モーツァルト 幻想曲ハ短調KV457



ここ2回ほどモーツァルトの短調曲の記事が続いたが、ことのついでに今夜も同じモーツァルトの短調つながり。こんな盤を取り出した。


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モーツァルトのピアノ曲から短調作品ばかりをピックアップした1枚。ヴァレリー・アファナシエフ(1947-)のピアノ独奏。手持ちの盤は10年程前に日本コロンビアの廉価盤シリーズでリリースされたときのもの。1993年録音。収録曲は以下の通り。

 1. 幻想曲 ニ短調 KV397
 2. 幻想曲 ハ短調 KV396(断片)
 3. 幻想曲 ハ短調 KV475
 4. ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457 I-Molto Allegro
 5. ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457 II-Adagio
 6. ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457 III-Allegro assai
 7. アダージョ ロ短調 KV540

このうち今夜はKV475の幻想曲ハ短調とKV457のハ短調のソナタを聴く。この2曲は同じハ短調で、出版も2曲を併せて行われたことから、一対の作品として扱われることが多い。KV475の幻想曲はこの盤での演奏時間が16分を超え、ソナタの方は24分を要している。幻想曲はその名の通り自由な形式で書かれているが、大胆な転調や不協和音を多用した重苦しいとも言えるハ短調の部分と、陽性で屈託のない響きのニ長調の部分とが入れ替わり現われ、テンポも緩急を頻繁に行き来し、独特な雰囲気をかもし出している。そして最後はハ短調のモチーフが重々しく繰り返され、解決しないままソナタハ短調へ引き継がれるかのような効果を上げている。幻想曲がソナタへの規模の大きな導入部として機能するという解釈もうなづける。加えて、これほど深い表現は他のモーツァルト作品でもたやすく聴けるものではないだろう。ほとんどベートーヴェンの後期作品かと思わせる場面もある。

幻想曲を受けてハ短調ソナタの第1楽章は決然とした主和音の分散和音のモチーフで始まる。このハ短調ソナタはモーツァルトのピアノソナタの中でも傑作とされる。交響曲の短調作品、25番と40番のうち25番ト短調を思い起こす曲調だ。重苦しさよりは、決然とした強い意志のようなモチーフが展開される。第2楽章は一転して穏やかな親しみに満ちているが、時折り不安さを覗かせる和音が鳴り響く。

アファナシエフの演奏は他の録音同様、曖昧さのない明確な表現意図がクリアな音と共に再現される。重々しい和音にはときに大きな休止を伴い、まるで呼吸が止まるかのように感じる。そして次の瞬間、また新たな生命が生まれるがごとく一音一音、音を刻んでいく。その音に耳をそばだてていると、聴く側の心の内までもその音でえぐられるような心持ちになる。


この盤の音源。ハ短調ソナタの第3楽章。


アリシア・デ・ラローチャ(1923-2009)による演奏。幻想曲とソナタをセットで演奏しているもの。YouTubeのコメント欄にはラローチャの他のモーツァルト演奏へのリンクが記されている。ラローチャはスペイン物ばかりでなく、独墺系の古典からロマン派までの演奏も素晴らしい。瞑想的な幻想曲に続き、決然と始まるソナタは12分05秒から。



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