カラヤン&BPO EMI盤ハイドン交響曲集



週末から寒気流入で春の到来も足踏み。不穏なニュースも変わらずだが、それでも気分は春。コートを薄手のものに替え、首の巻物もウールからリネンに替えて本日も出勤。程々に仕事をし、いつもの時間に帰宅した。夜半の音盤タイム。今夜はこんな盤を取り出した。


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カラヤン&ベルリンフィルによるEMI盤のハイドン交響曲集。収録曲はザロモンセットから101番ニ長調「時計」・104番ニ長調「ロンドン」の2曲。1971年(時計)と1975年(ロンドン)の録音。モーツァルト、チャイコフスキー、R・シュトラウス等、70年代初頭に行なわれた一連のEMI録音中の一枚で、手持ちの盤は80年代初頭に出た再発盤。

久々に針を下ろしたのだが、実に颯爽としていながら、かつゴージャスな演奏だ。ピリオドスタイルどこ吹く風といわんばかりに、大編成のベルリンフィルをドライブしてスケールの大きな演奏を展開している。

「時計」の第1楽章、意味深長なニ短調の序奏のあと主部に入ると一気呵成に音楽が進む。速めのテンポ、よく練られたアンサンブル。独グラモフォンでの録音と比べ、特に弦楽群の音色が明るめで残響もたっぷりとしている。カラヤンサーカスと異名をとったフィルハーモニーホールでのライヴを聴いている感がある。一方で「時計」の標題のもとになった第二楽章や第三楽章のメヌエットなどは、もう少し軽みのある表現でもいいのではないとかと感じる。カラヤンはまったく手綱を緩めずにシンフォニックにこの楽章を「立派」に組み立てている。

「ロンドン」はこの種のスタイルの演奏としては極めつけの一つといっていいかもしれない。同じカラヤンのDECCA盤ウィーンフィルとの演奏と比べると一層緻密で細部までコントロールされているように感じる。この時期のカラヤンの特徴で、フレーズは音価いっぱいに引き延ばされて、レガート感が強調されている。マスとしての音の集合、響きの交わりを楽しめるという意味では<交響=Sym+Phony>の概念にかなった素晴らしい演奏だ。


この盤の音源。交響曲第101番ニ長調「時計」全楽章


同第104番ニ長調「ロンドン」



同交響曲第83番ト短調「めんどり」 手持ちの盤に入っていないが、同時期に録音された。



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メンデルスゾーン弦四第一



週末土曜日。野暮用でちょいと出かけ、夕刻帰宅。夜半近く、ひと息ついて静かな春の宵。音盤棚を見回し、しばらく聴いてない盤ばかりだなあと思いつつ、ふと目が合ったこんな盤を取り出した。


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メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第1番変ホ長調作品12。十年程前に買い求めたブリリアントレーベルの激安ボックスセット中の1枚。メンデルスゾーンの室内楽作品がCD10枚に収められている。第1番はシャロン弦楽四重奏団による2002年の録音とある。

幼年期の習作もあるので詳しいことは不案内で恐縮だが、番号付きとしては、この作品12を第1番を称されているようだ。英雄の調性といわれる変ホ長調だが、弦楽器だけならそういうキャラクタもないだろう。事実第1楽章はすこぶる穏やかで、甘美な旋律に満ちている。第2楽章は、近代クラシックギターの祖とでもいうべきフランシスコ・タレガ(1852-1909)によるギター編曲でもよく知られたカンツォネッタ。弾むようなリズムが特徴的で、ギター弾きならずとも一度聴いたら忘れないだろう。第3楽章は4分ほどの短い楽章だが極めて美しいアンダンテ・エスプレシーヴォ。終楽章は一転、ハ短調の悲劇性を帯びたフレーズで始まる。しかも悲哀調というよりは厳しさを帯びた、闘争的な意志さえ感じる。終盤でようやく変ホ長調に戻り、穏やかさを取り戻して曲を閉じる。

メンデルスゾーンの真骨頂は室内楽とも言われる。カルテットのみならず、有名なピアノ三重奏ほか、メンデルスゾーンの室内楽は聴き逃せない曲ばかりだ。


全4楽章楽譜付きで。画面を前にギターを抱え、初見練習かねて一緒に楽しむのにはいい題材。第2楽章のカンツォネッタは7分48秒から。


セゴビアの弾く第2楽章カンツォネッタ。


オリジナルの弦楽四重奏によるカンツォネッタ。



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ビル・クロウ「さよならバードランド」



時々コメントを寄せてくれる「うぶさん」から少し前のアート・ファーマーの記事にいただいたコメントに、ビル・クロウの自伝の話があったのを思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。


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ベースのビル・クロウ(1927-)がリーダーとなったカルテットによるスタンダード集「さよならバードランド」。1995年NJヴァン・ゲルダー・スタジオ録音。手持ちの盤は数年前にヴィーナスレーベルのミドルプライス盤で出たときのもの。収録曲は以下の通り。

1. さよならバードランド、2. シェアー・ア・キイ、3. オーケー、バグ
4. ニューズ・フロム・ブルーポート、5. 枯葉、6. フールズ・ラッシュ・イン
7. ジャスト・フレンズ、8. トライクロティズム、9. マイ・ファニー・ヴァレンタイン
10. ナイト・ライツ、11. ブロードウェイ

ベースを担いだ男がニューヨークの朝もやの中を歩いているジャケットにひかれて買った一枚。何もジャケ買いはオネエサンばかりではないのだ。このベースを担いでいる男が、このアルバムのリーダーでもあるベーシストのビル・クロウ。村上春樹がこのビル・クロウの著書「さよならバードランド」の翻訳したことから、このアルバムのライナーノーツを彼が書いている。その辺もこのアルバムの「売り」の一つだろうか。

第1曲のタイトルチューン「さよならバードランド」からいいスイング感で始まる。このカルテットにはピアノがなく、ビル・クロウのベース、デヴィッド・ジョーンのドラムス、それにカーメン・レギオのテナーサックスとジョー・コーンのギターが加わっている。ピアノレスの編成のためか、軽快にスイングする曲であっても、セッション全体に落ち着きと響きの透明感が支配している。リズム隊としてもベースの役割もよく聴き取れるし、ギターのリフも効果的に響いている。 ビル・クロウの往時の演奏についてはまったく不案内。このヴィーナスレーベルの盤は彼のキャリアのおそらく最後に近いものになるのだろうが、くつろいだ雰囲気と趣味のいいポピュラリティーも重なって、熟した味わいの盤になっている。もちろんヴァン・ゲルダーによる録音も素晴らしい。


この盤の音源。タイトルチューンの「さよならバードランド」


「シェアー・ア・キー」高速で演奏されることの多い有名な「チェロキー」と同じコード進行と使ってボサノバ調に仕上げた一曲。


2016年というからビル・クロウ88歳のとき。力強いベースプレイ。演奏は4分10秒過ぎから。最高だネ!



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コーラスライン



ちょっと調べごとでネットをうろついていたら、ブロードウェイミュージカルの記事に出くわし、そういえば的に思い出して、こんな盤を取り出した。


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ミュージカル映画「コーラスライン」のサウンドトラックLP。この映画が日本で劇場公開されたのが昭和60年・1985年。ちょっとしたきっかけがあって、公開直後に有楽町の映画館で観た。映画館を出たあと銀座山野でこの盤を買って帰った記憶がある。若い頃から映画館の中に入るとほぼ確実に頭痛に見舞われる体質で、映画を観たいと思いつつ躊躇することが多かった。それでもいくつか印象に残る映画もあって、このコーラスラインはその一つだ。今となってはストーリーすらはっきり覚えていないが、久々にこのサントラ盤を聴いて、いくつかの音楽だけは、はっきりと記憶に残っていた。
Again!の掛け声で始まる冒頭の「I hope I get ti」、黒人ダンサーのダイナミックな踊りと共に歌われる「Suprise Surprise」、フィナーレを飾る有名な「One」。ロック調の8ビートの曲が多いが、ビッグバンドを駆使し、さすがによくアレンジされていて完成度が高い。華やかでゴージャスな舞台を一度NYで観てみたいものだ。


冒頭オーディションシーン。


フィナーレ「One」



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フォーレ組曲「ペレアスとメリザンド」



暖冬だった今年の冬も終わり、関東ではあと十日か二週間ほどで桜も開花の見込み。朝晩はまだ冷え込み、実感は薄いが、春爛漫ももうすぐだ。 さて、現下の状況もあって週末も在宅。明日からまた仕事という日曜の晩。春の宵に相応しいかと、こんな盤を取り出した。


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ガブリエル・フォーレの管弦楽曲集。70年代終わりに東芝EMIから廉価盤でリリースされた<フランス音楽のエスプリ・シリーズ>中の一枚。セルジュ・ボド指揮パリ管弦楽団による演奏。1969年録音。収録曲は以下の通り。

 組曲「ペレアスとメリザンド」op.80
 組曲「ドリー」op.56
 組曲「マスクとベルガマスク」op.112

選曲、指揮者、オーケストラ、そしてミュシャの絵画によるジャケット。いかにも<おフランス>な一枚。ぼくはフランス音楽にはまったく疎いのだが、このシリーズはCD時代になっても人気があり、廃盤になったあと再発が望まれていたシリーズとのこと。EMIレーベルが無くなりワーナー傘下になってから同じジャケットデザインで2014年に再発され、現在も入手可能のようだ。

さきほどから組曲「ペレアスとメリザンド」を控えめな音量で鳴らしている。
お馴染みのメロディーが穏やかに流れて、やはり春の宵にはピッタリだ。突出して有名な第3曲<シシリエンヌ>だけ聴くのではいかにももったいない。ぼくはフォーレの作品には不案内だが、この盤の曲や有名なレクイエムのようなポピュラリティが強い曲、あるいは多くの室内楽にみられる渋い味わいの曲想のものと、中々一筋縄ではいかない作曲家という印象がある。手始めにこの盤に収録されている組曲など聴き、それからより深いエスプリの森に入り込んでいくというのが常道かと思う。
セルジュ・ボド(1928-)は創立まもないパリ管をミュンシュと共に支え、大阪万博のときはその前年に亡くなったミュンシュに代わってパリ管を引き連れて来日した。この盤はちょうどその頃の録音。その後も度々来日して日本のオケを振っているので、仏系指揮者の中ではお馴染みの名前だが、このところ久しく名前を聞いていない。この盤では淡いベールに包まれたような雰囲気のある、この曲に相応しい演奏を聴かせてくれる。


組曲「ペレアスとメリザンド」 マレク・ヤノフスキ―指揮hr交響楽団(フランクフルト放響)。有名なシシリエンヌは8分55秒から。


セルジュ・ボドとパリ管による組曲「ドリー」の音源。もともとはピアノ連弾用。のちにアンリ・ラボーによって管弦楽用に編曲されたもの。以下の6曲からなる。
第1曲 子守歌/第2曲 ミ・ア・ウ/第3曲 ドリーの庭
第4曲 キティー・ヴァルス/第5曲 優しさ/第6曲 スペインの踊り



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チョイと宅録 佐藤弘和「音楽エッセイ~ギターソロのための24の小品集~」



先回に続き、久しぶりの宅録をアップ。広げた楽譜は佐藤弘和「音楽エッセイ~ギターソロのための24の小品集~」。佐藤氏が亡くなった翌年2017年春に現代ギター社より出たもの。そのタイトル通り24曲の小品から成る曲集。


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佐藤弘和氏の訃報に触れたのは2016年暮れ。クリスマスを前にした寒い日だった。数年前から体調を崩し、一進一退と聞いていたが、その年の夏から病状悪化し闘病生活を送っていた。順天堂大学の病床に有りながらも音楽への思い変わらず、その年の7月から9月に間に集中的に作られた、曰く「順天堂ピース」。ギターを抱えられない状況ゆえに、頭の中だけで考え手書きで五線紙に書き付けるというスタイルで作ったそうだ。 いずれも1分前後の小品ながら、佐藤作品らしいわかりやすいメロディーと心地良い和声に彩られていて、次々にページをめくって弾き進めたくなる。そしてそれぞれに曲に付された短いタイトルから、病床でそれを作ったときの佐藤氏の思いが伝わってくる。

先回の記事に貼った動画と同じ晩。自宅リビング前の廊下にて録音。ガランとした廊下でナチュラルな残響があり、弾いていると気分がいいのだが、こうして録音されたものを聴くと、高音寄りのバランスで安っぽい響き過多に感じられる。先回同様、深夜の廊下で天井からの灯りは乏しく、何やら怪しい雰囲気MAX。寒さもあって分厚いセーターを着こんで、はなはだ不細工だがご容赦のほどを。また初見+αゆえテンポや強弱も吟味せず、楽譜の読み違い弾き損じあるが、併せてご勘弁下さいませ。


「ギターソロのための24の小品集」から「目覚め」


「ギターソロのための24の小品集」から「ある日の悲しみ」 5分の4拍子


「ギターソロのための24の小品集」から「穏やかなメヌエット」



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チョイと宅録 佐藤弘和「12のシンプルソング」から


ギター弾きを自認するからには、分別臭い講釈ばかりではいけない。弾いてナンボでしょう…。というわけで、重い腰を上げ、久しぶりにチョイと宅録。きょう広げた楽譜はこれ。


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佐藤弘和(1966-2016)作曲の小品を集めた「12のシンプルソング」。2009年ホマドリーム社刊。「12のシンプルエチュード」と対を成す曲集。佐藤氏の巻頭言によれば、それぞれ教育的意図をもって書かれた作品ではあるが、ただ弾いて技術的上達を目指すというより、音楽表現における作者の意図と自分の意図の確認を目指してほしいそうだ。そういう意味では、初心者よりは中上級者が自分の弾き方を見つめながら音楽表現の模索をする一助に成れば、とも書かれていた。
実際、いずれの曲もほとんどが第1ポジションから大きく離れることはなく、また初見で戸惑う程の複雑な和声やリズムも少ない。この曲集をせっせと弾いたからといって指が回るようになるトレーニング要素も少ない。音楽表現…曲に盛り込まれたメロディー・和声・リズムという音楽の基本要素をどれだけ自分の感性として感じ取れるかということが、この曲集に込められた佐藤氏のメインテーマだろう。

そんなことを考えながら、曲集のページをペラペラをめくり、何気なく選んだ2曲を録音してみた。モノが少なく適当な響きが得られそうなリビング前の廊下に椅子を持ち出して録音。深夜の廊下で天井からの灯りは乏しく、何やら怪しい雰囲気MAX。寒さもあって分厚いセーターを着こんで、はなはだ不細工だがご容赦のほどを。初見+αゆえ、テンポや強弱も吟味せず、楽譜の読み違い弾き損じあるが、併せてご勘弁下さいませ。


「12のシンプルソング」からNo.4


「12のシンプルソング」からNo.5


なお、ホマドリーム社は数年前に事業停止し、この楽譜も絶版になっていたが、その後現代ギター社で復刻され、「12のシンプルソング」「12のシンプルエチュード」がセットになった曲集が発売されている。


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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