先日、知人とヴァイオリン協奏曲の話題になったとき、その名前が出て思い出し、こんな盤を取り出した。 プロコフィエフの2曲あるヴァイオリン協奏曲のうちの一つ、第2番ト短調(まだまだ続く2番オシ)。ヘンリック・シェリングの独奏、ロジェストヴェンスキー指揮ロンドン交響楽団が伴奏を付けている。1965年録音のフィリップス盤。この曲はプロコフィエフ後期作品中の初期のもので、古典へ回帰した形式と美しい民謡風主題を取り入れた傑作だ。 第1楽章冒頭から無伴奏で印象的な主題が奏される。どこか懐かしく悲しい、不思議な魅力ある旋律。その後の展開も力ずくのところはまったくない。ベートーヴェンのアダージョを思わせるといわれる第2楽章も終始独奏ヴァイオリンが高貴なメロディーを歌う。第3楽章になって曲は舞曲的性格のラプソディックな展開になり、途中カスタネットも入ってきて活気を帯びてくるが、ト短調の調性ゆえか明るく華やかな空気にはならず、どこか抑制が効いている。 60年代の録音だが、フィリップスらしい透明度の高い良い音で、気品に満ちたシェリングのヴァイオリンが楽しめる。ロシアのオケだとやや勢いに走りがちなロジェストヴェンスキーも、ロンドンのオケ相手とあってか落ち着いたバランスのよいバック。近現代の曲はどうもという向きにも馴染みやすい曲だ。 この盤の音源。全3楽章。VIDEO ジャニー・ジャンセン(Vn) マーク・エルダー指揮オランダ放送管弦楽団によるライヴ。VIDEO 第2楽章の楽譜付き音源。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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三連休明け。昨年来慌ただしかった業務進捗が収束方向となり、ようやく平常ペースに戻りつつある。きょうもほぼ定時に退勤。帰宅後、ひと息ついて、変わらず2番オシの音盤ルーティン。今夜はこんな盤を取り出した。 ポール・トルトゥリエ(1914-1990)の弾くフォーレのチェロソナタ第2番ト短調。例の20枚組みボックスセット中の一枚。1974年録音。ピアノはエリック・ハイドシェック。この盤にはショパンとラフマニノフのチェロソナタが併録されている。 フォーレはチェロソナタを2曲残しているが、一般にはこの第2番の人気が高い。第1楽章はせわしく動くピアノの音形にのってチェロのゆったりとしたフレーズを歌う。調性は絶えず揺れ動くが、落ち着きの無さを感じる一歩手前で機能和声的に解決するので、不安さや難解さ感じはしない。第2楽章は有名な<エレジー>を思わせる出だし。淡々と四分音符を刻むピアノの伴奏音形と、付点つきのチェロのメロディーからもうかがい知れるように、これは葬送の音楽。ナポレオン没後百年記念式典に際してフォーレが作った<葬送歌>から取られているという。この曲でもっとも印象的な楽章だろう。第3楽章はふたたび闊達なピアノとチェロの対話。このレベルの曲になるとピアノパートの難易度も高い。古典派からロマン派あたりの典型的ソナタのように、終楽章は景気のいいロンドで終わりという曲ではなく、終楽章も規模の大きなソナタ形式をとり、調性も頻繁に動きながらも、響きの美しさを失わない。ドビュッシー、ラヴェルへとつながる近代フランス音楽の潮流を感じさせる名曲だ。 トルトゥリエの弾く第2楽章。60年代の演奏。VIDEO この曲の全楽章。有名な第2楽章は6分5秒から。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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いつまで続ける2番シリーズ…。今夜はこの2番。 ベートーヴェンの交響曲第2番ニ長調。パウル・クレツキ(1900-1973)指揮チェコフィルハーモニーによる全集中の一枚。手持ちの盤は10年程前に日本コロンビアから出た廉価ボックスセット。録音は1964~68年。68年「プラハの春」の少し前までのチェコフィルは、マタチッチとのブルックナー、アンチェルとの新世界や管弦楽集など、よい録音を残している。クレツキとのベートーヴェンも同時期の録音。 クレツキの解釈は今夜聴いている第2番を含め、他の曲も明快なアーティキュレーション、短めのフレージングをとった現代的なスタイル。チェコの名門レーベル;スプラファンによる録音も、ややオンマイクでオケの音を明瞭にとらえたもので、一聴するともう少し潤いがほしい気もするが、演奏の個性とはよくマッチングしている。 第2番の第1楽章は古典期交響曲の定石通り主和音のトゥッティで始まり、続いて堂々たる序奏が続く。マスの響きよりは各パート個々のフレーズが極めて明瞭に浮かんでくる。この第2交響曲の白眉は第2楽章ラルゲットの変奏曲だ。ベートーヴェンはバリエーションの名手としても知られ、実際九つある交響曲の多くに変奏曲の楽章を持つ。中でもこの第2番の緩徐楽章は第9番の第3楽章と並んで格別に美しい。このクレツキとチェコフィルの演奏で聴いていると、変奏を繰り広げる各パートの演奏ぶり、役割が実によく分かる。 この盤の音源。第2番・第2楽章。VIDEO 高関健&群馬交響楽団による第2番:第1楽章。 手持ちの盤からアップした。VIDEO ティーレマン&VPOによるライヴ@ムジークフェラインVIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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年頭から続けている第2番シリーズ。今夜はこの2番を取り出した。 マーラー交響曲第2番ハ短調「復活」。レナード・バーンスタインとニューヨークフィルによるマーラー交響曲全集中の1枚。手持ちの盤は数年前にアマゾンで投げ売りされていたときに手に入れた激安ボックスセット。以前からLP盤全集も持っていたのだが、やはりお手軽CDの魅力もあって手に入れた。現在もアマゾンで三千円程 で売られている。今夜はその中から第2番「復活」を取り出し、さらに2にこだわって第2楽章を聴いている。 マーラーの交響曲が一般的な人気を得るようになったのは、ぼくの記憶では70年代半ばあたりからではないだろう。ステレオ装置が家々に行き渡り、録音技術や演奏技術の成熟もあってマーラーやブルックナーなどの長大な交響作品が次々とリリースされた時期でもある。ぼくはちょうどその頃学生時代の真っ只中で、貧乏学生ゆえにレコードはまともに買えなかったが、FMでそうした大曲に親しんだ。その後もマーラーやブルックナーは多少の波はあるものの人気のある作曲家だろう。もっとも1時間を優に越える曲が多いだけに、聴こうとすると時間と気持ちの余裕もいるのだが、最近は楽章単位の<細切れ聴き>も中々面白いなあと感じている。 今夜は大曲の代表格ともいえる第2番「復活」の第2楽章を聴いているのだが、こうして単独で聴くと、通して聴いたときには気付かなかった多くの発見がある。「復活」は全楽章では80分超を要するが、第2楽章は12分ほど。80分に集中するのと12分に集中するのとでは違って当然ともいえる。実際、この第2楽章だけと冒頭から聴くと、弦楽を中心にした美しい旋律、ヴァイオリンパートとチェロパートの対比、そしてそれぞれの旋律を歌うにあたってのアーティキュレーションやダイナミクスの設定など、指揮者の意図とその再現が手に取るように伝わってくる。 後期ロマン派の大曲というと大音量でドンパチやるイメージが強いが、このマーラーをはじめ、緩徐楽章を深夜に絞り気味の音量で楚々と聴くのも味わい深い。 バーンスタインの演奏は晩年の再録音に比べるとやや荒削りで直線的ではあるが、彼独自の粘着質の歌いっぷりが、この曲のロマンティシズムと合致し、かつ晩年ほどくどくなっておらず、中々好ましい。かつてのLP音源に比べると、リマスターの効果もあってか音質も十分納得できる仕上がりだ。今ではあまた選択肢のあるマーラー全集だが、このバーンスタインの旧盤もファーストチョイスとしての価値ありと、あらためて感じる。 バーンスタインとロンドン響が1973年に残した映像作品から第2楽章。part1に続いてpart2。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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令和2年にちなんだ2番シリーズの音盤ルーティン。今夜はこんな盤を取り出した。 クリーヴランド弦楽四重奏団によるブラームスの弦楽四重奏曲全曲2枚組LP盤。その中から第2番イ短調に針を下ろす。クリーヴランド弦楽四重奏団は1969年に結成され、26年間の活動ののち1995年に解散してその歴史を閉じた。このブラームスは彼らのデヴュー盤にあたる。正確な録音データが記されていないが、おそらく結成当時の70年前後の録音を思われる。 ブラームスは優れた室内楽を残し、そのいずれもが懐深いロマンティシズムに満ちている。特に弦楽四重奏から拡張された五重奏や六重奏、そしてピアノ入りの四重奏、五重奏と、いずれも名曲揃いだ。そんな中にあって室内楽の基本ともでいうべき弦楽四重奏曲は3曲が残されているのだが、他の拡大された編成の曲に比べるとマイナーな感は否めない。そもそも弦四本という、必要十分とも必要最小限とも言える構成ゆえ、聴く側のイマジネーションで音楽を膨らませる要素が大きい。加えて、古典派の四重奏曲のように明確で分かりやすいメロディーラインと、それを引き立てる起承転結のはっきりしたフレージングや和声感(カデンツ)に比べ、ブラームスのそれはすべてがずっとデリケートかつ控えめだ。曲の方から次々と美味しい料理を並べてくれるような音楽ではない。ひと言でいえばブラームスの室内楽は渋く、取り分け弦楽四重奏は激渋という印象をもつ。 そんな中、第2番イ短調は穏やかな曲想と渋い中にも親しみを感じさせるメロディーに満ちている。第1楽章 Allegro non troppo、第2楽章 Andante moderato、第3楽章 Quasi Menuetto, moderato、第4楽章 Finale. Allegro non assaiの堂々とした構成で、このクリーヴランドSQの演奏も30分を要している。どの楽章も、ぼくらがブラームスと聞いてイメージする淡くも深い抒情性を聴かせてくれる。華やかな正月気分のクールダウンにはちょうどいいかもしれない。 この盤の音源。第1楽章。VIDEO パシフィック・カルテット・ウィーン による演奏。日本・台湾・スイスの出身者からなる。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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年末年始の休みも終わり、きょうから仕事開始。久々に出勤すると机上のPCが入れ替わっていた。OSのサポートが切れることから、年末年始の休み中に千台超を一気に更新したとのこと。入替え作業は中々大変な作業ではなかったかと察するが、どんな様子だったのだろう。そんなシステム部門の奮闘を想像しながら、こちらは程々に業務に精励。帰宅後ひと息ついて、ナンバー2の続き。今夜はこんな盤を取り出した。 ヨーゼフ・ハイドンの交響曲第2番ハ長調。例によってデニス・ラッセル・デイヴィス指揮シュトゥットガルト室内管による全集中の1枚。初期交響曲として第1番ニ長調・第37番ハ長調・第18番ト長調・第2番ハ長調が収められている。この全集盤は1995年から没後200年のハイドンイヤーとなった2009年にかけて録音が行われたようだが、個々の演奏に関する録音データが付されておらず、第2番についても録音日時は不明。 ハイドン(1732-1809)が交響曲を書き始めた時期、そしてこの第2番がいつ作曲されたかは諸説あるようだが、1757~1759年頃に書かれたということになっているようだ。ハイドン30代後半に当たる時期で、すでに作曲家としての手法は確立していた頃と思われる。曲は3楽章から成り、記譜上一切の繰り返しがないことから、演奏時間も10分程度と小規模な曲として出来上がっている。第1楽章アレグロはハ長調のごく単純なフレーズで始まる。古典のお手本のような展開。単純なハ長調のスケールフレーズながらリズムに工夫がこらされ、また途中ト短調やホ短調に転じるなど、中々聴かせる。第2楽章アンダンテは弦楽群のみ、それも第1、第2ヴァイオリンがユニゾンで無窮動風のフレーズを弾き続け、低弦群がやはりユニゾンでそれを支えるフレーズを奏でる。これもまた合奏曲のエチュードのような書き方だが、聴いていると稚拙さは感じない。終楽章プレストはロンド調で快活に終始する。 デニス・ラッセル・デイヴィス指揮シュトゥットガルト室内管による演奏は他の曲同様、落ち着いたテンポ設定。各パートの動きも明快で、バロック風の雰囲気も併せもつ初期作品の演奏としては文句のない出来だ。チェンバロの通奏低音はごく控えめに入っているのも雰囲気を感じさせる。 鈴木秀美&オーケストラ・リベラ・クラシカによる演奏。VIDEO スコア付き音源。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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令和二年にちなみ、ナンバー2の曲で始めた音盤ルーティン。先回のシューマンに続き、きょうはこんな盤を取り出した。 シューベルト交響曲第2番変ロ長調。コリン・デイヴィス(1927-2013)とシュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるシューベルト交響曲全集中の1枚。1994年から1996年にかけてのセッション録音で、第2番は1995年に録られている。録音会場は例によってドレスデン・ルカ教会。数年前にCBSソニーの輸入限定盤として発売されたもの。当時ブロムシュテット&SKD、スウィトナー&SKBのシューベルトを続けて手に入れ、前後してこの盤のリリースを知った。シューベルトの演奏も、ベームやカラヤンのかつての重厚長大路線から多様化してピリオドスタイルの演奏もすっかりお馴染みなったが、さて、その間の世代とでもいうべき、ブロムシュテットやスウィトナー、そしてこのコリン・デイヴィスらによる中庸をいく演奏はどんなもんかいな、しかもオケはSKDやSKBといった伝統色の強い団体であれば…と、まあ、そんな興味から一連の録音を確認した次第。 モーツァルトの39番交響曲を思わせる堂々とした序奏で始まる第1楽章。時折、短調への転調を交えながらも終始元気一杯といった展開が続く。シューベルトの曲にあって、これほど溌剌とした曲想が続く曲も珍しいだろうか。穏やかな変奏曲形式の第2楽章アンダンテはこの曲の中ではもっとも一般的なシューベルトのイメージに近い曲想。第3楽章はハ短調に転じる。指定はメヌエットだがテンポは速く、ほとんどスケルツォといっていい。ハ短調ではあるが、トリオを含めて長調への転調部分も多く、それほど悲劇的な印象ではない。プレスト・ヴィヴァーチェの終楽章も元気一杯の勢い変らず。それでいて能天気な一本調子にならずに、よく展開していく。 この第2番の交響曲はシューベルト18歳のときに作曲されたという。それにしては立派な構えの曲。明朗で前向きな曲調で年の初めに相応しい佳曲だ。 この盤の音源。VIDEO 長野県岡谷市で活動するアマチュアオーケストラ「カノラータ・オーケストラ」による演奏。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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