シューマン交響曲の在庫確認。はい、もう止めます…と、その前にこの盤だけは(^^;

2013年2月に亡くなったウォルフガング・サヴァリッシュ(1923-2013)が残した最大の遺産ともいうべきドレスデン国立歌劇場管弦楽団とのシューマン交響曲集。学生時代にこの演奏に接し、エアチェックしたカセットで脳内の最深部まですり込まれた演奏。一部はLP盤でも持っているが、きょう取り出したのは十年程前に廉価盤で出た際に手に入れた2枚組みCD。4つの交響曲と<マンフレッド>序曲が入っている。1972年録音。今夜は第2番ハ長調をプレイヤーにセットした。第2番は他の1番<春>や3番<ライン>などの影に隠れがちで、ぼくにとってもかつてサヴァリッシュのこの演奏を聴くまでは、特に印象に残る曲ではなく、この演奏で開眼したといってもよい曲だ。
第1楽章冒頭の序奏はかなり遅いテンポでじっくりと一つ一つの音を確かめるように歩を進める。主部に入ると抑え気味に進めていた音楽は一気に活気を帯び、先へ先へと突き進む。ドレスデンのオケの素晴らしい響きと適確なアーティキュレーションがその推進力だ。テヌートの効いたフレージングにも関わらず、短いフレーズの中でも優れた運動性能が十全に発揮され、響きの切れがいい。悠然とした低弦群の響き、ときどき距離感を持ちながらも突き抜けてくるペーター・ダムのホルン、そして決め所でのゾンダーマンのティンパニ。第2楽章スケルツォも第1楽章の流れそのままに、横に流れるフレーズと、縦を合わせるアンサンブルの使い分けが適確で、まったく飽きさせない。第3楽章アダージョでの木管群の楚々とした歌いっぷりも涙物。終楽章も音楽の鮮度と勢い衰えず、弦楽群各パートの対話や遠く鳴り響く意味深げな金管群など、聴きどころ満載だ。 今どきの録音ではもう少し<冷静な>録り方とするのだろうが、この演奏に関して異例と言えるほど終始熱っぽく、ステレオイメージも左右いっぱいに広がりながら同時にぎっしりと音が詰まっている。
ぼくら世代にとってN響を度々振ったはサヴァリッシュは、中欧の伝統的な語法を伝える最も身近な指揮者のひとりだった。一方、ときに冷静に過ぎ面白くないといった評もあって、ぼく自身も若い頃は、もっとエモーショナルな演奏にひかれたのも事実だ。しかし、このドレスデンとのシューマンは、そうしたサヴァリッシュの評価を覆すに十分な活力と生気にあふれた素晴らしい演奏だ。
この盤の音源。第2番全楽章。
マレク・ヤノフスキとhr交響楽団(フランクフルト放響)による第2番。2017年11月のライヴ。7分20秒過ぎからの第1楽章展開部の佳境はベートーヴェンのように畳み込む。19分45秒からの第3楽章はロマン派らしい深い情感にあふれる。
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シューマン交響曲の在庫確認。今夜はこの盤。


オトマール・スウィトナー()指揮シュターツカペレベルリン(SKB)によるシューマン第1交響曲。Blu-SpecCD仕様で2012年にリリースされた日本コロンビア廉価盤シリーズの1枚。第3番とカップリングされ、2番と4番を収めたもう一枚と合せてシューマン交響曲全集を構成している。1986年6月ベルリンイエスキリスト教会での録音。
この演奏はまず、1841年自筆譜による録音として貴重な記録。スウィトナーがこの版にシューマンのオリジナリティを感じ、米ワシントン図書館所蔵の楽譜を使ってこの版による初めての録音を実現させたとライナーノーツに記されている。この演奏の音源をここで披露できないのが残念だが、この曲をよく知っている人にとっては、随所にオッ!と思わせる違いが聴き取れる。まず冒頭のホルンとトランペットによるファンファーレがびっくりしたなあもぉ~で始まる。写真はこのCDのライナーノーツに記されて譜例だが、この盤では通常版よりも三度低い旋律が奏される(譜例1)。通常版(譜例2)は変ロ長調の三度音程(d)が出て、調性が明確に提示されるのだが、この盤の1841年自筆譜版では、調性確定に重要な三度の音が出てこない。変更した理由は譜例1に出てくる3小節目のg-aが、当時の楽器では出しにくかったとからということのようだ。以降も木管と弦の重なり、ヴァイオリン旋律のオクターヴ処理など、あちこちで日頃聴きなれた演奏との違いに気付く。全体としては、通常版がより輝かしくメリハリのある響きを構成しているのに対し、この自筆譜版は落ち着いた響きが特徴だ。
スウィトナーとSKBの演奏は、このコンビによる一連のベートーヴェン、シューベルトなどと同様、弦楽群の響きを中心に木管群を含めたブレンドされたオーケストラサウンドの醍醐味が楽しめる。低弦群の支えも量感、質感とも万全で、方寸のわが道楽部屋にSKDと並ぶ当時の東独トップオケSKBの素晴らしい音が広がる。日本コロンビア技術陣の成果であるデジタル(PCM)録音も特筆物。全体と細部のバランスを勘案しつつ、やや全体優先とし、イエスキリスト教会のナチュラルエコーも存分に取り入れて、この曲の活力と深いロマンティシズムの両面を十全に再現している。
第1番変ロ長調「春」。指揮者をおかないスピラ・ミラビリスというイタリアのオケ。冒頭の練習風景ではこの曲のテーマを全員で歌ってフレーズの成り立ちを確認する様子がみられる。アイコンタクトの回数はのべ3万回くらいあるだろうか(^^; 演奏は8分20秒から。
スウィトナー&SKBによる「春」の音源が見当たらなかったので、代わって第4番ニ短調の演奏を貼っておく。1987年録音。
ラトル&BPO。第1楽章主部に入ったところのダイジェスト。このコンビは2014年、同団の自主レーベル「ベルリン・フィル・レコーディングス」の第一弾としてシューマンの交響曲全曲をリリースした。
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シューマン交響曲の在庫確認…きょうはお休み。代わって、到着からひと月ほど経った1921作ハウザー1世ヴィエナモデルのその後を。

同じ640mmのモダンとの比較

4弦のブリッジピンだけオリジナルにあらず

ライシェル社製の糸巻

ネックヒール部の弦高調整機構

指板と表板は非接触

到着早々、弦をアクイーラ社のアンブラ800に替えたところまでは前回の記事に書いた。その後もボチボチ弾いているが、楽器としては十分に鳴るようになり、些細な難点がないではないが、それらを帳消しするに十分なほど満足している。
さすがに100年近く、それも幾多の戦禍をくぐり抜けてきたかもしれず、表板には長い割れの跡がある。もっともこの時期の楽器で割れのない方が奇跡的だし、「割れない楽器は鳴らない」とまで言われていたことを勘案すると無理もない状態だ。しかし修復は丁寧になされていて現状ではまったく問題なく健全。メープルの横・裏板には割れ等なし。ネック、指板も反りや変形なく、弦高調整機能も良好に動作する。糸巻は現代のものとほとんど変わりない。当時から現在に至るまでハウザー製ギターに標準装備される独ライシェル社製と思われる。巻き具合もスムースだ。
ガット弦を模したアンブラ800の高音弦は、少しザラっとした触り心地で、よく磨いた爪とツルツルのナイロン弦による艶やかな音とは異なる。弦表面の細かな凹凸から出るカサコソとした音が、音そのもに表情を与えるとでも言ったらいいだろうか。これなら爪を使わない指頭奏法が有効になるのもうなづける。 低音は胴の共鳴をあまり伴わないため、量感は控えめ。当時セゴビアがハウザー工房を訪れ、高音はそのままに低音を強くしてくれと注文したという逸話も、さもありなんと感じる。サントスやマヌエル・ラミレスなど当時のスパニッシュ・スタイルのドスンとくる低音とは世界が違う。 ハウザーのヴィエナ(ウィーン)モデルと称される楽器にもいくつかの形があるが、おおむねシュタウファー系のプロポーション。しかし弦長610mmあたりが標準の独墺系に比べるとこのヴィエナモデルは640mmで、いわゆる19世紀ギターと言われる19世半ばの楽器に比べひと回り大きく、出てくる音もよりモダン寄りになる印象だ。
そんなこともあって、曲の時代を問わず楽しめるが、もっとも似合いそうなのはやはり古典からタレガ辺りまでかと思う。実は先日この楽器で宅録を試みたのだが、暑いさ中のことでエアコン送風音が邪魔してうまく録れなかった。いずれ涼しくなったら、またつたない演奏をアップするべく、練習に励むことにいたしませう(^^
同時期のハウザーヴィエナモデル。タレガの「ベニスの謝肉祭による変奏曲」
バーデン・パウエルもいけます。ミラーボールが…
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成り行きで今夜もシューマン交響曲の在庫確認。取り出したのはこの盤。

ラファエル・クーベリック(1914-1996)指揮バイエルン放送交響楽団によるCBSソニー盤のシューマン交響曲全集。4曲あるシューマンの交響曲。同じく4曲あるブラームスのそれと同様、いずれ甲乙付けがたいのだが、今夜は第2番を取り出した。1979年録音。このコンビはこの録音に先立つ60年代前半にベルリンフィルとやはり全曲を録音している。
カートンボックスをみると1450円の値札が貼られていた。確かこの盤も出張先の大阪で買い求めたはずだ。まったく針を通した形跡はなく、針圧を4グラムとたっぷりかけたオルトフォンSPUの針を降ろすと、クリアかつノイズレスの美しいアナログサウンドが響く。第1楽章の出だしは、うっそうとした深く暗い森をイメージさせ、この曲のもっとも印象的な部分の一つだ。トランペットが控えめに鳴り響き、クーベリックが好んだ対向配置のオケの左奥からコントラバスの基音が静かに流れてくる。主部に入ると推進力あふれる運びとなるが終始余裕をもった響きが素晴らしい。第3楽章のアダージョ・エスプレシーヴォもロマン派の薫り高く、美しいフレーズにあふれる。この第2番は他の3曲に比べ地味なイメージなのか演奏機会はもっとも少ないかもしれない。ぼくはサヴァリッシュ&SKDの名演でこの2番の素晴らしさを知り、以来、<春>や<ライン>よりも好むようになった。コンヴィチュニー盤の渋い運び、サヴァリッシュ盤の素晴らしく美しいSKDの響き、そしてこのクーベリック&バイエルン盤の堅固なドイツ的構成感、いずれもシューマンの交響曲を聴く楽しみを堪能させてくれる。
この盤の音源で全楽章。手持ちのLPよりもやや音圧が低く、渋い音色に聴こえる。
何度か貼った音源。2013年プロムスでのダニエル・ハーディング指揮マーラー室内管弦楽団による演奏。ハーディングも対向配置を取っている。中編成とピリオドスタイルの良さが生きる、クリアかつしなやかで躍動感あふれる演奏だ。第1楽章提示部は繰り返し有り(7分35秒から)。8分50秒から展開部へ。10分25秒あたりからゾクゾクくるところだ。11分過ぎまで緊張感あふれる展開が続く。40分50秒過ぎからの終楽章最後のティンパニー連打はいつ聴いても興奮する。
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30℃を超えたものの暑さ程々の日曜日。日暮れて一服。アンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。

フランツ・コンヴィチュニー(19011-962)とライプツィッヒゲヴァントハウス管弦楽団によるシューマンの交響曲。先日の記事に書いたスウィトナーのモーツァルトと同じく、ぼくら世代にはお馴染みの70年代廉価盤シリーズ:フォンタナレーベルの1枚。第3番と第4番のカップリング。1960年と61年の録音。十年程前に同コンビのCDボックスセットが安く出たときにものも手元にある。そのCDボックスセットにはシューマンの交響曲他、同じシューマンの管弦楽ピース、ベートーヴェンの交響曲全曲、オイストラフ親子のソロによるバッハの協奏曲他、かなりの曲が収録されている。LPの方はかれこれ40年前となる学生時代に手に入れ、それこそ擦り切れるほどよく聴いた。幸い盤質は現在も良好。いまもノイズレスで当時の音が蘇る。
このコンビのキャッチフレーズというと、もう昔から決まっていた。いわく、伝統を誇る燻し銀のような滋味あふれる響き…大体はそんなフレーズだった。その後の東西ドイツの統合、そして世代交代もしただろうから、同団もいつまでもそんな形容詞でくくれるオケではなくなっているだろう。そんなことを頭に思い浮かべながら第4番に針を下す。
オケの音としては派手さはなく、弦楽群と木管群との音色を整いよくブレンドされている。金管群も突然突き抜けてくるような響きがない。弦や木管による響きを底上げするような鳴り方だ。弦楽パートでは、コントラバスとチェロの下支えが極めて明瞭で要所要所のアクセントも低弦群のエネルギーが支配する。全体的には古色蒼然とした渋い響きといえるが、オケは十分鳴っていて迫力に不足はない。アンサンブルも切れ味鋭いものではないが、よく整っている。つまりはシューマンの、そしてこの第4番のイメージにジャストフィットといっていいだろう。しかし…とここまで書いておいて、ちゃぶ台をひっくり返すようでナンだが、この曲に関してはなんといってもフルトヴェングラー&BPOによる名盤がある。セル&クリーヴランド盤、サヴァリッシュ&SKD盤なども素晴しい。シューマンの交響曲は独墺系指揮者にとっては料理しがいのある、最も力の入る曲の一つだ。まあ、そうした幾多の名盤と比べて競う必要もなく、それぞれの盤が持つ個性的な味わいを楽しめばいいという、あたり前の結論に行きつく。
この盤の音源。シューマン交響曲第4番全4楽章。
ラトルとべリリンフィルが数年前にシューマンの交響曲全曲をリリースしたときの紹介動画。確かLP盤も出たはずだ。
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長らく使っていた扇子が壊れたので買い替えた。ついでに宅内用の団扇も。



この手の小道具にはまったく不案内。家人が、よく利用しているセレクトショップで選んでネット調達してくれた。山梨の山懐にある杉山江見堂という店のものとか。ウェブ上の写真と実物の色味も違いなく、渋さMAXのいい感じ。今夜はこれで涼をとりつつ、ヘンデルの「水上」か「花火」でも聴きませうか。

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帰宅すると玄関先に見慣れたアマゾンの箱。入っていたのはこれ。

カール・ベーム(1894-1981)が1960~70年代にグラモフォンに入れた独墺系交響曲を集めたボックスセット。具体的には以下の内容のCD22枚セット。
モーツァルト交響曲全集(ベルリンフィル)
ベートーヴェン交響曲全集(ウィーンフィル)
シューベルト交響曲全集(ベルリンフィル)
ブラームス交響曲全集(ウィーンフィル)
ベートーヴェンもブラームスも共に何セットも手元にあって、とうにおなか一杯。さらに追加購入、しかもベーム? ウィーンフィルとのLPセットがすでにあるのに…と自問自答しつつアマゾンでポチッた理由は…
十数年前にアダム・フィッシャー盤のハイドン交響曲全集を手に入れてから、古典派交響曲はハイドン一択で満足していたのだが、ふと気付けば「モーツァルトろくろく聴いてないじゃん」状態。適当なモーツァルトの交響曲全集に出会ったら手に入れようと考えていた。モーツァルトの交響曲ならモダン、ピリオド、選択肢はハイドンよりずっと豊富なわけだが、なぜか気になるオールドファッションなベーム&ベルリンフィル盤。いずれ手に入れるなら同盤をと思ってところに、このセットが登場した。ベートーヴェンとブラームスは同じ録音をLPセットで持っているし、シューベルトも5番、未完成、大きい方のハ長調はこのコンビのLPがある。しかしモーツァルトだけのセットより値段が安いという現実的な理由もあって、このセットを選んだ。モーツァルトは番号なしも含めて46曲が収録されている。特に前半の半分程はこれまでほとんど馴染んでいなかったが、これでようやく人並みに楽しめそうだ。まあ、ボチボチ聴いていきませう。
ベーム&ベルリンフィルのモーツァルト交響曲全曲も今どきYOUTUBEですべて聴ける。Vol.1
Vol.1 ⇒ https://youtu.be/ODspIgDjsTg
Vol.2 ⇒ https://youtu.be/5Q6MUgoyurI
Vol.3 ⇒ https://youtu.be/qXLZTFxIc9Q
Vol.4 ⇒ https://youtu.be/E2miLXwYMGA
Vol.5 ⇒ https://youtu.be/RYsN6C5fdks
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