ロベルト・シュトルツのウィンナワルツ
関東地方は相変わらずの梅雨空続く。
音楽の季節感は様々あるだろうが、中には実際の音楽の印象よりは、後年作られたイメージによることも多い。例えばウィンナワルツは、ウィーンのニューイヤーコンサートですり込まれたこともあって、すっかり新年をイメージするようになった。 しかし、モノクロームな梅雨空のもと、ちょっと場違いなウィンナワルツを聴くのも悪くない…と、そんなことを考えつつ、今夜はこんな盤を取り出した。

ロベルト・シュトルツ(1880-1975)指揮によるウィンナワルツ集。オケはベルリン交響楽団とウィーン交響楽団が使われている。数年間前に手に入れた日本コロンビア:クレストシリーズの2枚組廉価盤。1880年生まれのシュトルツはウィーンで学びオペレッタの作曲家としてキャリアを積んだ。作品はオペレッタのほか映画音楽やダンス音楽にも及ぶ。後年指揮棒を取ってベルリン交響楽団と多くのウィンナワルツを録音し、幸いにも1975年94歳まで存命したため、60年代を中心に膨大な録音が良好なステレオ録音で残された。この2枚組には、それらの録音の中からウィンナワルツの定番曲を中心に24曲が収められている。60年代後半から70年代初頭にかけての録音。

ウィンナワルツというと、昨今は年頭の豪華なニューイヤーコンサートのイメージが強く、洗練された貴族的な雰囲気を感じさせるのだが、一方でウィーンは地政学的にも歴史的にも東欧とのつながりが強く、また古くから交通の要所でもあったころから、多くのウィンナワルツは洗練された曲想に中にもどこか土の匂いが残る。ドヴォルザークのスラブ舞曲やブラームスのハンガリー舞曲がボヘミアやハンガリーの土の匂いをより直接的に感じさせる音楽としたら、一連のウィンナワルツは洗練されてはいるだろうが、根っこはそう遠くない。
ロベルト・シュトルツはもっぱらウィンナワルツの指揮者として有名だが、先に記した通り元々はオペレッタやポピュラーな歌曲の作り手だった。そういう意味では、貴族的で洗練された音楽というより、より身近な市井の感覚に寄った人だった。彼が振るウィンナワルツにはそれがよく現われていて、いずれの曲も19世紀的といってもいいほど、大編成のオケで臆することなく情緒たっぷりに歌い上げる。今どきのニューイヤーコンサートでは聴けない味わいだ。
シュトラウス2世<南国のバラ>
レハール<金と銀>
チャーミングな序奏のあと1分25秒からたっぷりとした弦のユニゾンで主題が奏される。1分50秒過ぎから一旦ディミヌエンドして2分過ぎから主題を繰り返す。繰り返しでは弦パートが弱音で奏され、ハープのオブリガードが浮き出てくる。3分7秒からトリオ風に転調。ヴァイオリンが高音域で優しさに満ちたフレーズを奏で、3分20秒で哀切に満ちた短調となる。3分32秒、短調から一音で再び長調に戻る素晴らしさ。4分10秒から第2ワルツへ。4分17秒からのテーマでシュトルツはテンポをぐっと落としている。4分54秒からの転調で更にテンポダウン。木管群が前打音付きの刻みでワルツの裏拍を際立たせている。5分32秒からの繰り返しでは一層その演出を強調する。その後経過句を経て6分35秒から第1ワルツが回顧される。
往年の銀幕女優ヒルデガルト・クネフが歌うシュトルツの曲<Das Lied ist aus:歌は終わりぬ>。この路線の甘い歌もたくさん作ったようだ。
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