昭和のギター曲集 -15-



月があらたまって最初の週末。小春日和の穏やかな日曜日。朝から野暮用外出で、夕方近くに帰宅した。一日出歩くと、わけもなく疲れるのはやはり加齢ゆえか。夜半前のひととき、書架の整理。きのうの記事の続きもあって、懐かしい楽譜を取り出した。


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60年代から70年代にクラシックギター愛好家にはよく知られた、好楽社から出版されていた楽譜ピース。高校1年の終わり頃からクラシックギターを弾き始め、あれこれ新しい曲に触れたい一心だった頃に手に入れたもの。記憶ではもっとたくさんあったような気がしていたが、手持ちのものを並べてみると、大した数ではなかった。もしかすると別の書架の片隅にまだ埋もれているかもしれない。

ぼくら世代のギター愛好家で、この<好楽社ギターピース>のお世話にならなかった人はいないだろう。それくらいポピュラーな存在だった。全国津々浦々の楽器店や書店の楽譜コーナーには必ずこのピースのためのコーナーが設けられていた。色違いの表紙で表される価格ランクも安いものは50円、100円といった具合で、田舎の高校生の小遣いでも気軽に買えるものだった。またそのレパートリーも19世紀古典ギター隆盛期のソル、ジュリアーニ、カルリ等の定番に始まり、アルベニス、グラナドスなどのギター編曲物の定番曲、更には日本の童謡、唱歌からフラメンコまで、ありとあらゆるジャンルがこれでもかという程リストされていた。手持のものの裏表紙をみると、その数は数百を超えている。

もちろん選曲、編曲、校訂など玉石混交で、版権のあやしいものも含まれている様子だった。編者に国藤和枝、中林淳真、玖島隆明ほかの名を連ねていたのも、版権のカモフラージュが目的だったと聞いたこともある。あるとき、当時の住所、神田三崎町1-8と書かれてた同社を訪れたところ、事務机が3つだけ並んでいたごく小さな事務所で、全国の愛好家に知れ渡った同社の名と、その事務所の規模の違いに唖然としたと聞いたことがある。

そんな好楽社のギターピースであったが、70年代半ばから新たなリリースもなくなり、いつしか流通からも消えていった。粗製乱造ともいえるそれまでのリリースと、一方で他社からより本格的なピースや曲集が出版されるようになったことも一因だったと思う。久々に眺めてみると印刷レイアウトなどは見やすく組まれていて、当時このピースで知った新しい曲のいくつかを懐かしく思い出す。


中には海外出版社から版権を得てリリースされたものもあった。この好楽社ピースで初めて触れたヴァイス(実はマヌエル・ポンセによる擬バロック風作品)の組曲イ短調は、好楽社がアブロニッツ編ベルベン社版の版権を得て1970年に出た(写真)。アルメニア出身のゴハー・ヴァルダニヤンというギタリストによる演奏。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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