ジネット・ヌヴ―のブラームス
十月も終わりに近付き、ようやく秋らしくなってきた。山々からは紅葉の便り。近隣の街路樹が色付くのはまだ少し先だろうが、気分だけは満喫しようと、秋の夜長はブラームス。こんな盤を取り出した。

ジネット・ヌヴー(1919-1949)によるブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調。ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送交響楽団が伴奏付けている。1948年5月ハンブルグでのライヴ録音。1919年生まれのヌヴーが30歳になる直前の演奏。この録音の1年後1949年10月28日、アメリカへの演奏旅行に向かうために乗り込んだ飛行機が途中アゾレス諸島沖で墜落。30歳の短い命を閉じた。ちょうど50年前の今頃ということになる。 この録音は後年見つかったライヴ録音で、他にもセッション録音含めて、いくつか同曲の録音がある中、彼女の演奏を代表する名盤として今も聴き継がれている。
実際このブラームスは素晴らしい。11歳でパリ音楽院に入り、わずか8ヶ月で卒業したという天賦の才を持つ彼女のヴァイオリンは、若さゆえの情熱も加わり力強く、伴奏を付けるイッセルシュテットも、ブラームスはかくあってほしいというイメージをことごとく音で提示していく。第1楽章冒頭、ヴァイオリンが入ってくるまでのオーケストラパートの演奏からして、まるでブラームスの5番目の交響曲かと思わせる充実した響きだ。
出だしの序奏はかなりゆったりと入るが、すぐにテンポを上げ、以降は引き締まった造形ときっちりと整ったアンサンブルを展開する。長い序奏ののち、ソロヴァイオリンが入る。ヌヴーは多くの奏者やるように最初に音をテヌート気味に保つやり方はとらず、続くスケールに向けて一気に駆け上がる。第2楽章のアダージョもオケ、ソロともに甘くならず緊張感をもって切々と歌う。第3楽章はこの曲ではもっとも扱いが難しい楽章だろうか。下手をすると賑やかなだけのドンチャン騒ぎになりかねない。もちろんこの盤の演奏はそんな懸念をよそに、ラプソディックなエネルギーとブラームスらしい渋さとを両立していて、申し分ない演奏に仕上がっている。1948年のモノラル・ライヴ録音ではあるが、ソロとオケのバランス、ホールトーン等、決して悪くなく、ジネット・ヌヴーの素晴らしさを実感できる名盤だ。
この盤の音源。全3楽章
のだめカンタービレ(2007年)でのワンシーン。第3楽章終盤。ソリストを演じた女優水川あさみ(最近、結婚しましたね)の「演技」は素晴らしいの一言だ。
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