ベームのブラームス第2



コロナ禍に見舞われ爽やかな五月晴れを感じることもなく、はや五月も下旬。何やら梅雨の走りを感じさせる天気が続く。天気ばかりはコントロールできないが、気分だけでも初夏を味わおうと、今夜はこんな盤を取り出した。


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ブラームス交響曲第2番ニ長調。この時期になると必ず聴く曲の一つだ。手元にある十種は下らないこの曲の盤の中から、ベーム&ウィーンフィルのLP全集盤を引っ張り出した。1975年録音。確か90年代終盤に御茶ノ水の中古レコード店で手に入れた。もうすっかりCD時代になりLP放出期になっていた頃で、確か千数百円程だった。かつては憧れの存在だったカートンボックス入りLP全集盤。今では中古店でも誰も見向きもしないだろう。

静かに針を下ろし、いつものLPリスニング時の音量レベルにアンプのボリュームを上げる。かすかなトレースノイズに導かれて冒頭の低弦群によるD-Ais-Dの主題が部屋に響く。レコード時代は、楽音がないときのトレースノイズが気にならないレベルというのが適正音量のひとつの目安だった。一方で、なるべく大きな音で迫力を感じたいことから、愛好家はオーディオセットの改善や、レコード盤のコンディション維持に腐心した。トレースノイズのないCDになってから、多くの音盤愛好家の再生音量は確実に上昇した。つまりノイズがないことをいいことに、デカい音で聴くようになった。管弦楽はもちろん、リュートやチェンバロまで実際のイメージからかけ離れた音量で聴きがちだ。しかし、こうしてLPを聴くたびに適正音量の必要性をあらためて考える。日本の一般的住宅環境での適正音量はそう大きくない。

さてベーム&ウィーンフィルの盤。ひと言でいえば楷書の味わい。PCのフォント設定でいえば、日本語の体裁として読みやすく見た目にも美しい<正楷書体><教科書体>といったところだろう。筆跡太からず細からず。姿勢を整え、襟を正し、崩れたところや表面的な見栄えから何か強く訴えるものはなく整然としている。そんな音楽だ。リズムは正確に刻まれ、メロディーは美しく自然に流れ、全体の響きは過不足ないバランスで響く。録音はやや硬質ともいえる引き締まった音質で、低音をたっぷりと響かせた同時代のカラヤン&BPOの音とはかなり違う。エンジニアは同じギュンター・ヘルマンスだが、録音会場の違い、そして何よりベームの音楽作りによるところが大きいだろう。カラヤンと比較しても意味のないことだが、フレーズをレガートにつなぎ、音に隙間がないカラヤン流とは対照的な音作りだ。このウィーンフィルとの録音に関しては、第1番はベルリンフィルとの旧録音がいい、4番ではもう少し詠嘆調に歌えないか、2番は70年代ライヴ(下のYOUTUBE音源を貼ったもの)がベストだ等々、必ずしも好評価ばかりではないことは承知している。しかし、半世紀近くブラームスの交響曲を聴き、あれこれブツブツ言いながら様々な盤に触手を伸ばしてきて、ここに至って思うのだ。このベーム&VPO盤だけあればいいかなと。身辺整理してブラームスの交響曲を1セットだけ残しておくとしたら、このベーム&VPO盤かセル&クリーヴランド盤かというのが、目下の結論だ。


以下は1975年ベルリンフィルとのライヴ。この演奏は当時FMエアチェックしたカセットで繰り返し聴き、大いに感銘を受けた演奏だ。YOUTUBEコメント欄にもぼくと同世代の愛好家と思われるコメントが多く寄せられている。70年代半ばといえば、グローバル化の波もまだ少なく、欧州のトップオケはそれぞれ独自のトーンを持っていた時代だ。この音源で聴くベルリンフィルの圧倒的な重量感は今もう聴けないのではあるまいか。ベームもウィーンフィルとのセッション録音とはまったく別人のような燃焼ぶりで、指揮台を踏み鳴らす靴音と共に、むくつけき男集団だったベルリンフィルをドライブする。


ウィーンフィルとの1970年ライヴ


この盤の音源。ウィーンフィルとの1975年セッション録音。



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