土曜日の雨が上がり、きょうは気温上昇の日曜となった。終日野暮用外出。夕方五時過ぎに帰宅した。夜になって、部屋の片付けのBGMにと、こんな盤を取り出した。


ジュディ・オングが昭和歌謡をカヴァーしたアルバム<Last Love Songs>。2012年録音。収録曲は以下の通り。お馴染み昭和の定番ソングが並ぶ。
1. どうぞこのまま
2. 異邦人
3. つぐない
4. シルエット・ロマンス
5. 終着駅
6. あなたならどうする
7. 別離 わかれ
8. 手紙
9. グッド・バイ・マイ・ラブ
10. ラヴ・イズ・オーヴァー
11. 魅せられて ~ 2012 Version (ボーナストラック)
アルバムのサブタイトルが~人には言えない恋がある~。ジャケットの帯びには「エイジフリー・ミュージックを歌う熟恋歌の女王」とある。ブックレットには美熟女ジュディのポートレートがてんこ盛り。どこから見ても前期高齢者オジサンひっかけの企画物だ。本当は彼女が歌うジャズアルバムが欲しかったのがどうやら現在廃盤。仕方なく、とはちょっと照れ隠しの言い訳で、その実はひっかけ企画に素直にのって数年前に調達したもの。ワーナーミュージック社マーケティングの勝利!
ジュディ・オングはぼくらが物心ついた頃からテレビに出ていたから、ずっと年上かと思っていたのだが、1950年生まれというから、案外近い年代だ。かつてはポニーテイルのボーイッシュなイメージがあったが、例の<魅せられて>以来、すっかり路線変更。男性ばかりか、美を追求する中年女性にとってもカリスマ的支持があるらしい。
聴いてすぐに彼女と分かるジュディ節だが、どの曲もそつなく素直に歌っていて好感がもてる。芸歴、歌手歴共に半世紀を越えるのも伊達ではないと実感。またカヴァーアルバムでは、伴奏アレンジを懲りすぎてコテコテの失敗作になることもあるが、このアルバムのバックオケは原曲のイメージをほぼ残していて、これも素直で二重丸だ。う~ん、ジュディ・オング…イイんじゃな~い!
手持ちの盤からアップしてみた。テレサテンの「つぐない」
このアルバムのPV
「どうぞこのまま」を歌うジュディ@2016
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最近はもうほとんどテレビは観ない。ゴールデンタイムにチャンネルを回しても(あっ、押してもか…)、どこもかしこも井戸端会議のバラエティ。民放とNHKも区別がつかなくなった。最初に無くなってもいい家電の筆頭はテレビかもしれない。一方深夜放送・エアチェック世代のせいかラジオへの思い入れは強く、無くなっては困る家電の筆頭はラジオということになる。しかし、そんな分別臭いことをいうぼくも、かつてはそれなりにテレビを見ていた。特に社会人になってから何年かはテレビドラマの恋愛ゲームを観ては、そんなものには無縁な自分と照らし合わせて悶々としていたのだろう。遥か記憶の彼方だけれど。


1979年。TBS系列で「オレンジ色の愛たち」というドラマがあった。宇津井健、秋吉久美子らが出ていた都会派のドラマで、その後出てくるトレンディードラマの走りだったかもしれない。ドラマの中身はまったく記憶にないのだが、豊島たづみが歌うテーマ音楽「行き暮れて」と、オープニングに写る丸ノ内線が神田川の上を渡る御茶ノ水聖橋の光景だけはよく覚えている(写真下:この構図は本当に美しい)。テーマ曲の「行き暮れては」はその後ずっと気になっていて、十数年前にリサイクルショップのジャンクレコード箱からこの曲が入ったアルバムを見つけ、30年ぶりの再会を果たした。久々に針を落としてみたが、今聴いても新鮮だ。スローテンポの16ビートとボサノバを織り交ぜた曲調、時折りセンスのいいテンションコードも入った都会的なアレンジにのって、豊島たづみが肩の力を抜いて少し気だるく歌っている。アレンジのセンスがいいのでクレジットを見ると大村雅朗と記されていた。八神純子の「みずいろの恋」や松田聖子の「Sweet Memories」、渡辺美里「My Revolution」など数々のヒット曲の作編曲を手がけたが、1997年に46歳の若さで逝去したとWikipediaにあった。
その少し前になるが、同じテイストの都会的なボサノバ調の曲、丸山圭子の「どうぞこのまま」がヒットした。学生時代の終わり頃よく聴いたこを思い出す。この頃はまだ都会と田舎の差は大きく、当時地方都市で学生生活を送っていたぼくは、イメージとしての都会やそこでの恋愛を想像しながら、こんな曲を聴いていたのかもしれない。結局都会での生活も恋愛も経験することなく月日が過ぎた。豊島たづみも丸山圭子もぼくと同い年。二人は今もそれぞれのペースで活躍しているようだ。あれから30年余。遥かに来てしまったなあ…
豊島たづみ「行き暮れて」
丸山圭子「どうぞこのまま」
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アマゾン経由で注文した楽譜が届いた。


ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)のソナタ集。永島志基氏によるギター用編曲版としてこの4月に出版されたもの。永島志基氏は、演奏・編曲・指導で幅広く活躍する一人者。特にアンサンブル・合奏分野での経験が豊富と聞く。このスカルラッティのソナタ集は、500曲を超えるスカルラッティのチェンバロ作品から12曲が選ばれ、ギター独奏用に編曲されている。序文によると氏は、以前から親しんでいたスカルラッティ作品に格別の興味をもち、90年代に全7巻からなる原曲のソナタ作品集の楽譜を手に入れ、ギターへの編曲可能性を探ってきたそうだ。その後クラシックギター専門誌:月刊「現代ギター」への連載を経て、かれこれ四半世紀を経たのち今回の曲集出版となった由。
スカルラッティの作品は古くからその一部がセゴビアの演奏で知られ、その後80年代初頭には国内でもレオ・ブローウェル版が出版された。ぼくも昭和時代に手に入れた雑多なギター曲集に断片的に収録されていたスカルラッティ作品に親しんではいたが、ブローウェル編の楽譜などは中々難易度も高く、効果的に楽しめる段階には程遠いところで止まっていた。今回の永島氏によるアレンジは、技術レベルを控えめに設定した曲も意図的に配したようで、見た目の音符の様子では手強さは程々に見える。さらに、気の合った仲間と二重奏、三重奏として、そのまま声部をパート譜として分けて演奏しても効果が上がり、楽しめるような配慮がされているそうだ。
スカルラッティの作品は、大胆な転調やリズムによるオリジナリティあふれる曲想がギターの特性によく合う。多くのギター弾きはバロックというとバッハ志向が強いが、趣きの異なるスカルラッティも、もっと弾かれてよいように感じる。
パク・キュヒによるK.178
マルコス・ディアスというギタリストが弾くK.27
METのコレクションによる演奏。抒情的なK.87(写真下)
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先日聴いたクリュイタンス&BPOによる田園交響曲。初夏のこの時期に相応しいなあと改めて感じ、ならば「あちらの田園」も聴こうかと、こんな盤を取り出した。

ブラームスの交響曲第2番ニ長調。1877年夏、オーストリアの保養地ペルチャッハに滞在して作られ、全編を通して流れる明るく穏やかな曲想からブラームスの田園交響曲とも称される。取り出したのはレナード・バーンスタインとウィーンフィルによる80年代初頭の録音。ウィーンフィルの本拠地ムジークフェラインでのライヴ録音ということになっているが、演奏会実録に加えて、同ホールでのリハーサルや一部セッションなどをベースに編集されているようだ。
ぼくがクラシックを意識して聴き始めた70年代初頭、バーンスタインといえばアメリカの指揮者でありアメリカの象徴のような存在でもあった。そのバーンスタインが70年代の終わりからヨーロッパの伝統を背負って立つウィーンフィルと集中的に録音を始めた。ベートーヴェン、ブラームス、シューマン…。両者の相性がこれほど良いとは、一連の録音を聴くまで予想しなかった。ウィーンフィルの艶やかな音色と豊かなカンタービレがバーンスタインのやや粘着質の歌い口によっていっそう際立った。このブラームスのLP盤全集は発売早々に4枚組9千円で購入。学生時代からもっぱら廉価盤ばかりで、社会人になってもその貧乏気質が抜けなかった当時のぼくには珍しいことだった。
久々にターンテーブルにのせてオルトフォンで聴くアナログ盤最終期の音は格別だ。DENONのDL103と比べ、一聴して高音域の繊細さと音の奥行きの素晴らしさに耳がいく。低音もたっぷりと響き、申し分ないピラミッドバランスの音が広がる。とりわけブラームスの交響曲などこれ以上にないくらいマッチする。
バーンスタインのやや粘着質のフレージング、艶やかなウィーンフィルのヴァイオリン群、ぎりぎりのタイミングまで待って合わせる金管群やティンパニーのアインザッツ。どれもがやや古いスタイルの特性といえるだろうが、ロマン派後期でありながら古典的スタイルを指向したブラームスの一つの理想的な表現だ。どの楽章もやや遅めのテンポと濃厚な歌い口で、むせ返るようなロマンティシズムに満ちている。70年代後半以降、バーンスタインがウィーンフィルと組んだ一連の録音は、完全にヨーロッパの伝統的な様式感を手中にした感があり、いずれも素晴しい。
バーンスタイン&ウィーンフィルによるこの曲の演奏。取り上げた盤の録音と同時期の映像作品。冒頭、例によってこの曲のついての短いレクチャーがある。
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関東地方は昨日梅雨入り。週末土曜日。野暮用いくつかこなして日が暮れる。平成31年と書かれたカレンダーを眺めながら、ふと思い出し、こんな盤を取り出した。
美空ひばり@17歳?

今月24日に没後30年となる美空ひばり(1937-1989)のアルバム。2006年にリリースされた一連の重量級レコード復刻シリーズの中の一枚で、<ひばりジャズを歌う>とタイトルがついたもの。ナット・キング・コールをしのんでと帯にある通り、オリジナルのリリースは1965年。ブルーコメッツをバックに、真っ赤に燃えた~♪と赤いミニスカートで歌う2年程前のことだ。原信夫とシャープス・アンド・フラッツの伴奏にのせてお馴染みのスタンダードを軽快に歌う。収録曲は以下の通り。
スターダスト/ラヴ/魅惑のワルツ
歩いて帰ろう/トゥ・ヤング/ペイパー・ムーン
恋人よ我に帰れ/プリテンド/月光価千金
慕情/ロンリー・ワン/夕日に赤い帆
録音当時30歳前後だと思うが、ともかく声がクリアで音程は正確。当時の三人娘、美空ひばり、江利チエミ、雪村いずみの中では「美空ひばりの英語が断然うまかった。耳が違うのよ」と雪村いずみが語っていたそうだ。バックバンドのピッチの違いをすぐに指摘したとも言われる。音楽家にとって耳の良さは決定的要素だ。そんな美空ひばりがナット・キング・コールのナンバーを歌ったこの盤は、コアなジャズファンならずとも、よく聴けばもちろん「ひばり節」全開ではあるが、半世紀前の昭和歌謡全盛期トップスターの記録として貴重な録音だ。
この盤の音源で「スターダスト」
有名な録音「上海」…録音当時16歳ということがにわかには信じがたい。
ひばり節プッチーニ。亡くなる3年前の1986年。すでに体調不良に見舞われていた時期だ。
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先日聴いたブルックナー第7交響曲で久々にマイ・ブルックナー・ハートに火がついて、今夜はこんな盤を取り出した。

ブルックナーの交響曲第5番変ロ長調。ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ(ロイヤル・コンセルトヘボウ)管による演奏。1964年、南ドイツ・バイエルン州オットーボイレンの修道院で行われた演奏会ライヴ。ヨッフムファンあるいはブルックナーファンの間では<オットーボイレン・ライヴ>としてつとに知られた名盤だ。手持ちの盤は2003年に今は無きフィリップスレーベルの廉価盤で出たときに手に入れたもの。全曲75分がCD1枚に収録されている。
オイゲン・ヨッフム(1902-1987)は70年代半ば世にブルックナーブームなるものが訪れるずっと前からブルックナーのオーソリティーだった。国際ブルックナー協会の会長もつとめ、ブルックナー交響曲全集をステレオ時代に2度完成させている。晩年の1982年と1986年の来日でもブルックナーの名演を聴かせてくれた。中でもこの5番は得意にしていたようで、確かSP時代から数種類の録音が残っていたはずだ。
取るに足らない我が音楽道楽人生ではあるが、二十歳前後の若い時期にブルックナーの交響曲に出会い、心酔したことは、今思い起こしても幸いだったと思うことの一つだ。出会わなかった人を不幸とは言わないが、音楽の楽しみのうち、確実に何パーセントかは享受せずに終わってしまうのではないかと、他人事ながら思うほどだ。中でも第5番は9曲プラスαあるブルックナーの交響曲のうち、もっとも感動的な作品の一つだ。豊かな旋律による歌謡性に富む第4番、第7番に対し、第5番はまさにゴシック建築を思わせる構造的な大きさに圧倒される。
第5番の第1楽章は、聴こえるか聴こえないかの低弦群のピチカートで始まる。LP時代にこのピチカートを、十分なSN比を確保しながらしっかり聴き取れる録音は稀だった。それに続いて響き渡る全奏のコラール。初めて聴いたときは、それこそ腰が抜ける程に感動したものだ。深い叙情と悲痛な歌に満ちた第2楽章。そして何と言っても圧巻は終楽章だ。第1楽章と第2楽章の主題回顧に始まり、やがてそれが巨大な二重フーガに発展していく。コーダではコラール主題が圧倒的なスケールで鳴り響いて曲を閉じる。 ぼくにとってのこの曲のベストはケンペ&ミュンヘンフィル盤だが、このヨッフムのライヴももちろん素晴らしい。壮年期のヨッフムらしく、全編覇気に満ち、ときに大胆にテンポやディナーミクを揺らす。演奏は第2楽章の途中あたりから熱を帯び始め、ライヴの感興もあって終楽章は感動的な大団円を迎える。
この盤の音源。全4楽章。
第4楽章の終盤。ブロムシュテット&ライプツィッヒゲヴァントハウス管@2002年東京。
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初夏and/orまもなく梅雨…といった感じのきょうこの頃。爽やかな緑、風そよぐ高原、木蔭の逍遥…そんな風景を思い浮かべながら、こんな盤を取り出した。

ベートーヴェン交響曲第6番ヘ長調「田園」。アンドレ・クリュイタンス指揮ベルリンフィルハーモニーよる全集中の一枚。手持ちのセットは十数年間に激安ボックスセットで出たときのもの。その後もパッケージを替えて幾度となくリリースされている。もっともぼくら世代の愛好家には70年代廉価盤セラフィムシリーズのLP盤でお馴染みだ。 録音は1957~1960年。すでにベルリンフィルのシェフはカラヤンの時代になっていたが、そのボスを差し置いて、ベルリンフィルにとっては初めてのステレオ録音でのベートーヴェン全集となった。
クリュイタンス( 1905-1967)と聞くとベルギー/フランス系指揮者というプロフィルからして、ベートーヴェンは?と思う向きもいるだろうが、実はワグナーとはじめドイツ音楽にも精通し、当時彼の指揮するベートーヴェン・チクルスのチケットはすぐに売り切れたそうだ。実際このベルリンフィルとのベートーヴェンも素晴らしい出来栄えだ。
先ほどからヘッドフォンから流れる「田園」を聴いている。実はベートーヴェンの交響曲の中でぼく自身もっとも聴く機会が少ない曲なのだが、こうして聴き出すと、やはりのその素晴らしさに惹かれて聴き入ってしまう。そして同時に、この盤のベルリンフィルの音にいつもながらほれぼれとする。重厚かつしなやかな音色で、その後のカラヤン時代やその前にフルトヴェングラー時代いずれとも違う音色感だ。弦の響きはしっかりした低弦群に支えられたピラミッド型のエネルギーバランスだが、けっして重くはなく、ヴァイオリン系はピッチがよく合い整っていて、絹糸をつむぐようにしなやかに響く。木管や金管はやや渋めの音色で弦とよく調和して申し分のないバランスだ。それらととらえた録音も、カラヤン盤で聴かれる独グラモフォンのそれとは違い、ステレオ感を左右いっぱいに広げ、中低音が重くなり過ぎることもなく、中高音に少しだけピークを持たせている。そのあたりがヴァイオリン系のシルキーでしやなかな音色につながっているのだろう。
同じベートーヴェンの第9などでは、かなりロマンティックに寄った演奏を聴かせるこのコンビだが、この第6番では重厚長大路線を基本としながらも古典的様相を崩さない。テンポにほとんど変化をつけず淡々を進む。変化の少なさが、聴くほどにじわじわとスケール感の大きさに変化していくあたりが絶妙。 ベートーヴェンの交響曲全集はあまたあるが、往時のベルリンフィルの素晴らしい音色と、クリュイタンスの重厚かつしなやかな歌いっぷりを楽しめるこの盤は、録音から半世紀以上経った今でもバリバリの現役イチオシだ。
この盤の音源で全楽章。
中編成の洗足学園・学生オケによる演奏。
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