武満徹 ギター作品集成
先回聴いた武満徹作品の続きで、こんな盤を取り出した。

鈴木大介(1974-)が弾く武満徹のギター作品集。1996年フォンテック録音。手持ちの盤は2005年にミドルプライスで出た再発盤。以下の曲が収録されている。
森のなかで/ギターのための12の歌/フォリオス/不良少年/
ヒロシマという名の少年/エキノクス/すべては薄明の中で/ラスト・ワルツ
先回の記事にも書いた通り、武満徹(1930-1996)は言うまでもなく日本の前衛音楽の旗手として活躍し、「世界のタケミツ」として高く評価された。ぼくも学生時代に初期の代表作である「弦楽のためのレクイエム」や「地平線のドーリア」などを幾度となく聴き、その静寂感や調和感、透明な響きにひかれた記憶がある。そうした前衛的な作品を発表する一方で、美しくメロディアスな調性音楽にも多くの傑作を残した。また武満徹は生涯ギターを愛し、貴重なギター曲も残している。この盤からも彼の多様な音楽のエッセンスと同時に、ギターへの愛着も感じ取とることが出来る。
最晩年に作られた「森のなかで」はそのタイトル通り、北米にある美しい大、小の森のなかで感じ、考えたこと、また行動を共にした人々の懐かしい想い出を描いたものだ、と武満徹がライナーノーツに記している。ほのかな調性感を伴いながら、ときに神秘的、ときにノスタルジックにギターの美しい余韻が響く。
70年代半ばに発表された「ギターのための12の歌」は、当時広く世界や日本で愛され歌われていたポピュラーソングを編曲したもので、ビートルズのイエスタデイやミッシェルなども収められている。いずれも限りなく美しい和声に彩られていて、静寂と安らぎと慰安に満ちたアレンジだ。112曲目に革命歌「インターナショナル」が入っているのも、時代と彼の人生の背景によるものか。ショット版の楽譜が手に入るが、びっしりと書き込まれた楽譜はいずれも難易度は高く、優雅なハーモニーを奏でるのはアマチュア中級では難しい。
鈴木大介の演奏は、武満自身が彼を格別に評価したこともあって、いずれもギターの美しい音色と武満作品の透明な響きが表出されたよい演奏だ。クレジットによれば、長らく彼の愛器になっている今井勇一作のギター他、ダニエル・フレドリッシュ、マルセロ・バルベロ・イーホなどの名器が使われている。秩父ミューズパークの自然で美しいアコースティックをとらえた優秀な録音と相まって、静かに深く武満ワールドにひたれるアルバムだ。
「エキノクス」 荘村清志のデビュー25周年を記念し1993年に作られた。
スコア付き音源はこちら⇒https://youtu.be/x0ZkDz1lRR4
映画「不良少年」の主題曲。演奏会版として佐藤紀雄によりギター二重奏用に編曲された。
鈴木大介によるギター独奏版「他人の顔」。この盤には収録されていない。ヤマハでのステージということで、鈴木氏も開発段階で関わった同社のGCシリーズの楽器が使われている(ヘッド形状からGC-82かGC-71と思われる)。
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