高橋竹山
再び寒波到来。いつもは上越国境の山々でブロックされる雪雲が、きょうはその勢い止まらず、雪雲の末端が県南部の平野部まで押し寄せてきた。降雪には至らないが、時折空が掻き曇る。陽だまりリスニングと思い立ったが、明るい陽射しには遠い。そんな空模様を眺めてつつ、思い出したようにこんな盤を取り出した。

高橋竹山(1910-1998)の津軽三味線。1973年渋谷ジャンジャンでのライヴ録音。当時から高橋竹山の素の芸を優れた録音でとらえた名盤とされたもの(CD復刻されていないのかな…)。手持ちの盤は後年近所のリサイクルショップで手に入れた。さすがにいつものジャンク箱ではなく、レコードコーナーに収まっていたもの。 高橋竹山はもちろん、津軽三味線についても何も知らないに等しいぼくなどが、この盤について語るつもりはまったくない。しかし思うところあってこの盤を手に入れ、その音に触れたときの衝撃は強く深いものだった。

高橋竹山の名が広く知られるようになったのは70年代になってからだろう。それも津軽三味線や民謡の世界だけでなく、広く音楽や舞台に関心を寄せる若い世代の共感を呼ぶうようなった。このジャンジャンでのライヴはその象徴的な記録だ。昨今ではロックやジャズとのコラボレーションもこなし、激しいパッションを表出する津軽三味線だが、この竹山の語りや演奏はそうしたイメージとは程遠い。
「三味線は叩くものはなく、弾くもの」と語った竹山。正確なビートは終始乱れることなく、それにのって中音域の旋律が太く歌う。そして高音域の装飾音のごとき細かな音がさりげない、しかし見事な指さばきで加わる。曲間で会場の若者たちに語りかける津軽弁。厳しく辛かったであろう生い立ちを飄々と語りながら、ときに笑いを誘う様にも、三味線から出る音同様に力任せでない、しなやかに心に訴えくる至芸を感じる。
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