きのうに続いてギター二重奏を聴く。 ヨーゼフ(ヨハン)・ガスパール・メルツ(1806-1856)のギター二重奏作品を集めたアルバム。きのうのソルの記事で作品54bisの演奏を貼ったクラウディオ・マッカリとパオロ・プリエーゼという二人組みによる19世紀ギターを用いた演奏。2001年の録音。今から十年ちょっと前、仕事で欧州へ何度が出張した際、滞在先で手に入れた。手に入れた当時はまだギターへの本格カムバック前夜で、メルツの二重奏に特別な思い入れがあったわけではなく、従ってずっと聴くこともなく棚に埋もれていた。その後やや本格的にギターに再開しからあらためて聴き直し、楽譜も手に入れた次第。収録曲は以下の通り。メルツの二重奏曲がひ通り入っている。すべて1stギターは通常のギターより短三度音程が高いテルツギターの指定があるもの。 (1) Naenien Trauerlieder ・Am Grabe der Geliebten ・Ich Denke Dein ・Trauermarsch (2) Unrühe (3) Vespergang (4) Mazurka (5) Ständchen (6) Deutsche Weise (7) Tarantelle (8) Barcarole (9) Impromptu ちょうど19世紀前半の半世紀を生きたメルツ。作風としてはロマン派の色合い強く、情緒的な趣き深い曲を多数残した。この盤の収められている二重奏もメルツらしい穏やかなロマンティシズムとうつろうような和声感に満ちている。ドイチェ・ヴァイゼ(6)とマズルカ(4)は数年前にあるステージで、隣り町高崎のギター指導者石原昌子先生と弾いたことがある。また挽歌集(1)の3曲は旧友Y氏と合わせてmixiの内輪の発表会で弾いた。いずれも技術的ハードルはそう高くなく、中級アマチュアの楽しみにはピッタリだ。この手の曲の雰囲気を楽しみ、当時意図された響きを再現するには19世紀ギターの使用が必須と思うが、用意できなければ1stパートのテルツ指定にはカポタスト(3F)で対応することになる。 「マズルカ」 モダンギターによる演奏。VIDEO 「ドイチェ・ヴァイゼ」VIDEO 挽歌集(Naenien Trauerlieder)の第1曲「愛する人の墓の前で(Am Grabe der Geliebten)」 深い情感に満ちた内省的な曲想が美しい。当時のオリジナル楽器による演奏。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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いつまで続くこの好天…(^^ きょうは野暮用あって仕事は休み、終日外出。夕方暗くなる前に帰宅した。夜になっても昼間の暖気が残り暖かい。ひと息ついて楽器も少しさらい、思い出したようにこんな盤を取り出した。 フェルナンド・ソル(1778-1839)が作ったギターのための二重奏曲をCD2枚に収めたナクソス盤。弾いているのは、ロベルト・クビカとヴィルマ・ファン・ベルケルという二人組。1994年から95年にかけての録音。 ソルはギター弾きにはお馴染みの作曲家だ。19世紀初頭の古典ギター全盛期、多くのギター演奏家兼作曲家が活躍した中でも格段に優れた曲を残した。スペイン生まれながら、パリやイギリス、ロシアで活躍し、ギター曲なみならず管弦楽曲やオペラ、バレエ音楽なども残した。残念ながらそれらの多くは楽譜が失われ、現在ではもっぱらギター曲のみが知られる。 CD2枚におよぶギター二重奏曲は、あるものはギター練習生と教師のための教育用として、あるものは友人との二重奏用として書かれ、技術的にやさしいものからコンサートプログラムになるものまで幅広い。そして曲の大小に関わらず、いずれも19世紀初頭の古典から初期ロマン派様式感と豊かな和声に彩られ、聴いていても弾いていても、実に美しく楽しい。 独奏曲、二重奏曲を問わず、ソルの曲を弾いていると、ギターの特性をうまく引き出しクラシカルな楽想を盛り込んだソルに心から感謝したくなる。<二人の友><アンクラージュマン><ロシアの思い出>などは比較的大きな曲として演奏会でも取り上げられる機会も多い。ぼく自身も学生時代から何度か合わせて楽しんだ思い出がある。同時に作品55や作品61などの3分に満たない小品の数々もいずれも捨てがたい。 ロベルト・クビカとヴィルマ・ファン・ベルケルのペアによるこの録音は現代風のキレにいい音と弾きぶりで、モダンスタイルの演奏としては好感がもてる。 作品61の3VIDEO ソルの作品中、独奏、二重奏問わず、もっとも優れた作品の一つ作品54bis。堂々とした序奏のあと、主題と変奏が続き、最後はスペイン風舞曲で華やかに終わる。このコンビ(マッカリ&プリセーズ)の演奏は、古典的な解釈をきちんと押さえながらもノリがよく、この曲のもつ様々な面を十全に表現している。VIDEO 同コンビの最近の演奏 https://youtu.be/Flqv4gu8Tu8 ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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好天続く。仕事で出向いた都内の桜は満開。例年数日遅れの当地も開花が進んだ。今年はざっと一週間以上早い感じだろうか。さずがに暖房も不要になって、エアコンノイズからも解放。久々にこんな盤を取り出した。 マウロ・ジュリアーニのフルート(またはヴァイオリン)とギターのためのグランドソナタ作品85。ナクソス盤のCDも手元にあるが、今夜は懐かしいランパル盤を聴く。手持ちの盤は米オッデセイレーベルの輸入盤。ギターを受け持っているのは同じフランス出身のルネ・バルトリというギタリスト。ジャン・バティスト・ルイエのイ短調のソナタ作品1-1とロベルト・ドゥ・ヴィゼーの組曲ニ短調(ギターソロ)がカップリングされている。ジュリアーニはフルートとギターのための曲を何曲も残しているが、中ではこの作品85イ長調の大ソナタがもっともポピュラーだ。 この曲には少々思い出がある。この曲を知ったのはクラシックギターを始めて間もない高校2年の頃だった。最初はFMで聴いたのだろう。その後地元本屋の楽器売り場にあった緑色の表紙が印象的なフルートクラブ版の楽譜を買い求め、フルート吹きの同級生S君と二重奏を試みた。S君は大そうな名手で芸大に進もうかとも迷っていたようだが、学業も優秀で結局現役で京大文学部に進んだ。ギターも下手で浪人までして駅弁大学のぼくとは次元が違う。 彼とは文化祭のときにステージを設けてこの曲の第3楽章と第4楽章を演奏した。芸大に進もうかという彼だったから、最初の練習のときから見事な初見演奏で、伴奏のこちらが彼に引っ張られる状態だった。彼はギターの楽譜でも何でも手渡すと、フレージング、ディナーミク共に初見で実に見事に演奏した。ギターの楽譜なので当然和音も書かれているのだが、単旋律のフルートでそれらを音楽的にまったく違和感なく吹く様は当時のぼくには驚きだった。大学時代にはギターパートをカセットに録音し、それを聴きながらフルートパートをギターで弾いて一人二重奏を楽しんだものだ。 その後この曲を弾くことはずっとなかったのだが、つい数年前、新しい職場でフルートの名手に出会い、40年ぶりに合わせた。合わせた当日、「通しましょう」ということでスタート。知人のフルートはまったく危なげなくインテンポで吹き進め、ぼくのギターは事前にろくろくさらっていなかったこともあって、途中あやうい箇所がいくつかあったが、何とか4楽章を通した。玉手箱状態の合わせだったが、ひやひやしながらも大いに楽しんだ。 マウロ・ジュリアーニ(1781-1829)はイタリアのギタリスト・作曲家。ヴァイオリンやチェロも修め、ベートーヴェンの第7交響曲初演ではチェロパートに参加していたと伝えられている。19世紀初頭のウィーンで大そう活躍し、人気も博したようだ。この曲もそうした当時の彼の実力をよく反映したもので、4楽章形式の立派な古典的ソナタ。彼のギター独奏曲よりも優れた感興に満ちていて、ウィーン古典派ど真ん中といってよい曲想は飽きることがない。中級を自認するギター弾きは管や弦の相方をみつけて、ぜひ楽しむべき一曲だと思う。 この盤の音源。VIDEO yumi(FL)・松尾俊介(G)による全楽章。音質はやや残念。ギターの音もあまりよくとらえられていない。VIDEO ヴァイオリンでの演奏も貼っておく。第1楽章。よりクラシカルな雰囲気になるかなVIDEO 楽譜はこちらを参考に ⇒ http://maurogiuliani.free.fr/partitions/Op%2085%20grand%20duo%20concertant%20pour%20flute%20ou%20violon%20et%20guitare.pdf ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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帰宅後、ネットを覗いていたら、1963年のきょう3月22日はビートルズの記念すべき初アルバム<プリーズ・プリーズ・ミー>がリリースされた日と書かれていた。 それでは…と、音盤棚から手持ちの盤を取り出した。 振り返ってみると、彼らが活躍したのはわずか10年ほど。解散後の40年を思えば随分と短かったと実感する。ぼくはビートルズのファンでもなんでもないが、中学生の頃はラジオのスイッチを入れればビートルズやローリングストーンがリアルタイムで流れていた時代だったので、当然馴染みはある。まだクラシックには目覚めていなかった時期で、ポップスをそれなりに楽しく聴いていた。但しレコードにあてるほどの小遣いもなく、そもそもステレオ装置も持っていなかったから音源はもっぱらラジオだった。手持ちのビートルズのレコードはすっかりオッサンなってから何となく集めたもの。リサイクルショップのジャンク箱から救済してきたり、会社の同僚がもう聴かないからと譲ってくれたり、そんな風にして何枚かのアルバムがほとんど投資なしで集まった。 さて<プリーズ・プリーズ・ミー>。この盤は十数年前、近所のリサイクルショップで入手した。この盤と同時に初期のアルバム5枚がまとまって@100円で並んでいた。オリジナルフォーマットのモノラルカッティング、帯付き、盤質は新品同様…という中々の掘り出し物だった。日本での本アルバムのリリースは遅く、ビートルズ解散から6年後の1976年6月のことであった由。さらには米国ではCD期までリリースそのものがなかったとのこと。この盤はその1976年盤(ステレオ)ののち、1982年にモノラルでリリースされたものだが、その辺りの事情については深入りするほどの知識はない。収録曲は以下の通り。 -A- アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア/ミズリー/アンナ/チェインズ ボーイズ/アスク・ミー・ホワイ/プリーズ・プリーズ・ミー -B- ラヴ・ミー・ドゥ/P.S.アイ・ラヴ・ユー/ベイビー・イッツ・ユー ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット/ 蜜の味(ア・テイスト・オブ・ハニー) /ゼアズ・ア・プレイス/ツイスト・アンド・シャウト 東芝EMI仕様のレッドカラー盤に針を落とす。わずかなサーフェイスノイズのあと、ワン、ツー、スリー、フォーの掛け声と共に第1曲<アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア>が勢いよくスピーカーから飛び出してきた。モノラルではあるがカッティングレベルが高く、凝縮されたエネルギー感あふれるサウンドが素晴らしい。以降、アルバムタイトルチューンでシングルヒットした<プリーズ・プリーズ・ミー>も含め彼らのオリジナル曲や当時の定番ロックンロールなども織り交ぜて中々楽しいアルバムだ。音質同様、彼らの演奏もフレッシュかつエネルギッシュで、スタジオライヴを聴く趣きがある。実際この盤のほとんどの曲はオーバーダビングなしの一発録りで録られたという。なるほどと合点。 ビートルズの曲をほんの申し訳程度にしか聴かないぼくなどがコメントするのは大そう気が引けるのだが、ビートルズはやはり60年代半ばまでの初期のものがいい。それ以降は多様な音楽的要素や音響的トライアルが導入されたり、様々なメッセージが込められたりと、確かに音楽として熟成されている。しかし英国のやんちゃな若者がストレートに音楽を楽しんでいるという感じはなくなる。その点このアルバムはぼくにとってはビートルズのビの字を感じさせてくれる名盤だ。 <アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア>VIDEO <プリーズ・プリーズ・ミー>VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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きょうの関東地方は朝から降雪。八丈島付近を低気圧が通過し、そこへ北から寒気が流れ込むという、関東平野里雪型の典型パターン。気温も低く寒い一日だった。しかし、そこは文明社会。暖を取りつつ、このところトンとご無沙汰だったギターの練習。こんな楽譜を取り出してひとしきり楽しんだ。 マウロ・ジュリアーニ(1781-1829)の「私の愛する花の選集」作品46。楽譜は海外アーカイブで簡単に見ることが出来るが、校訂ノートも付いた楽譜が数年前に現代ギター社から出版されたので手に入れたもの。この曲集には10曲の小品から成る「ジュリアナーテ」作品148も収められている。「私の愛する花の選集」作品46は小品10曲からなる曲集で、以下の通りそれぞれの曲に花の名前が付されている。 1. Le Myrte ミルテ 2. La Pansée パンジー 3. Le Lis ユリ 4. Le Jasmin ジャスミン 5. La Rosmarin ローズマリー 6. L‘Oeillet ナデシコ 7. Le Narcisse スイセン 8. La Violette スミレ 9. La Rose バラ 10. Le Laurier ローリエ ジュリアーニの作品というと明るい雰囲気とギター的な技巧をちりばめた曲想をイメージする。同時にそんな特性にいささか単調さを感じることもあるだろう。この作品46の小品集は、そんな「いつもの」ジュリアーニとはひと味違った曲想をの楽しめる。どういういきさつがあって、花の名前を付すことになったから定かでないが、楽譜を開いてざっとさらってみると、それぞれの曲の花と曲想が一致している、あるいはそういうイメージをもったのかと想像を掻き立てる。 例えば…第6曲の<なでしこ>は日本人としては楚々として可憐なイメージを持つが、この曲集では4分の2拍子アレグロ・ヴィヴァーチェの指定があって、ホ長調の闊達な動きをもつ。第9曲の<バラ>はジュリアーニにしては内声の微妙な変化と細かな装飾音風パッセージが続いて、愛と美の象徴にふさわしいようにも感じる。 道楽のギターにとやかくいうつもりはないが、バッハだ、バリオスだ、ディアンスだと、己の技術レベルを超えて結局弾けずに格闘するのもいいが、ふと足元をみて、こんな古典の小品をイマジネーション豊かに楽しむのも、セールスや集客を気にせずに済むアマチュアゆえの特権であり、務めでもあると思うがどうだろう。Boijeコレクションにある当時の出版譜。 http://boije.statensmusikverk.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20156.pdf 9曲目の<バラ>。 使われている楽器はミヒャエル・テムズという製作家 によるトーレス:ラ・レオナのレプリカとある。VIDEO 19世紀ギター(パノルモのレプリカ)で3曲<パンジー><ジャスミン><スミレ>を弾いている。もう少し感興にのった流れがほしいが…VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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あすは休日という夜。ちょっと渋めのこんな盤を取り出した。 アンネ・ゾフィー・ムター(1963-)が弾く近現代の作品集。2000年5月にシュトゥットガルトで行われたライヴをそのまま収録したアルバムだ。この盤は十数年前に仕事で中国を何度か訪れた際に買い求めた。確か10元(150円程度)かそこらの値段で、パッケージをよく見ると正規商品かどうかあやしげなところがある。もっとも音は至極まとも。以下の通り近現代の作品だけが収められている。ピアノはランバート・オルキス。 1. ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調op.94a(プロコフィエフ) 2. 4つの夜想曲(G・クラム) 3. 4つの小品op.7~ヴァイオリンとピアノのための(ヴェーベルン) 4. ヴァイオリン・ソナタ ロ短調(レスピーギ) プロコフィエフとレスピーギを除いたクラムとウェーベルンの作品は完全な前衛的な作品といっていいだろう。こうしたプログラミングの意図がライナーノーツに記されている。それによると、21世紀の将来に向けての新しい定番的なレパートリーにするべく取り組んだとある。プロコフィエフはすでにヴァイオリニストにとっては定番レパートリーだろうか。古典的ソナタの形をとった4楽章構成で、それぞれの楽章のキャラクターが明確かつ親しみやすい。クラムとウェーベルンはいわゆる現代曲そのものだが、こうしてプロコフィエフとレスピーギの間に置かれて聴いてみると違和感はない。現代曲にももちろん様々なものがあるだろうが、一つの典型としてある<夜><静寂>を描いたイメージを強く感じる。レスピーギ>はブラームスのソナタと言われたらそのまま信じそうな曲想。レスピーギ自身はイタリア近代というカテゴリーに入るだろうが、この作品はまったく後期ロマン派の風情だ。色濃く、美しく、深い。このアルバムそのものを4楽章構成の一つの曲と考え、4人の作曲家がそれぞれの楽章と考えたらいいのかなと、ふと思ったのだが、あながち間違いでもないだろう。 ムターの演奏はいずれも文句なしの素晴らしく。前衛作品の良否を言える耳は持たないが、プロコフィエフは意図的にやや控え目な表現で好感が持てる。楚々として美しく、穏やかに心静まる。レスピーギはやや積極的に踏み込み、濃い口の表現だが、ブラームス風のこの曲にはよく合っている。 プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番第1楽章。クレメルとアルゲリッチ。VIDEO レスピーギのヴァイオリン・ソナタVIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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三月も半ばを過ぎた。仕事の年度末進行もほぼ完了見込みとなり休心。新年度の計画にも少々手を付け出した。本日も程々に業務に精励。7時ちょうどに帰宅。ひと息ついて夜も更けて…変わり映えしない音盤タイム。今夜はこんな盤を取り出した。 エルガー作品集。加藤知子のヴァイオリン、江口玲のピアノ伴奏。1997年に山梨県の牧丘町民文化ホール(現:花かげホール)で録音されている。日本コロンビアの廉価盤シリーズ中の1枚。エルガーが生涯に渡って書き続けたヴァイオリンのための小品とソナタが収められている。収録曲は以下の通り。 1. 夜の歌op.15-1 2. 朝の歌op.15-2 3. 6つのとてもやさしい小品op.22 4. 愛の挨拶op.12 5. 気まぐれ女op.17 6. マズルカop.10-1 7. ため息op.70 8. ヴァイオリン・ソナタop.82 9. カント・ポポラーレ <愛の挨拶>ばかりが有名になり、いささか手垢にまみれてしまった感があるが、他の小品も味わい深い。この作曲家の一面である、穏やかなロマンティシズムと豊かな歌謡性に満ちた曲が続く。<夜の歌>は安息に満ちた夜のしじまを思わせ、<気まぐれ女>ではクライスラー風の軽妙な技巧を聴かせる。実際、クライスラーの愛想曲だったそうだ。短調のやや速いテンポの<マズルカ>はドヴォルザークの作品にヒントと得て書かれた由。ところどころにスラヴ風の曲想やペンタトニックが顔をみせる。<ため息>の原曲はオーケストラ、ハープ、オルガンのための作品。悲痛なロマンティシズムは作曲当時の第一次大戦に思いを寄せたものと、ライナーノーツにあった。こうした小品、そしてチェロやヴァイオリンのための協奏曲やシンフォニーなどの大曲、エルガーだけではないが、作曲家の多様な側面に等しく接していきたいものだ。 <夜の歌>VIDEO イヴリー・ギトリス の弾く<気まぐれ女>VIDEO のだめにも登場したヴァイオリンソナタ第1楽章。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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