最近弾いたギター 2017年初秋<続>
二週間ほど前に、最近弾いたギターについて備忘を記したが、きょうはその続き。時と場所をあらため、今回は都内某所の馴染みの店(前回の巡回は、実は関東圏を脱出していた)。都内での仕事の帰りにうまく時間が取れたので、ついでに立ち寄った。まあ、どちらがついでか怪しいのはいつもの通りだが…。

「与太です。コンチハ。きょう夕方お邪魔したいのですが、よろしいですか?」と昼過ぎに電話を入れ、「特にトーレスモデルを見たいので…」と付け加えておいた。とっかえひっかえ試奏したのは以下のギター。いずれもトーレスモデルを標榜する作品。例によって製作年など詳細データは伏せておく。
ジョン・レイ
マルセリーノ・ロペス(3本)
大西達郎
パウリーノ・ベルナベ
栗山大輔
尾野薫
そもそも…トーレスモデルといっても、オリジナルのトーレスを簡単に検分することは出来ない。たまたまぼくは数年前に某所で静かな環境でゆっくり弾く機会があったので、多少の印象はもっているが、多くの場合は、こんなものかなと想像するか、録音に残された音でイメージを膨らませるしかない。製作家としても、忠実なコピーを意図するのか、トーレスという歴史的存在から何がしかをイメージしてそれを反映させるのかでは、当然アプローチが異なる。今回の十本近い作品も、そうした様々な意図が混在するものだった。
ジョン・レイはカナダ人ながらスペイン・グラナダで製作を続けている。最近はもっぱらトーレスモデルが有名で、今回みた作品も、外見・音ともに最もトーレスの時代を感じさせるもの。ひと言でいえば、雰囲気のある楽器だ。音も横裏メープルらしい、やや短めの余韻を伴ってコロコロと鳴る。胴はかなり薄いのだが、手元での音量感に不足はない。
ついでマルセリーノ・ロペス。たまたまだろうが、トーレスモデルが3本あって、うち2本は同じモデル。ここ数年の作品だが、仕上げのニスの色合いや作りの各所にアンティークな雰囲気が漂う。ボディーは小型ながら、横裏は中南米ローズ系で、しっかりとした作り。胴の内部で音が響く、19世紀ギターを思わせる鳴り方だった。
大西達郎の作品はトルナボス付き。それもあって、今回弾いた中ではもっとも低いウルフトーンをもち、ほぼ6弦開放Eに共鳴。例によってドーンと腹に響くところは、前回の記事に書いたシンプリシオを思わせる。もちろん当初からトルナボス付きで設計し、トーンバランスを考慮しているものだろうが、やはり音と響き全体が低域シフトするのか、中高音はやや線が細く、かつマイルドな印象だった。
栗山大輔と尾野薫の作品は、いずれも忠実なトーレスコピーというよりは、トーレスからイメージしたものを盛り込んだという雰囲気のギターと感じた。特に尾野氏の作品はかなりがっちりした作りで、音も余分な響きを排し、その代わりに、少し離れて聴くとパワフルな音が前に出てくる。手元での響きが心地良いジョン・レイやロペスの作品と好対照だった。
アントニオ・デ・トーレス(1817-1892)がモダンギター潮流を作った一人であることは確かだろうが、ヴァイオリン族と違って、きちんとした鑑定システムもないギターの世界。トーレス、トーレスと唱えてみても、アマチュア連中の空騒ぎ的なレベルでしかないかもしれない。まあ、それも楽しい道楽の世界ではあります。
トーレスが愛器の松田晃演の演奏。説得力ある音と解釈。
栗山大輔のトーレスモデルを弾くキム・ヨンテ氏。冒頭、ソルのエチュードではギターの音色より先に三度スケール(ダブルストップ)の鮮やかさに耳がいく。ソルのあとタンゴ・アン・スカイ、アルハンブラの思い出と続く。
★★追伸★★
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