ホセ・ルイス・ゴンザレスのスペイン物



久しぶりに濃い口のギターを聴きたくなって、こんな盤を取り出した。


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ホセ・ルイス・ゴンザレス(1932-1998)のギター。1980年、13年ぶりに来日した際、東京・東久留米「聖グレゴリオの家」で収録されたLP盤。当時50歳を前にした、まさに西国の伊達男といった風情の油の乗り切った彼の美音が楽しめる。グラナドスのスペイン舞曲第5番、第10番、ゴヤの美女、そしてリョベート編のカタロニア民謡など、お馴染みのスペイン物・ラテン物が収録されている。いずれも意外にも速めのテンポですっきりとした印象で弾き進めるのだが、決めのフレーズで出す一音一音にグッと情感がこもる。

ギター(ここでは電気仕掛けのないアコースティックギター、中でもいわゆるクラシックギターを前提にしよう)の魅力は何ですかと問われ、ギターを弾く人、聴く人、様々な答えがあるだろうが、回答の筆頭は『ギターの音色』ではないだろうか。もちろん楽器と呼ばれるものすべてに共通する答えだが、とりわけギターはその要素が強い。発音体である弦に直接触れて弦を弾いて音を出すメカニズムは、声の発生の次に『直接的』と言えるだろう。楽器のメカニズムよりは、右手の爪の形やタッチの具合、左手押弦の力の入れ具合といった弾き手のフィジカルな特性がそのまま音の性格を決める。以前も書いた通り、名人ギターリストは、それぞれの独自で魅力ある音色を持っている。ホセ・ルイス・ゴンザレスもその中の一人だ。

クラシックギターの今日を築いた巨匠の一人であるセゴビアがある人に問われ「美しい音の出し方だったら、ホセ・ルイス・ゴンザレスに聞け」と答えたという逸話が残っている。今日的な観点で言えば、もっと整った雑味の少ない音を出すギタリストはたくさんいるだろうが、このホセのように、いかにもギター、間違いなくギター、どこから聴いてもギター、というような強いアイデンティティを感じさせる音は少ない。この録音に聴くホセは、スペインの名器ホセ・ラミレス作のギターから艶やかで薫り立つような音を引き出している。ときに楽器の限界を超えるような強烈なタッチもあるし、一方で慈しむようなピアニシモもある。ダイナミクスの幅が大きく、音色のバリエーションも多彩だ。
セゴビアもそうだが、一昔前のスペイン人ギタリストの共通した特徴として、テンポが揺れたり、拍節感がずれたり、過度なビブラートもしばしば。昔は「なぜ拍子通りに弾けないのか、弾かないのか。なぜそんなに過剰な抑揚をつけるのか…」とまったく不思議だった。しかし、それこそがラテンの血が流れるスパニッシュギターの系譜なのだと今更ながら合点している。彼らにとっての「歌」は、1・2・3.4と拍子を刻んでメロディーをのせることではないのだ。

残念ながらホセは1998年66歳で亡くなった。もう彼のようなギターの真髄である独自で美しい音色を聴かせるギタリストは見当たらない。端正な古典も、厳格なバロックも弾かなくていいから、濃厚で艶っぽいスペイン物を聴かせるくれるギタリストは登場しないものだろうか。


グラナドス「ゴヤの美女」 おそらく80年来日時の映像かと。音質に難有りだが、演奏スタイルとその音色の一旦は分かる。


同 アルベニス「タンゴ」



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