三月半ばの週末。きのう土曜は野暮用外出。きょう日曜はのんびりした朝を迎えた。小春の穏やかな朝に相応しい音楽はと思い、こんな盤を取り出した。

デニス・ブレイン(英1921-1957)のホルン、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団によるモーツァルトのホルン協奏曲集。1953年録音。オリジナルはモノラル録音だが、手持ちの盤は電気的にステレオ化した、いわゆる擬似ステレオ盤。多くのファンにお馴染みのジャケット。ホルンが閃光を放つようなこのジャケットは一度見たら忘れないデザインだ。
デニス・ブレインはカーマニアのスピード狂で、同じく車好きのカラヤンとは仲がよかったと、ライナーノーツに記されている。しかし、皮肉にもそれが彼の命を奪ってしまった。それまでのホルンのイメージを一変させるテクニックと音楽性で嘱望される中、エジンバラ音楽祭の帰途、自動車事故で亡くなった。36歳の若さだった。
実に伸びやかで柔らかな音色のホルン。速いスタカートのパッセージも軽々と吹き抜け、フォルテシモでもソフトな音色は変わらず、楽しさを通り越して、典雅で高貴な印象を覚える。カラヤン指揮のフィルハーモニア管のバックも、カラヤン流のレガートなフレージングでブレインのホルンにはぴったりだ。録音当時、数年後にそんな不幸が起ころうとは誰も予想せず、若き天才ブレイン、カラヤン、オケ団員は、このあとも様々な録音を重ねようと胸躍らせていたに違いない。
この盤の音源で第3番
デニス・ブレインによるホルンについての解説とベートーヴェンのソナタ(確か唯一の管楽ソナタだったかな)。
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結局この冬は暖冬だったのかな…。寒の戻りもなく、このまま桜の便りが届きそうだ。
本日も程々に業務をこなし定時に退勤。週末金曜日につき夜更かしOK。アンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。

ブラームスのチェロソナタ集。ロストロポーヴィッチ(1927-2007)のチェロとルドルフ・ゼルキン(1903-1991)のピアノ。1982年録音。十年程前に廉価盤で出た際に買い求めた。
ロストロポーヴィッチはまぎれもなく20世紀最高のチェリストの一人だろう。手元にはカラヤンと組んだドヴォルザークのコンチェルトやリヒテルと組んだベートーヴェンのソナタなど、いくつかの盤があっていずれも素晴らしい。がしかし、ときとしてあまりに上手過ぎて、あるいはスケールが大き過ぎて、ということがある。バッハの無伴奏などは、言葉は適当でないだろうが、もう少しこじんまりと弾いてほしいと思ってしまうのだ。このブラームスも店で手に取って買い求めたときは、どちらかというとそんなネガティブな予想があって、あまり期待していなかった。ところが実際に聴いてみると、これがどうして中々素晴らしい。
ソナタ第1番の第1楽章はピアノの裏打ち音型にのってチェロの最も低い音域で開始するが、この出だしから実に渋く抑制が効いている。ワンフレーズ歌ったあと今度は高音域で対旋律を弾くのだが、ここがまたこれ以外はありえないと思わせる抑えと内に秘めた思いとがこもった歌いっぷりなのだ。この第1楽章の出だしだけで、もうこの演奏の良さは見通せてしまうほどだ。第2楽章も流れは変らずブラームスと聴いてイメージする音をことごとく提示してくれる。中間部の嬰へ短調の美しさも文句なし。ロストロポーヴィッチはやはり偉大なマエストロであることを再認識するアルバムだ。そしてこのアルバムジャケットの二人の笑顔、何とも素晴らしい。
この盤の音源。第1番・第1楽章。
「音楽と情熱」ベンジャミン・ザンダーによるこの曲のレッスン。
楽譜付き音源。演奏はデュプレとバレンボイム。
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三月もボチボチ半ば。年度末進行も目途がつき、むしろ四月からの新年度が気にかかる時期になった。あと二週間もすればあちこちで桜の便りか…そんなことを考えつつ、本日も業務に精励。さて夜更けの音盤タイム。これといった脈絡もなく、こんな盤を取り出した。

ウィーンのピアニストで教育者としても有名なハンス・カン( 1927-2005)の弾くブルクミュラー(1806-1874)の25の練習曲。1982年のデジタル録音。日本の東芝EMIのスタジオで録られている。
ブルクミュラーの25の練習曲といえば、今も昔もバイエルやツェルニー、ハノンと並んで日本のピアノ入門者が必ず弾く教材だろう。テクニカルなレベルを初級程度に抑えて無理がないように設定し、その上で様々な曲想や様式を習得するには格好の教材に違いない。それぞれに付された標題が曲のイメージを直接的に表し、それに応じた曲想と様式を与えている。アラベスク、牧歌、タランテラ、アヴェ・マリア、舟歌など、曲名であると同時にそれぞれの曲の様式的な約束事(リズムや音形のパターンなど)を学ぶことができる。もちろん、こうして鑑賞の対象として聴いても違和感はまったくない。
ハンス・カンは1950年代から日本に大学に招かれて教鞭を取り、その後も度々来日。60年代から80年代にかけて日本人にも馴染みの深いピアニストの一人だった。この盤は1982年のデジタル録音で音質がすこぶるいい。クリアで美しい音色が明瞭に聴こえ、細かなニュアンスも手に取るようだ。その結果、ブルクミュラーの音楽の意図がよく伝わってくる。25曲の中では最後の「貴婦人の乗馬」などが子供の発表会でもよく演奏されるが、第3番の牧歌もいいし、第14曲のスティリアンヌは中々可憐なワルツだ。
第14曲「スティリエンヌ」 可憐なワルツ。
全曲の楽譜付き音源。 この曲の楽譜は田舎の書店でも簡単に手に入る。ギター弾き諸氏もぜひ手に入れて、高音部だけでも一緒に弾いてみるとよい練習になる。
ブルクミュラーは二人兄弟。弟の方は交響曲やバレエ曲なども作り、当時は高い人気を誇ったらしいが今ではまったく知られていない。この25の練習曲を書いた弟のフリードリッヒ・ブルクミュラーはもっぱらピアノ作品を残したが、その作品の中にチェロとギターのための作品がある。ギター、チェロとも中級者以上ならさほど苦労せず楽しめる。以下はノクターン第1番。
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日曜の晩から降り出した雨は、本降りの春の雨に。乾燥しきっていた部屋の中も幾分落ち着いたかのように感じる。夜更けの音盤タイム。取り出したのはこの盤。

ユゲット・ドレフェス(1928-2016)の弾くバッハ:フランス組曲。1972年録音のアルヒーフ盤。これもたしか出張先の大阪梅田の中古レコード店で買い求めた。それにしてもアルヒーフ盤はいつ見ても格調高く、静かなたたずまいのジャケットが素晴らしい。かつては高価ゆえに中々手が出なかったアルヒーフ盤も今ならワンコインで手に入る。
日頃聴きなれたグールドやヘブラーなどのモダンピアノ版の比べ、遥かに繊細でインスピレーションに富み、静かに語りかけてくる。モダンピアノだと向こうからやってきて聴かされる感じになるが、チェンバロはまったく逆だ。こちらから耳を傾けたくなる。だからオーディオのボリュームも自然と絞り気味になる。実際チェンバロの生音はモダンピアノ比べたらずっと小さい。繊細と書くと何か消極的で雄弁さを持ち合わせないように聞こえるかもしれないが、そういうことではない。ドレフェスの演奏は時代性もあってか、音楽の骨格が太く、力強い楷書風の趣きともいえる。 この盤が録音された70年代初頭に比べれば、その後のピリオドスタイルの隆盛でチェンバロ演奏も大きく変化しているだろう。この盤の響きもそうした昨今のものと比べると、かなり重厚長大に聴こえるかもしれない。
豊かな歌に満ちた第2番、大きく充実した第6番、いずれの曲もそれぞれに味わい深い。そしてこのドレフェス盤にはBWV992「最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリチオ」が収められている。バッハ唯一の標題音楽とされ、また彼のもっとも初期の鍵盤曲だいう。別離の悲しみをこめた第1~3楽章、終楽章は明るい小フーガで締めくくられる佳曲だ。
ドレフェスの弾くフランス組曲第2番(アルマンド・クーラント・サラバンド・エア・メヌエット・ジーグ)
同 第4番(アルマンド・クーラント・サラバンド・ガヴォット・メヌエット・エア・ジーグ)
BWV992「最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリチオ」楽譜付き音源
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陽光ふりそそぐ週末土曜日。昼をはさんで野暮用外出。外に出ると風は存外に冷たく、まだ冬のなごりを感じさせる。夜更けには少し暖がほしくなり、ストーブを弱く点け、こんな盤を取り出した。

こんな夜、ひそやかに聴く音楽は何だろうかと考えるとき、思い浮かぶ曲のひとつがシューベル(1797-1828)の代表作<冬の旅>だ。声楽にはまったく不案内で手持ちの盤もごく僅かしかないが、そのごく僅かしかない盤のうち、お気に入りのひとつがハンス・ホッター(1909-2003)の歌うこの盤。1961年録音のDG盤。
ホッターはバスバリトンという位置付けのようだが、耳にはほとんどバスに近い印象がある。懐の深い落ち着いた響き、女性ならずともうっとりとする声だ。ピアノ伴奏はエリック・ウェルバが弾き、プロデューサーがオットー・ゲルデス、録音エンジニアがギュンター・ヘルマンスという、60年代独グラモフォン黄金期のコンビが受け持っている。知人のツテで、もう聴かないからという音楽ファンから譲ってもらった100枚ほどのレコードの中に入っていた。 <冬の旅>の一曲一曲についてまったく知識を持ち合わせないが、苦悩と絶望に打ちひしがれた若者が冬の荒涼とした野をさまよう様は、続けて聴いているとその悲しみが達観や平穏につながるイメージもあって、春の予感をも感じる。
第1曲「おやすみ」 自身がギターを愛好したシューベルの歌曲は、今日もギター伴奏で歌われることがしばしばある。ピアノ伴奏に比べ、相手がギターだと声量を張り上げず、自然に歌えると聞いたことがある。この音源のようにギターも2本使うと俄然音に余裕が生まれる。
やはりギター伴奏で「菩提樹」
1954年にジェラルド・ムーアと録音したEMI盤。
ギター版「郵便馬車」 シューベルトとほぼ同時代人でギター弾きにはお馴染みのヨハン(ヨーゼフ)・ガスパール・メルツ(1806-1856)によるアレンジ。名手マルチン・ディラによる演奏。
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最近買った楽譜の確認。今夜はこの曲を取り出した。


ジリ・ジルマル(1925-)が1989年に書いた<バーデン ジャズ組曲>。そのタイトルから分かる通り、バーデン・パウエル(1937-2000)へのオマージュとして作られた。曲は<シンプリシタス><子守歌><サンバ風ロンド>から成る。
ギターに関しては聴くのも弾くのも19世紀古典曲に限る…などと分別臭いことを言っているが、ギターで弾くポピュラーももちろん嫌いではない。この<バーデン ジャズ組曲>はきっちりとクラシカルに記譜されてはいるが、曲想はラテン調ポピュラーといってよく、まさにバーデン・パウエルの世界と重なる。特に第1曲<シンプリシタス>は中級レベルのギター弾きにも手に負える内容と、前半の耳に心地よいメロディー、後半のサンバ・ボサノバ調のリズミカルな曲調が人気だ。この手の曲をこれからレパートリーにしようなどとは思っていなかったが、世の人気曲もたまにはさらってみようかと、今回楽譜を手に入れた。
中上級者なら<シンプリシタス>の前半は初見で8割は通せるだろう。後半のリズミックな部分はこの手のリズムに慣れていない一般のクラシックギター弾きにはリズムの譜読みに少々時間がかかる。ぼくも後半は初見ではリズムに戸惑い立往生した。おそらく耳で聞いてさっと弾いてしまうポピュラー・ジャズ畑のギター弾きの方があっさりと弾けてしまうかもしれない(譜面通りの音価を正確に再現できるかどうかは別としても)。メトロノームを少しゆっくりめに鳴らして、譜面通りきっちり弾き、ただしそれだけではまったく曲にならないので、リズミックな曲想だがフレーズの取り方も重要だろう。ちょっと真剣にさらってみようかしらん(^^;
原善伸氏による第1曲<シンプリシタス> 後半のメリハリが効いたアーティキュレーションはさすがベテランだ。
同 第3曲<サンバ風ロンド> やたらと速く弾いて、何がなんだか分からない演奏もよくある。このくらいのテンポで音価を正確に再現した方がフレージングも明確になると思う。
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三月に入り、年度末業務も本格追い込み…と思いながら本日も程々に業務に精励。7時過ぎに帰宅した。さてさて、相変わらず落ち着いて音楽を聴く気分でもないのだが気を取り直し、久しぶりにこんな盤を取り出した。

ナクソスレーベルのイギリス弦楽作品集(English String Festival)。ナクソスが大いに話題になっていた十数年前に買い求めた。イギリス近現代作曲家の手になる弦楽合奏作品を中心に収められている。2000年前後のナクソスレーベルはユニークなコンセプトのアルバムを次々に出し、クラシック音楽界に大いに話題を振りまいた。それまで廉価盤レーベルというと、多くが大作曲家の名曲路線が中心だったが、ナクソスはあえてマイナーな作曲家、マイナーな作品、マイナーな演奏家を探し出してきた。このイギリス弦楽小品集もそんな盤の一つで、実際かなりのセールスをあげ、続編が多数リリースされた。きょう取り出した盤はシリーズ第2作だったと記憶している。録音は1989年。ナクソスとしては初期の録音に属する。エイドリアン・リーパー指揮カペラ・イストロポリターナという、この時期のナクソス専属のような団体による演奏。収録曲は以下の通り。
ジョン・ダウランド:5声のガイヤルダ
エドワルド・エルガー:弦楽のためのエレジー。序奏とアレグロ。弦楽セレナーデ。
フランク・ブリッジ:悲歌
ヒューバート・パリー:イギリス組曲。レイドノー嬢の組曲。
どんな楽器もそうだが、特に弦楽器は合奏と縁が切れない。幼児のキラキラ星でさえ合奏で練習する。その響きの素晴らしさと音楽的感興は、無伴奏やピアノ伴奏のソロとはまた違った楽しみと味わいがある。基本が独奏主体のギター弾きからみても、まことにうらやましい。バロックから古典、ロマン派以降まで多くの弦楽合奏作品がある中、この盤にはイギリスという国の性格を反映するかのように、穏やかなロマンティシズムと中庸をいく表現と品格に満ちた佳曲が収められている。ダウランドを除くと他は近現代の作品。じっくり聴くもよし、所在なく時間を過ごすときのBGMとしてもよしという趣きだ。 さすがにエルガーの二つの作品は、イマジネーションの豊かさと和声のオリジナリティにおいて一頭抜きん出ている。パリー(1848-1918)のイギリス組曲は、このアルバムのコンセプトをもっともよく反映しているかもしれない。20世紀初頭の曲ながらプレリュード・メヌエット風に・サラバンド・カプリス・パストラール・エア・フロリックというバロック舞曲形式を模して書かれている。擬バロック様式の素朴な美しさに満ちていて、穏やかなイギリスや中欧の田園風景を思わせる。
この盤の音源でヒューバート・パリー:イギリス組曲。
エルガー:弦楽セレナーデ作品20。
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