ポンセ 前奏曲ホ長調
連休後半。ぐずついた連休前半から一転、好天が続いている。身辺諸事情あってステイホーム。きょうは久しぶりに楽器を取り出し、こんな曲をさらった。

マヌエル・ポンセ( 1882-1948)作曲の前奏曲ホ長調。ポンセはギター弾きにはお馴染みの作曲だが、一般の音楽愛好家に知られている曲は「エストレリータ」くらいだろうか。ギター音楽の世界にあっては、近現代を代表する作曲家の一人として外せない存在だ。 この前奏曲の原曲は「ギターとハープシコードのための前奏曲」。セゴビアと出会ったことでギター曲の作曲に尽力したポンセだが、いくつかの曲であえて擬バロック風の作風を採用。さらに自分の名を伏し、バッハと同時代のドイツのリュート奏者ヴァイスの曲として発表した。この前奏曲ホ長調もその路線に沿って書かれたものだが、手稿譜は紛失。後年1936年にハープシコードとギターのデュオ曲としてアレンジされ、セゴビアの結婚祝いとして贈られて出版もされた。ギター独奏曲としてはその後も正式な出版譜がないまま、セゴビアの録音からの採譜やハープシコードとのデュオ譜からの引用で、いくつかの版が出回ることになった。手元にも複数の楽譜があるが、写真のものは70年代に出回っていた好楽社のもので、作曲者ヴァイス・玖島隆明編と記されている。
この曲は規模としては小品ながらギターの特性にあった佳曲で、昔から中級者以上のギター愛好家に人気が高い。しかし、実際にこの曲を楽譜だけを頼りに再現しようとすると、意外に手強いのではないだろうか。まず拍子が8分の6なのか4分の3なのかに始まり(元曲ともいうべきハープシコードとのデュオ版は4分の3で記譜されているとのこと)、フレージングの区切りが小節をまたぐようなギミックもある。左手の押弦も特に後半になるとハイポジションや指の拡張が要求される部分があって手こずる。スラーが入る箇所も楽譜によりまちまちだ。そんな事情もあって、多くのギター弾きは(プロもアマも)、この曲の創始者ともいうべきセゴビアの録音あたりを参照に曲を組み立てることが多いようだ。
ぼくもこの曲には、ギターを手にしてまもない高校時代に出会い、すぐに惚れ込んだものだ。ホ長調という調性はギターでもっともよく響く調性の一つで、冒頭から気分よく弾き出すのだが、じわじわと弾きにくい箇所が出てきて、気付けばまともに弾けずじまいという状況は今も変わらない。おそらくハープシコードとのデュオ版の方がギターは弾きやすいだろうと見込んで、近々楽譜を取り寄せようと思っている。
この曲のオリジナルともいうべき「ギターとハープシコードのための前奏曲」。手持ちのナクソス盤からアップ。アダム・ホルツマンのギター、ステファニー・マーチンのハープシコード。
同じくハープシコードとのデュオ版。これくらいのテンポで弾くとハープシコードが何を弾いているかよく分かる。
同曲のギター独奏版。名器トーレスを弾く松田晃演(1933-)。少々オールドファッションだが、説得力のある演奏だ。
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