ヘブラーのバッハ:フランス組曲
先日聴いたヘブラーのモーツァルト。その奇をてらわない穏やかな音楽に触れ、そういえばと思い出し、こんな盤を取り出した。

イングリッド・ヘブラー(1926-)の弾くバッハのフランス組曲。1979年ヘブラー53歳のときの録音。手持ちの盤は十数年前にタワーレコードのヴィンテージ・コレクションという企画物として廉価で発売されたときのもの。CD2枚に全6曲が収められている。
モーツァルトやシューベルトなどで高い評価を受け、多くの録音に残しているヘブラーだが、その他のバロック期からウィーン古典派に至る作品も得意とし、C.P.Eバッハ、ハイドン、ベートーヴェンなどにも優れた録音を残した。バッハのフランス組曲を取り上げたこの盤も、世のバッハ弾きと称されるピアニストの録音に伍して、素晴らしい演奏を聴かせてくれる。
モーツァルトやシューベルトでみせる穏やかで中庸な表現をこのバッハでも聴くことができる。バッハというと対位法を駆使したフーガに代表される厳格なイメージが強いが、フランス組曲はバッハの他の舞曲系組曲(パルティータ、イギリス組曲)に比しても、より旋律的で全編美しいメロディーに溢れている。その旋律を歌わせようとすると、ときとして過剰な抑揚が付き、ロマンティックに寄り過ぎる演奏になりがちだが、ヘブラーはその辺りの塩梅が絶妙だ。
テンポ、アーティキュレーション、ディナーミクといった音楽表現の要素のいずれも、何かが突出するところがない。どこまでも安心して音楽に身を任せ、穏やかで暖かな雰囲気に包まれて音楽に浸ることができる。インパクト、驚き、新境地…そういった言葉とは無縁の演奏だが、今となっては貴重なアプローチだ。
手持ちの音盤からアップしてみた。フランス組曲第2番からアルマンド。
同フランス組曲第4番からアルマンド。
より「歌うバッハ」を追求したアンドラーフ・シフによる第2番全曲
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