モーツァルト<アダージョとフーガ>
逆回転サーブのような驚きのコースで進んできた台風12号。幸い当地は暴風雨圏からはずれ、きょうも降ったりやんだり、ときに晴れ間ものぞく一日だった。夜半を過ぎたが外は静か。少々蒸し暑い部屋もエアコンオンですっきり。さてと…久々にこんな盤を取り出した。


オットー・クレンペラー(1885-1973)とフィルハーモニア管弦楽団(PO)によるモーツァルト。手元にあるのは2000年前後にクレンペラーの一連の録音が、評判の悪かったHS2088方式のマスタリングから変って、ARTマスタリングで出たときの輸入盤。No.25、29、31の交響曲、序曲<コシ>と<アダージョとフーガ>が収録されている。少々手垢にまみれた感のある40、41番等後期交響曲を除いた選曲が中々好ましくて手に入れた。 さきほどから29番イ長調を聴き(素晴らしい演奏!)、少し前からは<アダージョとフーガK.564>が流れている。
今となっては、このクレンペラー&PO盤のような大編成オケによる同曲の演奏は、いささかオールドファッションということになるだろうが、この圧倒的な説得力を前にすると、そんな評価は吹き飛んでしまう。音楽の骨格と構成を聴くにはもっと小編成の見通しのよい演奏で聴くべしという主張は正しい。しかし、音楽を骨格ばかりで聴くわけでもないだろう。ときには有無を言わせぬグラマラスなボディーも必要だ。それに、このクレンペラー盤の演奏は、大編成にも関わらず音の状態、そしてオケの能力相まって、各声部が明瞭に分離し、音の濁りがまったくない。これはこのコンビによるEMI録音の特徴で、この盤に限らず、ベートーヴェンもブラームスにも共通している。当時、ロンドンの腕利きプレイヤーを集めて作ったオケだけのことはある。
この<アダージョとフーガ>も、冒頭の緊張感のあるトゥッティ、不協和音のぶつかり合い、うごめく低弦群の上にのる整ったピッチのヴァイオリン弦等々、素晴らしい効果を上げている。動きのあるフーガでも、各パートの独立性が抜群で、大編成でありながら音が団子にならず、常に各パートの対話が明瞭だ。1957年の録音というのが信じれないほどで、このコンビの優秀さに、あらためて脱帽した。交響曲など他の盤ももう一度聴きなおそう。
この盤の録音。オケの対向配置がよく聴き取れる。左から右へVn1・Vc/Cb・Va・Vn2
ティボール・ヴァルガ(Vn)率いるアンサンブル。 たっぷりとしたボウイングとヴィブラート、ときにポルタメントも。こういうオールドファッションの演奏も味わい深い。
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