シューリヒトの<ライン>
今年の冬は近年になく寒い。冬らしい冬、正月らしい正月。北日本中心に荒れた天気のようだが、当地関東地方は穏やかな冬晴れが続く。正月三日目。昼過ぎになってアンプの灯を入れ音盤タイム。こんな盤を取り出した。

シューマンの交響曲第3番変ホ長調<ライン>。ドイツの名匠カール・シューリヒト(1880-1967)と南ドイツ放響(現・シュトゥットガルト放響)による演奏。1960年録音。数年前にリリースされたコンサートホール盤復刻シリーズ中の1枚。以前からシューリヒトのこのシューマンの演奏は、独自の味わいを持つ名演とされてきた盤だ。この曲を新年の初めに聴こうと思い立ったのは、<Lebhaft=生き生きと>と付された第1楽章冒頭の開始の雰囲気がいかにも新年の幕開けに相応しく感じたからだ。序奏を伴わずに一気にガツンと立ち上がる主題が何とも躍動感にあふれている。シューマンには<春>と題された第1番の交響曲があって、その冒頭ざわざわとうごめきながら始まる<春>は確かに春の一面を表している。しかし新年の幕開けにはライン交響曲の冒頭の方がピタリとくるように感じる。
シューマンの4つある交響曲はいずれもドイツ物の交響曲の中では好きな曲の上位に位置する。手元にはサヴァリッシュ&シュターツカペレドレスデン、コンヴィチュニー&ライプツィッヒゲヴァントハウス管、クーベリック&バイエルン放響、クレンペラー&フィルハーモニア管、スウィトナー&シュターツカペレベルリン、コリン・デイヴィス&シュターツカペレドレスデンなどの全集盤がある。それらの第3番と比べると、このシューリヒト盤は抜きん出て個性的だ。
第1楽章の出だしから速いテンポと拍の頭でビシッビシッと決まる小気味よいアインザッツ、そしてフレーズのそこかしこに明確なアーティキュレーションを施していく。しなやかな中にもゴツゴツとした肌合い、快速調の生き生きとしたフレージングはシューリヒトの真骨頂だ。 意味のないことと知りながら、チェリビダッケ&ミュンヘンフィルと演奏時間と比べてみると、チェリビダッケ盤が全5楽章に39分を要しているに対し、このシューリヒト盤は30分に満たない。ドイツの深い森のイメージやとうとうと流れるラインの流れでなく、もっと活気と生命力に満ちた父なる河ファーターラインだ。古いコンサートホール盤のもつ冴えない録音というイメージも、リマスタリングの成果著しく、シューリヒトの音楽表現の意図同様、細部までクリアによみがえっている。もっと深くたっぷりとした響き、うっそうとしたシュヴァルツヴァルトをイメージする演奏を求める向きにはお勧め出来ないが、若々しく生気にみなぎるシューマンは一聴に価するだろう。
この盤の音源。全4楽章。ゴツゴツとした肌合いと明確なアーティキュレーションが独自で、快速調ながら軽々しさはまったくない。
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