季節の変わり目だからか、不覚にも風邪をひいてしまった。熱でうなされる程ではないが、いつものパターンで喉と鼻をやられてた。温かいものを腹に収めて一服。先回の記事に続きでこんな盤を取り出した。

ジョン・コルトレーン(ts)とジョニー・ハートマン(vo)による1963年録音のバラード集。先回の<バラード>と対をなす名盤だ。この盤を聴くといつも思うのだが、こういうバリトンの、ソフトで深い声を持っていたら人生随分と変ったのではないかと。すぐにゲスな例えを出してナンだが、女性にとって男性の声質は重要なファクターであるらしい。イケメンあるいはナイスミドルであっても、話し始めた途端に上ずった声でペラペラやられると幻滅だそうだ。それはまあ、男の側から考えても理解できる。このハートマンのボーカルを聴くと、そういうことが理屈抜きに分かる。ハートマンの歌声はバリトンの音域にも関わらず、まるでバスのように聴こえるのは、ひとえにそのソフトで深みのある声質によるのだろう。男のぼくですら、うっとりするようなスウィートボイスだ。かつて日本にも低音の魅力で聴かせる歌手がいた。フランク永井、水原弘…。今どきの日本でこういう声でゆったりと歌を聴きたいと思ったら、どんな歌手を選んだらいいのだろうか。
ともかく、ゆったりと男性ボーカルを楽しみたければ、この盤をチョイスして間違いはないだろう。とかくビジュアルに惹かれて女性ボーカルをジャケ買いをしてしまいがちだが、ときには甘くもあり渋くもありの男性ボーカルもいいものだ。どの曲も静かで穏やかなバラードで、ハートマンがワンコーラス歌うとコルトレーンがアドリブをワンコーラス吹く、次のワンコーラスをハートマンが歌うと、そのあとにはマッコイ・ターナーのピアノが静かにソロを取る。そんな風にして珠玉のバラードプレイが6曲続く。
アラカンの下戸としては妄想するしかない話だが…
例えば、かねて憎からず思っていた女性と食事をし、気のきいたバーのカウンターに並んで座る。あまり語るでもなく濃い目のスコッチを何杯か飲み、そのあと自分の部屋に誘って飲みなおそうかと、そんなシチュエーションがあれば、迷うとなくこの盤をセットしたい。6曲のバラードが続く時間はちょうど30分。さてその30分間にくだんの相手をどう口説こうか…風邪っぴきの冴えない晩、渋茶をすすりつつ、そんな妄想と共に秋の夜は更けていくのでありました。
<My One and Only Love>
<They Say It's Wonderful>
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あらためて…平成三十年戌年霜月。好天続く。日中は程よい陽気ながら朝晩の気温は十度近くまで下がって肌寒い。一昨日は予定通り弦楽器フェアへ。ギター属コーナーは思いのほか盛況。出品楽器による弾き比べミニコンサート、居合わせた知人との楽器談義、いくつかの楽器の試奏など、秋の好日を楽しんできた。
さて週末休日も終わり、あすは仕事復帰という夜。先日の田邊工房行に同行してくれたギター仲間U氏が「与太さん、聴いてみてよ」と貸してくれたこの盤を取り出した。

ベルギーの名手ラファエラ・スミッツが8弦ギターを駆使して演奏したバッハ作品集。2009年録音。収録曲は以下の通り。すべてラファエラ・スミッツ自身の編曲による。BWV998はギター弾きにはお馴染み。BWV1004は昨今シャコンヌばかりでなく、ギターでも組曲全部が演奏されることが多い。BWV1013は全曲をギターで取り上げた演奏は珍しいかもしれない。
・リュートまたはチェンバロのためのプレリュード BWV998
(Prelude-Fugua-Allegro)
・無伴奏フルートのためのパルティータ BWV1013
(Allemande-Courante-Sarabande-Bouree Anglaise)
・無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 BWV1004
(Allemande-Courante-Sarabande-Gigue-Ciaconna)
これは素晴らしい演奏だ。通常の6弦ギターで演奏されるバッハとは世界を異にするといってよい。エドガー・メンヒの弟子にあたるコルヤ・パンヒューゼン2006年作の8弦ギターから繰り出される音は、深い低音の響きとその低音土台の上に載って広がる高音声部が見事に調和し、残響豊かな好録音とも相まって、これらの作品がギターオリジナルの作品かと思えるほど充実した響きを実現している。6弦ギターで弾くと低音部の処理と高音部のハイポジションでの扱いを同時に行うため、どうしても響きに余裕がなく、せせこましい演奏になりがちで、聴いている側としても、ゆったりとバッハの響きに浸るという感じにはなりにくい。しかしこの盤の演奏は音楽の進行に常に余裕があり、ラファエラ・スミッツの巧みなアーティキュレーションや適切に付加されたバス音とも相まって、まったく過不足ないバッハ演奏が繰り広げられる。
この盤からアップした。無伴奏フルートのためのパルティータ BWV1013全曲(Allemande-Courante-Sarabande-Bouree Anglaise)。
ライブでのラファエラ・スミッツ。19世紀タイプの8弦ギターによるシャコンヌ。
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先日の記事の続きで、導入から一年経ったアキュフェーズの近況。

システムを入れ替える前にもっとも悩んだのは、プリメインかセパレートかということだった。それまで使っていたラックマンのプリメインL-570に大きな不満はなかった。スピーカをアヴァロンにしてからトータルの音も満足できるものになったし、次のアンプもプリメインでと、当初は考えていた。順当にラックスマンの新しいプリメインに移行のつもりだったが、ここでつまづいた。最新型のL-590A2のSNが意外にも悪かった。いろいろ理由はあるのだろうが、特にフォノ系統については、80年代から90年代初頭までのレベルに比べ、昨今のプリメインアンプはフォノ段へのコスト配分は低く、往時のレベルと比べると見劣りするというのが大方の意見だった。それを実際に確認してしまったわけだ。ならば、低ノイズで知られているアキュフェーズならその心配はないだろうと思い、折よく新機種として出たアキュフェーズのプリメインE-650に照準を定めたのだが、いや待てよ、10代の頃からかれこれ40年以上に渡ってオーディオで音楽を聴く楽しみに寄り添ってきたことを考えると、一度くらいセパレートを使っても、分不相応とまでは言われないだろう、そう思うに至った。
アキュフェーズのセパレートと決めてからの機種選定は、ただただ予算との兼ね合い。当初はエントリークラスで十分かと思ったが、フォノモジュールが少々手薄とわかって、プリアンプは中堅クラスの新製品C-2850となった。パワーアンプはA級の選択肢でA-47で十分と考えていたが、その上のA-70のマッチョなガタイにやられてしまった(^^; 結果的に当初予算をだいぶオーバーして決着。あれこれ行きつ戻りつした入替えだったが、一年経った今も当時の選択で間違いなかったと満足している。
さて、そんなマイシステムによるアナログ盤実音確認のお遊び。安直なレコーダーによる録音(スマホよりマシだが)。バックには生活雑音有り。まあ、余興なのでお許しを(^^; きょうはベートーヴェンの三重協奏曲を貼っておく。オイストラフ・ロストロポーヴィッチ・リヒテルの三巨頭を帝王カラヤンが取りまとめた名盤。第3楽章のアラポラッカの中盤。
先回同様、45回転の確認もしておこう。 金妻から三十年…年取るはずだ。
高音よくのびるテノール・ガイ
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