ジョン・コルトレーン <ブルー・トレイン>



好天の連休入り。野暮用外出から午後3時過ぎに戻ると、部屋の中はムッとするほどの暑さ。夕方までの時間、久しぶりにアキュフェーズのシステムに灯を入れ、ブルックナーの第3交響曲をフルボリュームで聴く。ちょっと暑気払い。 日も暮れ、食事を済ませ、昨晩録画の五郎@群馬も見終わったところで、さてまだ寝るには早い夜半のひととき。今夜はジャズ気分。こんな盤を取り出した。


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ジョン・コルトレーン唯一のブルーノート録音にして定番・名盤の「ブルー・トレイン」。ジョン・コルトレーン(ts)、カーティス・フラー(tb)、リー・モーガン(tp)、ケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)。1957年録音。Amazonでのカスタマレヴューの多さからも、今もって高い人気を誇る名盤だ。収録曲は以下の通り。

 1.ブルー・トレイン
 2.モーメンツ・ノーティス
 3.ロコモーション
 4.アイム・オールド・ファッションド
 5.レイジー・バード

ぼくは格別コルトレーンファンというわけではないが、手元には10枚ほどの彼の盤があるだろうか。その中にあって、このブルー・トレインは少々異色といってアルバムだ。コルトレーンというと、ストイックで求道的なイメージの集中力の高いプレイをイメージするのだが、このアルバムでは3管編成によるアンサンブルと、個々のインプロビゼーションのバランスを考慮した完成された形式のプレイが繰り広げられる。演奏自体もコルトレーンらしい音数の多いアドリブ、負けずに吹きまくるリー・モーガンのトランペット、管が抜けたあとのケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)によるトリオとしての演奏など、いずれもエネルギッシュでありながら、リラックスした楽しさにあふれている。
特にアップテンポの#2:モーメンツ・ノーティス、#3:ロコモーション、#5:レイジー・バードのドライブ感あふれるプレイはいずれも圧巻だ。


この盤の音源で<モーメンツ・ノーティス>


同曲。コルトレーンの息子ラヴィ・コルトレーンと現代の名手たちマイケル・ブレッカー、マッコイ・ターナー、クリスチャン・マクブライトたち。


チック・コリアによるモーメンツ・ノーティス。ぐっとモダンな響き。



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ソル:もう一つの<魔笛>



先日の<魔笛>変奏曲のあれこれで思い出し、フェルナンド・ソル( 1778-1839)の“もう一つの”<魔笛>をさらってみた。


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<魔笛>からの6つのアリアという作品。有名な作品9の<魔笛>変奏曲の影に隠れて、演奏されることは稀だし、市販の曲集でもお目にかからない。以下の6つの曲がセットになっている。

 第1曲「僧侶たちの行進」
 第2曲「女の妖計から身を守れ」
 第3曲「ふたたびようこそ」
 第4曲「これはなんと素敵な響きだ」
 第5曲「心正しい人がすべてこんな鈴を持ったら」
 第6曲「イシスとオシリスの神よ」

ぼくは特別なモーツァルトファンでもないし、彼のオペラも手元に<魔笛>と<フィガロ>の全曲盤はあるにはあるが、ろくろく聴いていない。だからこうして有名なアリアから6つ…と聴いても、恥かしながら、ああ、あれネとにわかに合点できないのだ。

いずれも2分に満たない小品ながら、それぞれにギターらしい音形を取り込み、同時に古典から初期ロマン派の和声感を込めたソルらしい作品。第4曲「これはなんと素敵な響きだ」は作品9の変奏曲と同じテーマが使われ、テーマに続いてハーモニクスを使った変奏が続く。 総じてテンポもゆっくりで穏やかな曲想。速弾きや高速アルペジオなどの技巧は不要だが、ポリフォニックな音をバランスよく響かせつつ、和声の緊張と解決、倚音の扱いなどに意を尽くして弾くのは、中々ハードルが高い。中級レベルを自称する諸兄の自己評価には好適の曲かと。


F.ソル <魔笛>から6つのアリア作品19。Boijeコレクションにある楽譜。
http://boije.statensmusikverk.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20471.pdf



この曲の音源。6曲を続けて弾いている。シュトゥットガルトの音楽大学での録音。「いわさきふみひこ」と記されているから留学中の方だろうか。


クラシックギター曲の定番、フェルナンド・ソルによる<魔笛>変奏曲作品9の主題は、第1幕第17場<なんと素晴らしい鐘の響き>による。上にあげた第4曲も同じ。以下の音源では1分40秒あたりから始まる。そのあとに2分25秒過ぎから第5曲に使われている「心正しい人がすべてこんな鈴を持ったら」が歌われる。



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パピーその後



昨年秋から盲導犬育成のボランティアとして一年間お預かりしているパピーのその後。生後7ヶ月を過ぎ、体はほぼ成犬になって半年前の面影はない。見かけだけはすっかり一人前。手足が長いイケメン君だ。


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2015年に初めて盲導犬育成ボランティアをやったときは雌のイエローラブ。今回は男の子ということで、とんでもないヤンチャ小僧だったらどうしようかと気をもんだが、半年経過してまずまず落ち着いた。まだ一人で長い時間留守番をさせるのは、リスクゼロではないので控えているし、手の届くところに物を置かないよう徹底している。

私の尻にあごをのせ…
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冬をはさむ半年間、夜も極力目を離さないようにと、家人と輪番の24時間監視はちょっと辛かったが、しばらく前からはほぼ人間の寝起きと同じタイムスケジュールになった。 もうすぐ5月。6月には梅雨を迎え、そして夏。9月末まで預かる予定だ。もうしばらく、よろしくね(^^


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<追伸>
そうだ、業務連絡を…
この4月から始まった<孤独のグルメSeason7> あす4月28日の放送には当地群馬県下仁田町が登場する。下仁田=「しもにた」と読む。井森美幸の出身地にして、独自に甘みをもつ長ネギの産地として知られる。さて、五郎君の首尾やいかに…



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カルリの<魔笛>変奏曲



先日、旧友Y氏が、今まで未見だったフェルディナンド・カルリ(1770-1841)作の<魔笛>の主題による変奏曲の楽譜を見つけたとmixiに書き込んでいた。Y氏はおそらく日本でギター譜に関してもっとも広く深く知っている一人と思うが、その彼をして初めて見たというのだから、ぼくも少々驚いた。


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彼が見つけたのはこちらのサイトで(PCビューの画面右側にあるMusical Archive of originals and adaptations with guitar or lute in PDF by A.Nagytothy-TothのGuitar solosをクリック)、原典のファクシミリ版ではなく、リライトされたものがアップされている。多作家であったカルリの作品270(or276?)の中の一つであるようだ。ちょっとさらってみたが、有名なソルの<魔笛>変奏曲と同じ主題を使っている。序奏に続き主題、そして7つの変奏があって最後にコーダが付く。曲そのものは「いつものカルリ」でパッとしないが、よく知られる同じカルリのト長調の<魔笛>変奏曲よりも技巧的にできている。

ぼくらギター弾きにとって<魔笛>の主題による変奏曲というと、真っ先にフェルナンド・ソルの作品を思い出す。プロ・アマと問わず、あるいは弾けようが弾けまいが、必ず手を付ける曲の一つだ。主題に使われているのは第一幕の合唱曲<これはなんと素晴らしい響き>。この曲は単独でもよく演奏されるように、当時から大そうな人気曲であったようだ。以前、旧友Y氏とこの曲の話になって、意外に知られていないのだが、有名なソルの作品以外にも、同時代のカルカッシ、カルリ、ジュリアーニといったギター弾きにはお馴染みの作曲家もこの主題を使って変奏曲を書いているという話になった。確かにソルの作品は立派なホ短調の序奏が付き、軽妙な主題提示以降、各変奏曲もギターの特性を生かしながらも普遍的な古典的様式感と和声感を備えた素晴らしい曲ではあるが、他の曲も、当時の雰囲気を知る意味でもっと弾かれてもいいと感じる。

カルカッシが同じ主題で書いた<イシスの神秘の主題による変奏曲>作品24。<イシスの神秘>は<魔笛>の仏版に付されていたタイトル。立派な序奏付き。
楽譜はこちら ⇒
http://boije.statensmusikverk.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20624.pdf


ジュリアーニ <魔笛>の主題による変奏曲。
楽譜はこちら(第1曲) ⇒
http://maurogiuliani.free.fr/partitions/Tre%20tema%20favoriti%20con%20Variazioni%20....pdf


カルリ作の以前から馴染みのある ト長調の<魔笛>変奏曲(48のプレリュードと24の作品中の1曲)は、かつて音友社から出ていたギターライブラリーにあった。
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主題の原曲<これはなんと素晴らしい響き>第一幕の合唱曲…だったかな。



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パイヤールの<四季>



ふと思い出したのだが…
ジャン=フランソワ・パイヤールが亡くなってから5年が経った。1928年生まれ。2013年の4月15日に85歳で亡くなった。50年代に自身のアンサンブルを組織してパイヤール室内管弦楽団と称し、60年代から70年代にかけてエラートレーベルにぼう大な録音を残した。ぼくら世代にはパイヤールといえばバロック音楽の代名詞のような存在だったが、古典期のモーツァルトや更にフランス近代のドビュッシーなども得意にしていた。70年代にはエラート録音の比較的初期のものが廉価盤で出たため、手元にも何枚か彼の盤がある。


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今更ながらのヴィヴァルディ<四季>。この盤は1976年の録音。社会人になって間もない1979年、当時としてはまだ新譜に近かったが、来日記念か何かで特別価格千円でリリースされた際に買い求めた。前後して初めてまともなオーディオ装置も買って、最初に針を落としたのがこの盤だった。デンオンのPMA-850というアンプに同じくデンオンのレコードプレイヤーDP-50M、カートリッジは定番DL-103。スピーカーはフォステクスの10センチフルレンジFE-103を長岡式の小さなバスレフボックスに入れた。格安廉価盤の最新録音に気をよくして会社の寮の部屋に持ち帰り、針を降ろしたときの驚きは今も覚えている。それまで聴いたことのない素晴らしい音だった。フォステクスの小さなスピーカーからはパイヤールらしい明るく流麗な音楽流れてきた。ヴァイオリンは艶やかで、コントラバスの低音もしっかり音程が分かるほどよく聴こえた。それまで学生時代はラジカセに毛の生えた程度の機械で聴いていたのだから、そう感じても当然だった。以来ときどきこの盤を取り出して聴くたびの、当時の光景を思い出す。

今夜は“夏”に針を降ろした。<四季>を聴くとき、昔は一番面白くないと思っていた“夏”が、今は断然面白い。物憂げなイントロダクション、ソロヴァイオリンやチェロが奏でる鳥たちの鳴き声、激しい雷雨の急襲…。バロック形式のヴァイオリン協奏曲の枠に、ソネットに書かれた自然の情景や人々の営みを見事に描写している。パイヤール指揮のパイヤール室内管弦楽団の音は、他のドイツ系バロックアンサンブルとは明らかに違っていて、明るく爽やかで流れるようにレガートな演奏だ。当時はまだ今ほどピリオド様式が盛んではなかったから、現代の視点でみると、歴史的オリジナル指向からは遠いだろうが、パイヤールの分かりやすく明快な音楽作りは、当時の多くの人たちに受け入れられ、バロックブームを支えたのは事実だ。

あらためて思うのだが、自分が普段聴く演奏の多くがすでに物故した演奏家のものであること気付く。ぼくが若い頃に巨匠といわれていた演奏家は、指揮者だけ思い浮かべてもすでにほとんどが他界したし、次世代旗手と言われたマゼール、アバドも鬼籍に入った。メータ、小澤も80代だ。今はぼくと同世代が活躍の真っ只中だろうが、ティーレマン、サロネン、ゲルフギエフ他ほとんど聴いていない。自分もそれだけ歳をとったという証しなのだが、<四季>の“夏”の物憂い響きと相まって、何だかやるせなくなる。


この盤の音源で“夏”


攻めるムター(^^; 第3楽章


ヴィヴァルディやバッハはロック野郎(じゃなかったか…)にも人気だ。



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演奏録音 小品2題



久々の演奏録音。演奏…なんて、そんな大したものではないけれど…。


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久しく録音から遠ざかっているのは、ひとえにギターを弾いていないからに他ならない。毎夜つまらないブログなど書いてないで、せっせと練習に励めばいいものをと思いながら、一向に手についていない。

今回の録音は昨年2017年夏に地元で開かれたmixi仲間の発表会でのもの。ファイルを整理していたら、あっ、こんなのあったっけ…と見つけた。例によって現地集合のあとあみだくじで順番を決め、ぶっつけ本番。 事前のおさらいもせずに楽譜を広げて駆けつけ三杯の雑な弾きぶり…いろいろ言い訳が付くのは下手な素人の常…ごめんなさい。
当日、持参したレコーダーが不調だったので、知人が別のレコーダーで撮ってくれたもの。会場は響き過多の会議室で細かな音が聴こえない。チェロ組曲は前奏曲とサラバンドも弾いたのだが、あまりに不出来で公序良俗に反すると判断して割愛。ソルのワルツは倚音の扱いがポイントだが、右手・左手ともあちこちで制御出来ていない。


バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番よりメヌエット1・2 使用楽譜は小船幸次郎編


フェルナンド・ソル:ワルツ作品32-3。楽譜はこちら⇒http://boije.statensmusikverk.se/ebibliotek/boije/pdf/Boije%20480.pdf



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イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ



このところ身辺諸事情あって気分が晴れない。不惑の年どころか、還暦を過ぎても、ああでもないこうでもないと腐心することが多い。日々の備忘とはいえ、呑気にPCに向かって駄文を打っているのも、我ながら無為の最たるものと思うのだが…。と、そんな投げやりな気分をみずから癒そうかと、こんな盤を取り出した。


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イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ集。NAXOSレーベルの1枚で、80年代に名だたる国際コンクールを総なめにしたイリヤ・カーラーが演奏している。2001年録音。 イザイ(1858-1931)といっても、実のところ作曲家としてはこの無伴奏だけが突出して有名で、一般の音楽愛好家にはそれ以外の曲はあまり馴染みがないのではなだろうか。実際ぼくもこの盤以外に何も持っていなかったはずだ(無伴奏チェロがあったかな…)。この無伴奏ソナタはその名から想像する通りバッハのそれを意識して書かれた。第2番などは冒頭からバッハの第3番がそのまま出てくる。それと、ギター弾きの視点からみると、私見ながらギター編曲への適合性はバッハより良いと思われるのもこの曲の魅力の一つだ。

一聴すると何とも不思議な感覚になる曲だ。いずれの曲も調性感があり、曲の組み立ても古典的なのだが、常にどこか暗く不安な空気が支配している。その不安定で抽象的、神秘的な空気と、同時に聴きなれた調性感と機能和声の予定調和的安堵感とが同居する。そして聴き手の心が何故か落ち着き平静になる。不思議な魅力をもった曲の一つだ。


単一楽章の第3番ニ短調


ギター編曲版による第2番の第1楽章。


ギター編曲版による第4番のアルマンド



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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