群馬交響楽団のベートーヴェン
おらが国、上州・群馬。テレビのバラエティでは、北関東三県の底辺争いでやり玉にあげらてばかりだが、なんの!捨てたものではない。群馬が無くなったら大変だ。9割以上の生産量シェアを誇るこんにゃく芋。当県無ければ、すき焼き、おでん、田楽ともおさらばだ。世界に三ヶ所しかないハーゲンダッツアイスクリーム生産工場のうち日本唯一の工場は@群馬。当地純血種水平対向エンジンのスバルが無くなれば、走り屋も雪国四駆オーナーも呆然とするだろう。そうだ、福田(父)・中曽根・小渕・福田(子)と、この三十年で四人も総理大臣を輩出した当地は戦後総理大臣最多輩出県でもある。そして、そんなことより何より、当地には地方オーケストラの草分けにして70年の歴史を誇る群馬交響楽団(地元では群響:グンキョウと呼ぶ)がある。…というわけで、きょうは群馬交響楽団を聴こう。取り出したのはこの盤だ。


朝日新聞社が1995年に「戦後50年特別企画」として行った一連の事業の一つ。終戦の年に生まれ、その年に創立50周年を迎えた群馬交響楽団によるベートーヴェン交響曲の全曲演奏会が浜離宮朝日ホールと群馬県下の各ホールで行われ、そのときのライヴ録音として限定配布されたもの。一般店頭には並ばなかったが、ぼくは同団の演奏会場で販売しているときに手に入れた。指揮は1993年に同団音楽監督に就いた高関健。
当時、音楽監督就任から二年目だった高関健。彼の存在なくして、この盤は生まれなかったかもしれない。1993年に同団を率いるようになったその翌年1994年には「ウィーン芸術週間」と「プラハの春」という二つの大きな音楽祭への参加を成功させ、そしてその翌年にこのベートーヴェン交響曲全曲演奏を行った。それまで同氏のベートーヴェン研究の成果を盛り込んだこの連続演奏。まだベーレンライター版が出版される前の頃で、高関氏はその時点での最新のベートーヴェン研究を受け、アルミン・ラープ校訂版、ペーター・ギュルケ校訂版、ペーター・ハウシルス校訂版などを曲によって採用し、さらに緻密な検証を加えた上で演奏に臨んでいる。
演奏内容は半世紀前の同団の演奏を知っている者にとっては隔世の感ありの素晴らしい出来映えだ。弦楽群を8-8-6-5-4の中編成として管楽器とのバランスを整え、第1、第2ヴァイオリンの対向配置に加えてコントラバスを後方一列に並べた。楽譜の検証と実際の物理的楽器群の整理とによって、音が分離が目覚ましく、まさに見通しのいい演奏に仕上がっている。テンポを全体にやや速めに取り、中編成の小回りの良さが生きている。ピリオドアプローチも一部取り入れているのか、音の透明度が高く、フレーズが明快だ。 高関健氏はこの演奏から数年経ち、新ベーレンライター版の楽譜が出版されたのを受け、大阪センチュリー交響楽団とベートーヴェン交響曲全集を再録している。数年の時間差でこの群響盤では同版は採用されていないが、その直前の最近成果を伝える好演だ。
当然のようにYOUTUBEには音源はないので、手持ちの盤からアップしたみた。
第2番ニ長調第1楽章
第8番ヘ長調第1楽章
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