ハウザー1世ヴィエナモデル



関東地方は暑さMAX。外に出るのも勇気がいるので、終日在宅引きこもり。きのうの記事に書いた到着品の腑分け・検分と相成った。


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到着したのは、独ハウザー工房製作のギター。ハウザー1世時代の1921年(大正10年)に作られたヴィエナ(ウィーン)モデル。ほんの一週間前、ロンドン在住の古楽器奏者竹内太郎から話があったもの。同じタイプのものを数年前に一度試奏したが、そのときはこの楽器の性格と位置付けが自分の中で曖昧であったこともあってパスした。しかしその後、この楽器のもつ19世紀的要素とその後のモダンギターに通じる要素の入り混じった性格に興味があり、適当な出物を探していたところだった。今回のものは英国内のコレクター所有だったもので、相場に比して廉価だったことにも背中を押されて即決した。

ギター弾き諸氏には説明不要だろうが、ヘルマン・ハウザーは今日まで100年続くドイツ・ギターマイスターの名門。そのハウザー1世作の楽器がセゴヴィアの目に留まり評価を高めた。ハウザー工房では様々な形式のギター族を作っていたが、このウィーンモデルもその中の典型。セゴヴィアが使い始めたのはスパニッシュスタイルのハウザーギターだったが、おそらくハウザーを最初にみそめたのは、それ以前のウィーンモデルであったろうと竹内さん。19世紀の独墺系ギターを代表するシュタウファー工房作のレニャーニモデル(ヴァイオリンのパガニーニとデュオを組んで欧州で人気を得たギタリスト:ルイジ・レニャーニのモデル)を範に取る弦高調節機能を持っている。弦長は635mmという話だったが、弦高調節機能との関係で多少前後するのだろう、ぼくのセット状態では実測640mmを少し切るくらいだ。表板はスプルース。横裏板はメープル。表板には時代なりのクラックがあるが問題なく修理されている。ネックはVジョイント。ナット幅は47mmでゼロフレット付き。糸巻はライシェル製と思われるアルミ軸のものが付いている。仏系19世紀ギターと違い、独墺系らしく装飾要素は皆無。

届いた楽器にはごく普通のナイロン弦が張ってあった。その状態で弦高調節機能のネジを回してネックを合わせながら調弦し、まずは音出し。3弦がビニールっぽい音で精彩を欠く他は4年前の同タイプ試奏時の印象を変わらない。19世紀ギターとモダンの中間くらいの印象だ。一夜明けてきょうはまず弦の交換。手持ちの中からアクイーラ社のアンブラ800が取り出した。新品時は盛大に伸びるナイルガット弦のアンブラ800。糸巻をせっせと巻きながらA=415Hzで合わせて様子見。3弦の鳴りはぐっとよくなり、ビニールっぽさは消えた。ナイルガットのフィラメントに銀メッキ銅巻きの低弦音は通常の低音弦よりも反応がよく及第。総じて全域でバランスよく鳴るようになった。

ガット弦風のざらついた表面を持つナイルガット高音弦とのマッチングは良好で、タッチのときに指先と弦のざらつきで生じるノイズも心地よい響きに変わる。19世紀半ばの古典ギター最盛期の作品やタレガの小品などを楚々と弾くと何とも味わい深く、強いタッチで音量を稼ごうという気にならない。自然にタッチし、ギターが発するフィンガーノイズを含む響き全体に耳がいくようになるから不思議だ。一方で、19世紀ギターより重量があり、横裏の仕立てもしっかりしている。そのため音のサステインも19世紀ギターよりも長め。通常のナイロン弦の中から適当なものを選べば、一般的ななモダンギターに近いイメージの音になりそうだ。
きょうはまだ様子見の状態。詳細検分はまたいずれ。


同じタイプの楽器を弾くスタロビン。動画の終わり近くでこのハウザー製ウィーンタイプのギターについてコメントしている。ソルの作品48の6。楽譜はこちら


同ジュリアーニの作品51の13。楽譜はこちら



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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