。以後、ときどき思い出したように、今度は違って聴こえるかもしれないと思いつつトライするが、どうやら印象変わらずという結論だ。2000円ほどで買えて、ギター本体に影響なく着脱可能という辺りに商品価値あり。すべてがプラス方向に変化する保証はないが、自分の楽器の音響イメージをちょっと変えてみたいという向きには、トライする価値があるかもしれない。
さて、このお兄さんの塩梅はいかに…
このお兄さんがこの商品の考案者だそうだ。
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前回の記事でバッハのドッペルの一つ、ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲を聴いたが、あの曲やもう一つのドッペル、二つのヴァイオリンのための協奏曲を聴くと、条件反射的にセットで聴きたくなる曲がある。

バッハのチェンバロ協奏曲第1番ニ短調。取り出したのは数年前、近所のリサイクルショップのジャンク箱から百円で捕獲してきたバッハのチェンバロ協奏曲集。70年代初頭にキングレコードから出ていた廉価盤シリーズの1枚。BWV1052/1062/1065の3曲が収録されている。中でも第1番ニ短調BWV1052はバッハが残したチェンバロ協奏曲の中でも傑作の誉れ高い名曲だ。
第1楽章冒頭、ユニゾンで奏されるシンコペーションを伴った主題で印象的に始まる。リトネロ形式で主題がソロと合奏とで次々に奏され、終始緊張感を失わない。どことなく2台ヴァイオリンのための協奏曲ニ短調を思わせる(バッハ自身の編曲でBWV1062として2台チェンバロのための協奏曲になっている)。第2楽章も印象的な弦楽のユニゾンで始まる。チェンバロのソロが入ってきてからも弦パートが奏する主題がオスティナートのようにバックに流れ続け、いかにもバッハ的な深みのある曲想だ。この盤ではオーストリアの鍵盤楽器奏者;アントン・ハイラーがソロをとり、ミルティアス・カリディス指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団がバックと務めている。少々レンジが狭いのか、硬めの音色ではあるがきちんとした録音で、ソロ・オーケストラとも古楽復興以前50~60年代のオーソドクスな演奏が楽しめる。
トレヴァー・ピノックとイングリッシュコンソートの演奏。現代のスタンダードか。
グリモーが弾くモダンピアノによる演奏。
のだめでも取り上げられていた。
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