レナータ・タラーゴ(G)



きょうは先日来のバルバラ・ポラシェックで思い出し、またまた古めの女流の盤を取り出した。


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レナータ・タラーゴ。
ぼくらより少し年上のギターファンには懐かしい名前だろうか。1927年スペイン生まれの女性ギタリスト。ポラシェックよりはひと回りほど年上の大姉御。ネットで調べると2005年に亡くなったとある。この盤は1963年リリースの国内盤で、可愛らしいジャケットデザインも60年代風だ。もう1枚の彼女の盤と合わせてリサイクルショップのジャンク箱から救出してきた。A面にはミラン、ナルバエス、ムダーラといったスペインのビウエラ曲が並んでいる。その流れを汲むものとして、少し珍しいフェランディエーレの古典的な小品も2曲入っている。B面はすべてフェルナンド・ソルの作品で、メヌエットと練習曲、作品番号無しのアンダンティーノ、そして魔笛バリエーションで終わっている。

タラーゴのギターは多分この時期、60年前後のスペインギタリストの典型ではないかと思わせる弾きぶりで、曲によっては様式感を逸脱した自由な解釈もみせる。同じソルでも、メヌエットではソルの古典的な様式をしっかり踏んで端整な演奏をしているのだが、魔笛になる一変、かなり自由なテンポの変化や強弱設定があって、少々面食らう。主題をゆったり弾いたかと思うと、最後の二つの変奏とコーダは破綻寸前の猛スピードで突っ走っていく。同じソルにもかかわらず、魔笛でこれだけ奔放な解釈をするには何か訳があったのだろう。古典的様式と思っている魔笛バリエーションに、スパニッシュな要素を感じたのかもしれない。 ビウエラ曲も、ミランではきっちりしたインテンポ、和音もオンビートで弾いているが、ナルバエスやムダーラではかなりテンポを揺らす。ムダーラの有名な「ルドビーコのハープを模した幻想曲」では通常この曲を弾くときにしばしば使うカンパネラ奏法はまったく使わず、テンポの変化だけでこの曲の幻想的な雰囲気を出そうしている。そしてまたフェランディエーレの佳曲メヌエットとコントラダンサ・デ・ロス・クルターコスでは、しっかりした古典的な雰囲気を聴かせてくれる。

70年代以降、日本では彼女の音信はあまり聞かれなくなった。ぼくの記憶の中にも印象の薄い奏者だったが、こうして残されたレコードで彼女を聴くと、現代のインターナショナルな奏者にはない個性を感じて中々味わい深い。


ロドリゴの「小麦畑にて」


モレーノ・トローバのカスティーリャ協奏曲の第1楽章。こちらは60年代初頭のレコード録音音源とのこと。


彼女の壮年期(1968年前後)と思われる動画があったの貼っておく。Deadfall「恐怖の落とし穴」という映画に挿入されたものとのこと。007シリーズの音楽で有名なジョン・バリーの作品を弾いている。指揮しているのがジョン・バリー本人だ。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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