若き日のラーンキ



きょう昼下がりの3時過ぎ、突然ドーンと強く突き上げるような地震に見舞われた。当県南部を中心に最大で震度5弱の揺れを記録。震源が当地直下で前触れなく、驚いた。揺れが短時間で収まったこともあって、大きな被害はなかった様子。当地は比較的安定した地盤と認識しているが、日本中どこも直下型の震源になりうることに違いはないのだろう。 さて、梅雨空続く日曜が終わり、明日からまた仕事という晩。音盤棚を見回していたら、こんな盤を見つけて取り出した。


201806_Ranki_Chopin.jpg


デジュー・ラーンキ(1951-)の弾くショパンの前奏曲集。1981年録音。手持ちの盤は1983年にリリースされたときの国内初出盤。これもまた以前ネットで箱買いした中の入っていたもの。針を通した形跡のないミント状態。30年余の眠りから覚ますようにSPUの針を降ろした。

ラーンキといえば1970年代半ばにハンガリーの三羽烏として、コチシュ、シフと共に大そうな人気を得た。中でもラーンキは、その甘いマスクと端正な演奏で多くの女性ファンの視線が集中したと記憶している。あぁ、あれから30年…いずれもそれぞれに一国を成し、円熟のときを迎えているといったらいいだろうか。このショパンのアルバムは1981年録音というから、ラーンキがデビューしてから数年後。すでに評価も定まり、ジャケットの写真にも20代の若者から30代となった成熟が見て取れる。

ぼくにとってショパンの前奏曲というと、学生時代に慣れ親しんだポリーニ盤の印象が強く、良し悪しは別として、どうしてもその演奏を基準において聴いてしまう。もっともそうした大昔の記憶も遠くなりつつあるのだが…。ラーンキの演奏はそうした比較を待つまでもなく、一聴してその端整なスタイルが聴き取れる。テンポの動きは少なく、ルバートも控え目、付点音符の扱いも正確だ。いずれの曲もお手本のように正確かつ真面目に弾いている感が強い。もちろんそれに不足はない。どの曲もナチュラルによく歌うし、第16番変ロ短調や第22番ト短調の激した表現も十分熱い。現在のラーンキがどんな演奏をするのか、ディスクもライヴも未聴だが、この盤の録音には、30歳の若きラーンキの輝かしい一瞬が収められている。青春ふたたびかえらずの貴重な記録だ。


この盤の音源。


ラーンキの今@2015年。夫人、息子との協演。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

R・シュトラウス ホルン協奏曲



雨模様の土曜日。陽射しなく肌寒くさえある一日だった。天気予想をみると明日以降、来週もずっと雨マークが続く。きょうは朝から野暮用外出。三時少し前に帰宅。夕方までの時間、久しぶりアキュフェーズの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


201806_R_Strauss_Horn_Concert.jpg


2年程前に手に入れたルドルフ・ケンペ&ドレスデン国立歌劇場管(SKD)によるリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)の管弦楽全曲集ボックスセット。その中から管楽器協奏曲の入っている8枚目を取り出した。収録曲とソリストは以下の通り。

 ホルン協奏曲第1番:ペーター・ダム(Hr)
 ホルン協奏曲第2番:ペーター・ダム(Hr)
 オーボエ協奏曲:マンフレート・クレメント(Ob)
 二重小協奏曲:マンフレート・ヴァイス(Cl) 、ウォルフガング・リープシャー(Fg)

このうち1975年に録音された二つのホルン協奏曲を聴く。
ホルン協奏曲というと真っ先に思い浮かぶのはモーツァルトの作品だが、それについで演奏機会の多いのがこのR・シュトラウスの協奏曲だ。第1番はR・シュトラウスが10代の終わりに、そして第2番は第1番から60年近くを経た70代後半に作られている。この二つの曲の間の生涯に、R・シュトラウスは後期ロマン派としての管弦楽法を極め、多くのオペラや管弦楽曲を作ったことになる。実際、この二つのホルン協奏曲はそうしたビフォー&アフター的な趣きが感じ取れて面白い。
第1番変ホ長調は冒頭から伸びやかなホルンのフレーズで始まり、以降もモーツァルト以降のウィーン古典派から、メンデルスゾーン、シューベルトといったロマン派前期の色合いを強く残している。音楽は終始明るく伸びやかで晴れ晴れしい。また第2番は伸びやかさや明るさのベースは変わらないものの、ずっと新しい和声感や変化に富んだ管弦楽法が駆使され、さながらホルンソロが活躍する交響詩のようだ。

70年代から30年以上に渡ってSKDを代表する<顔>の一人であったペーター・ダムのホルンソロは舌を巻く上手さ。伸びやかなロングトーン、もたつきのない高速パッセージ、弱音から一気に吹き抜けるフォルテシモ、いずれもホルンを聴く醍醐味ここに極まるの感がある。ペーター・ダム(1937-)は60年代にライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管で活躍し、1969年にSKDに入団。その直後の1970年にもハインツ・レグナー指揮のSKDをバックにこの曲を録音している。彼のHPによると、この第1番を1957年に初めて吹いて以来、2000年にブロムシュテット&SKDと大阪で吹いたのが157回目とのことだ。

ケンペ&SKDのバックも素晴らしい音。レーベルがEMIからワーナーになって今回リマスタリングされた結果かどうか、以前の盤を持っていないので判別しかねるが、今回の盤で聴く限り、SKDの音は同時期の東独シャルプラッテンやのちの日本コロンビアとの一連の録音とはかなり違った音作り。中高音はかなり華やかに響き、奥行き方向の音場感はほどほどで、むしろ音は前に積極的に展開する。もちろんうるさい感じはなく、各楽器の解像度、弦楽群のパート分離も極めて良好で申し分のない音に仕上がっている。それにしてもこのワーナーのボックスセット。レギュラープライスCD1枚分でR・シュトラウスの管弦楽曲・協奏曲全曲が聴けるというのは、まさに爆安のひと言に尽きる。


ホルン協奏曲第2番第1楽章。名手ラデク・バボラーク@2010年 下野竜也&読売日響。


第1番第3楽章。当地出身鈴木優の演奏@2009年。当時高校3年生。バックは群馬交響楽団。芸大を経て2015年から東京交響楽団に所属



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

エラ・アンド・ベイシー!



六月も半ば。梅雨入りから二週間。関東地方はこの時期らしい小雨交じりの日が続く。
さて週末金曜日。プレミアムなんとやらはいずこへ…いつも通りに帰宅した。ひと息ついてネットを覗いていると、きょう6月15日はエラ・フィッツジェラルドの命日と出ていた。1917年に生まれ、1996年のきょう79歳で世を去った。その歌声からは想像できない悲しい晩年を思いながら、こんな盤を取り出した。


201806_Ella_Basie.jpg


エラ・フィッツジェラルドがカウント・ベイシー楽団をバックに歌った、その名も<Ella and Basie !>というアルバム。1963年録音。手持ちの盤は90年代初頭に出た国内盤CD。収録曲は以下の通り。お馴染みのスタンダードが並ぶ。

 1. ハニー・サックル・ローズ
 2. ディード・アイ・ドゥ
 3. イントゥ・イーチ・ライフ・サム・レイン・マスト・フォール
 4. ゼム・ゼア・アイズ
 5. ドリーム・ア・リトル・ドリーム・オブ・ミー
 6. 二人でお茶を
 7. サテン・ドール
 8. アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
 9. シャイニー・ストッキングス
 10. マイ・ラスト・アフェア
 11. 浮気はやめた
 12. 明るい表通りで

今どき女性ボーカルというと、小編成のコンボバンドをバックに歌うスタイルがまず目に浮かぶが、50~60年代のモダンジャズ全盛期、多くの歌手はダンスバンド専属の歌い手としてそのキャリアを開始するのが一般的だった。エラ・フィッツジェラルドも十代の終わりにハーレムのダンスバンドの歌い手となって以降、数多くの録音を残した。ぼくはそのうちごく僅かの盤しか知らないが、このカウント・ベイシーとの協演は中でも素晴らしい一枚だと感じる。当時40代半ばのエラの声はツヤとハリがあり、アップテンポではキレよく、バラードではしっとり、しかし嫌味にならず、さすがの歌唱を聴かせる。

そんなエラに負けず劣らず素晴らしいのがベイシー楽団のバックだ。名アレンジャー、クインシー・ジョーンズの編曲の妙もあって、単調な歌伴とはひと味もふた味も違う。クインシーのアレンジは、音数はむしろ少ないくらいで、エラの歌唱を邪魔することはなく、要所要所でホーンセクションがキレのいい合の手を決める。全体として、ビッグバンドからイメージするガンガン行くぜ的な雰囲気は微塵もなく、整然としていてうるさくない。節操のない暑苦しいビッグバンドはちょっとという向きにはイチオシのアルバムだ。


<二人でお茶を>


<シャイニー・ストッキングス>


<シャイニー・ストッキングス>はビッグバンドからヴォーカルまで人気のスタンダード。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ニッキ・パロット



週半ばの水曜日。先週梅雨入りしてからここ数日、降ってはやんだりしていた雨があがり、きょうは中休み。霞が関某庁での仕事が予定通り終わり、いつもの時間が帰宅した。ぼちぼち日付が変わる頃。雑誌を広げながら、ゆるめのジャズを。


201806_Nicki_Parrott.jpg


本ブログではすでに何度か記事にしているニッキ・パロット(1970-)の盤。手元には彼女のアルバムが2枚あるが、そのうち<ムーン・リヴァー>と題された2007年リリースの盤をプレイヤーにセットした。ジャケット写真をみると、そういえばと思い出す輩もいるかもしれない。アピール度MAX。もちろんジャケ買い(^^; 収録曲は以下の通り。

ムーン・リバー/イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー・エイント・マイ・ベイビー/セイ・イット・イズント・ソー/ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ/恋のチャンス/アイ・ドント・ノウ・イナフ・アバウト・ユー/メイキン・ウーピー/クライ・ミー・ア・リバー/縁は異なもの/ベサメ・ムーチョ/捧ぐるは愛のみ/ニッキのブルース/ザ・モア・アイ・シー・ユー

やや古めのジャズ・ポピュラーのスタンダードが並ぶ。チャーミングなジャズシンガーがベースを弾きながら懐かしいスタンダードを歌う…その光景を想像するだけでオッサンのぼくには十分に魅力的。実際、さらりとした軽い歌い口、ときに見せるコケティッシュなフェイクは、ジャケット写真がなかったとしても、思わず目尻が下がる。選曲しかり、程々の軽いスウィング調のアレンジしかり、音が出た途端に身体が弛緩してリラックス。温泉につかったときのように、思わず、ア~ッ…と吐息をもらしてしまう。ハードバップや辛口のジャズももちろんいいが、ときには四の五の考えず、こんな無条件降伏みたいなアルバムも聴きたくなる。


ピアノとのデュオ


ギター2本とのトリオ編成。


インターヴューを受け、そのあと7分40秒過ぎからソロで1曲歌う。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ジュリアーニ <スペインのフォリアの主題による変奏曲>作品45



このところまとまってギターを手にする時間がなく、まともな練習は出来ないのだが、そんなことを言っているうちに人生が終わってしまいそうなので、細切れ時間も利用して楽器を取り出すよう心掛けるよう(^^。今夜も僅かな時間ながら、楽器を取り出し、こんな曲をさらった。


201806_MG_OP45.jpg



先日来の変奏曲つながり。今夜はマウロ・ジュリアーニ(1781-1829)作品45<スペインのフォリアの主題による変奏曲>。この曲も学生時代から時折楽譜を広げては弾いている曲。自称中級以上の諸氏ならば、きっとさらったことがある曲だろう。主題となったフォリアについてあたらめて記す程の知識もないが、スペインあるいはポルトガル由来の曲(ないしはモチーフ)で、バロック期以降、多くに作曲家がそのテーマ(低音あるいは和声進行)による変奏曲を作った。ギター作品でもこのジュリアーニを始め、フェルナンド・ソルや近代のマヌエル・ポンセの作品が有名だ。ジュリアーニのこの曲は、ギター弾きにはお馴染みの<ジュリアーニ的>技巧で書かれていて、高速のスラーやオクターブ跳躍など、日々の指の練習にも好適な曲だ。

元のフォリアの和声進行をほとんど崩さず変奏を展開していることもあって、ゾクッとするような和声感はあまりない。各バリエーションに設定された技巧的作法をそこそこのスピードとダイナミクスの変化をつけて弾き切ること求められる。中では、ニ長調に転じてゆったりを歌う第5変奏の最後、オクターブ跳躍しながらテンポを上げてアタッカで第6変奏ヴィヴァーチェに入るくだりが、この曲の聴かせどころだろうか。音符の並びだけ見ると、そう難しくはないのだが、それだけに面白く聴かせるにはスピード感と技巧の余裕が必要だ。

楽譜はこちら


映像は不鮮明だが、演奏はとてもいい。先に記した第5変奏から第6変奏へのブリッジは、3分過ぎ辺りからニ長調の穏やかなフレーズに続き、3分20秒から3分40秒にかけて。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ベートーヴェン 弦四<セリオーソ>



雨の週明け月曜日。本日も程々に業務に精励。帰宅後ちょっとアクシデントあって、夜半近くなってようやく落ち着いた。数日ぶりに音盤タイム。何故か弦楽カルテットのそぎ落とされた響きが聴きたくなり、こんな盤を取り出した。


201806_LVB_SQ_11.jpg


ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番ヘ短調<セリオーソ>作品95。手元にはアルバン・ベルクカルテットの盤(初回録音)、昨年入手したゲヴァントハウス四重奏団の比較的新しい録音などがあるが、今夜は50年代モノラル時代の名盤、バリリSQの全集盤を取り出した。手持ちの盤は60年代のおそらく国内初出盤。ミント状態のボックス入りセットに980円のプライスタグが付いているのをリサイクルショップで見つけ、小躍りして買い求めた記憶がある。

<セリオーソ>というベートーヴェン自身が付けた題名通りの曲想。中期から後期に至る狭間に作られ、ラズモフスキーセットのような問答無用の充実感とはひと味違う凝縮感。全4楽章通しても20分程で決して大きな曲ではないし、いかにもベートーヴェンという展開に圧倒される感もない。
第1楽章は切羽詰まったような主題で堰を切ったように始まるが長くは続かず、ふと緊張の糸を緩めたように力を抜くフレーズが現れる。以降も所々煮え切らない様子が続く。 第2楽章は安息に満ちた主題で始まる。しかし不安そうな気配が続き、意味深長な減七和音で擬終止したのち 第3楽章がアタッカが始まる。 第4楽章も哀歌を聴かせながらも、最後は突然あっけらかんとしてFdurに転じてしまう。ベートーヴェン自身の模索とも諧謔とも言われる理由がよく分かる曲だ。

バリリSQの演奏は、たっぷりとしたヴィブラート、時に波打つような大きな抑揚表現など、現代的視点でいうとひと世代前のスタイル。アンサンブルの精度も昨今のレベルからみると見劣りする。しかし、モノラル盤の太く温度感のある音質も手伝って、この曲の凝縮感に程よい肉付きを与えたような演奏で中々好ましい。


バリリSQによるこの盤の音源。


アフィアラ・カルテットという若い団体の演奏。
北米随一のバンフ国際弦楽四重奏コンクールの覇者とのこと。


マーラーはベートーヴェンやシューベルトなどの曲をいくつか編曲・改編している。この<セリオーソ>にもマーラー編の弦楽合奏版がある。当然だが、弦四編成とはまったく印象が異なる。マーラーの意図通りだろうが、ロマン派色が濃厚になり、そぎ落とされた凝縮感でなく、悲劇性と同時に豊かな抒情性が表出する。素材の良さは紛れもなしというところだろう。大阪の音大生によるオケによる演奏で第1楽章を貼っておく。(第2楽章以下もあり)



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事

ソル「私が羊歯だったら」の主題による序奏と変奏



何気なくテレビのスイッチを入れるとプロレスラー蝶野正洋とジャズピアニスト大西順子が出ていた。後楽園ホールのリングで蝶野に技をかけられる大西順子に巡り合えるとは(爆)たまにはテレビも見ないといけません。 さて、きょう土曜日、所属している隣り町のマンドリンアンサンブルでちょっとした演奏機会があって参加予定だったが、急な野暮用でドタキャン。うだうだと時間を過ごした。夜になってひと息つき、先日の続きでちょっとギターをさらう。取り出した楽譜はこの曲。


201806_Sor_Op26.jpg


前回からの変奏曲つながりでフェルナンド・ソル(1778-1839)作曲の「私が羊歯だったら」の主題による序奏と変奏作品26.広げた楽譜は前回同様中野二郎編。中野二郎編のソル全集は初版が70年代半ばに出て、今も版を重ねている。現在では複数のソル全集が存在するが、今もって信頼に足る版として貴重な存在だ。

楽譜を広げて弾き始めると、先日の作品28<マルボロ―の主題による…>に比べると技術的難易度が高い。11小節からなる序奏こそすんなり弾けるだろうが、続く主題の提示からハイポジションかつ縦に厚い和音構成。ハイポジションでの音の位置が頭と体に染み込んでいないと初見ではつまづく。ハイポジションでの和音は音をキープすることと同時に、左手各指の力の入り具合で和音を構成する音の音程がそれぞれ微妙にずれ、その結果和音としての響きの純度が失われがちだ。
主題の「私が羊歯だったらQue ne suis-je la fougère」は古いフランス民謡といわれるが、諸説ある模様。曲想は相変わらずソルの趣味のいい和声感に彩られている。特にイ長調に転じる第3変奏はLent_Cantabileの指定があって美しい。曲は技巧的な第4変奏で突然終わるが、何かエンディングがほしい気がしないでもないが、どうだろう。

楽譜はこちら


フィンランド出身パトリック・クレモラによる19世紀ギター(ファブリカトーレのレプリカ)を駆使した演奏。ハイポジション左手の完璧なコントロール! アーティキュレーション他すべてに二重丸◎だ。


フェルディナンド・カルリ(1770-1841)も同じ主題を使って変奏曲を書いている。こちらは曲の規模も小さく、難易度もソルの曲よりずっと易しい。


「私が羊歯だったらQue ne suis-je la fougère」元曲はこんな感じ。ペルゴレージ作という説もあるようだ。



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)