群馬交響楽団@高崎芸術劇場
先週末の土曜日は群馬交響楽団(群響)の定期演奏会へ。会場はこの9月に落成した高崎芸術劇場。その大ホール(大劇場)が新しい群響のホームとなった。

60年に及ぶ旧ホームの群馬音楽センターから新ホールへ移行。20年来の悲願がようやくかなった。惜しむらくは高崎芸術劇場の大ホールがクラシック音楽専門ホールとはならず、多様な音楽やバレエ、演劇まで幅広く対応するホールとして作られることになったが、クラシック音楽ばかり優先するわけにもいかない事情も理解できる。同劇場には音楽ホールと称して400名規模のホールがあって、こちらはクラシック音楽を主な対象としているようだ。とまれ新ホールの響きを楽しみに第553回定期演奏会へと向かった。

同劇場へはJR高崎駅から屋根付きの回廊を歩いて5分程。アクセスはすこぶる良好だ。新幹線のおかげで東京や長野からも1時間後にはホール前に立てる。大ホールは約2000席。舞台を中心に扇型に広がる空間は広々とし、客席の勾配も十分にあって、隅々から舞台が見渡せる。多様なジャンルの公演に対応するためもあってから、天井や壁面のシャンデリアや装飾はほとんどない。木質の深い色合いの壁面はやや単調ではあるが、むしろ広々とした印象につながるし、天井にちりばめられたシンプルなライトが星のきらめきのようにも見えて悪くない。劇場内にはクローク、カフェ・レストラン、スタンドカフェなど整い、都心の劇場に見劣りしない。
当夜のプログラムは井上道義指揮で武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」とブルックナーの第7交響曲が演奏された。すでにこのホールを経験した知人からは、少々残量が多すぎる印象だったとも聞いていたが、当夜ぼくが座った2階最奥中央寄りのC席では、ホールエコー過多の印象はまったくなく、予想以上に良い印象を受けた。視覚的にも音響的にもステージからの遠さを感じないもので、弦楽群はボウイングのアタックまで鮮明に聴き取れるし、木管群も遠くなることもなかった。金管群や打楽器群のボリューミーな響きを聴くかぎり、むしろもう少しホールエコーがのってもいいのではないかと感じた。もっとも席によって千差万別だろうから、機会があればまた別のポジションで聴いてみようと思う。
聴き馴染んだブルックナーの第7交響曲。井上道義氏の解釈は実にモダンで、テンポの動きは少ないものの、スコアから読み取った各パートの動きをより強調させることで、長大なこの曲をまったく飽きさせることなく聴かせてくれた。お馴染みのスタイリッシュなアクションやポーズで、音のフレーズを視覚的にもみせてくれる分かりやすさは、この指揮者の魅力でもある。一方で、ぼくのような素人が言うのは僭越だが、群響の演奏はまだこのホールの響きと一体化した音作りには至っていない感もあった。デッドな音響の旧ホーム:群馬音楽センターでのスタイルが残っているためだろうか、ときに力づくの響きが気になった。この新ホールなら、それほど力まずに音調を整えることに専念できるはずだと感じた。
新ホールの完成、新しい本拠地での群馬交響楽団の新たなスタート… 高校生時代の半世紀前から同団を聴いてきた者としては隔世の感有り一夜であった。来月は恒例の第九、年明けには竹澤恭子を迎えてのブラームス、2月にはマーラーの復活と、楽しみなプログラムが続く。
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