ブレンデルの<テレーゼ>
週半ばの水曜日。仕事を終えてから、ふとしたことで再会した高校時代の知人ら三人と一献。下戸のぼくはオチャケでほろ酔い。互いに歳月の積み重ねもを感じながらも青春回顧。同世代の気安さもあり、楽しく過ごして帰宅した。ボチボチ休む時刻だが、きのうの記事に貼った彼女のテーマ曲を思い出し、こんな盤を取り出した。

ブレンデルのベートーヴェン。十年近く前に手に入れたソナタと協奏曲の全曲ボックスセット。この盤については過去に何度か取り上げた。ブレンデルはベートーヴェンのソナタを3回録音しているが、このボックスセットには70年代に蘭フィリップスに入れた2回目の録音が収められている。その中から第23~27番までが入っているVol.10を取り出した。
お目当ては第24番<テレーゼ>。ベートーヴェンのソナタというとまずは三大ソナタ<悲愴><月光><熱情>、それに続いて<ワルトシュタイン>だろうか。しかし、ぼくの好みは断然<告別><テレーゼ>そして第25番もいい。つまりこのVOL.10はマイ・フェイバリットがうまく収録されている。
<テレーゼ>は2楽章構成の比較的小さな曲。ひとつ前の<熱情>の熱を癒すかのような対照的な作風だ。嬰ヘ長調というキーも意味ありげな調性。僅か4小節ながらこの上なく美しい序奏。続いてアレグロ・マ・ノン・トロッポの主部に入るが、熱情も激情もなく内省的なフレーズが続く。途中マイナーキーに転じる展開部では、完全にロマン派作家としてのベートーヴェンを感じる。ブレンデルの演奏はモダンピアノによるベートーヴェン演奏にありがちな力強さと輝かしさと前面に出した演奏の対極といってよい。フレーズの一つ一つを噛みしめるように弾き進めるところは、この曲に似つかわしい。
1990年代。ブレンデル三度目の録音。70年代の演奏に比べ大きな違いはないが、より彫りの深い表現になっている。しかしそれも過度にならず自然体で好ましい。
楽譜付き音源。
<テレーゼ>第1楽章の序奏聴き比べ。
[01] Artur Schnabel
[02] Wilhelm Backhaus 0:22
[03] Rudolf Serkin 0:39
[04] Friedrich Gulda 1:00
[05] Wilhelm Kempff 1:18
[06] Yves Nat 1:36
[07] Glenn Gould 1:54
[08] Vladimir Ashkenazy 2:14
[09] Claudio Arrau 2:37
[10] Charles Rosen 2:59
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