G・グールド<The Little Bach Book>



冷え込む冬の晩。音盤棚を眺めていたら、久々にこの盤が目にとまった。


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11歳のグールド少年が写っている印象的なジャケットのアルバム<The Little Bach Book>。彼がゴールドベルク変奏曲でデヴューしてから25年がたった1980年に作られ、25周年記念アルバムとしてグールド自身が選曲にあたった。実際このアルバムには1955年盤ゴールドベルク変奏曲のアリアに始まり、彼のバッハの盤歴とたどるように曲が選ばれている。多分、曲順やA面B面の切り分けにも彼なりの意図があるものと思う。

こうして25年に渡るグールドのバッハ演奏のエッセンスを聴いてみると、音楽の本質的なところにほとんど変化を感じない。もちろん最初のゴールドベルクと再録された晩年のそれとはテンポといい、細部の曲の運びといい随分違う。しかし表面的なテンポや音色感の違いにもかかわらず、彼の音楽の核心はほとんど変わっていないように感じる。彼の演奏は多分最初から、少なくてもプロフェッショナルとして公衆の面前で演奏し出した頃から、すでにすべてが出来上がっていたのだろう。それはまた公衆の前から消え、一人スタジオでスタインウェイと対峙するようになっても変わることはなかったように思う。

彼の演奏はきわめてエキセントリックだとか革新的だとか様々に言われるが、まったく違う視点からみて感じるのは、その音楽に気品と素直さを感じる。このジャケット写真から受ける印象通り、恵まれていたであろう環境と育ちのよさを音楽にも感じる。粗野になったり、額に汗してガツガツしたり、そういうところが微塵もない。
バッハの鍵盤音楽のエッセンスともいっていい選曲のこの盤も、まったく押し付けがましさや騒々しさはなく、インヴェンションや平均律、組曲の一節がときに深く静かに、ときに快活に流れてくる。音のつぶ立ちは揃い、アーティキュレーションは自然かつ発見にあふれていて、こうして夜更けに絞り気味の音量で聴いていると、しみじみとバッハの素晴らしさに心打たれる。クラシックギター愛好家としてギターによるバッハは身近な存在だが、ギターによるバッハ演奏にしばしばみられる、ガツガツとして粗野で余裕のない、あるいは妙に粘着質で音楽が流れないバッハ演奏とはまったく次元が違うことにあらためて愕然とする。


小プレリュード ハ短調 BWV934


フゲッタ ハ短調BWV961


パルティータ第2番をさらうひとこま



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