きょうはちょいと野暮用あっていつもより遅く、九時少し前に帰宅した。ひと息ついて、あまり時間もないがアンプの灯を入れ、こんな盤をターンテーブルにのせた。

カラヤン指揮ベルリンフィルによる<オペラ間奏曲集>。1967年ベルリンイエスキリスト教会での録音。プロデューサー:オットー・ゲルデス、録音技師:ギュンター・ヘルマンス。お馴染みのドイツグラモフォン黄金コンビ。かれこれ二十年近く前に、近所のリサイクルショップにて100円で入手。見開きジャケットを開けると、古本や古いレコードジャケット特有のカビ臭さがただよう。しかし盤面はいたって良好。ほとんど針は落とされていない感じだ。収録曲は以下の通り。
<A面>
1. 歌劇≪椿姫≫第3幕間奏曲
2. 歌劇≪カヴァレリア・ルスティカーナ≫ 間奏曲
3. 歌劇≪修道女アンジェリカ≫ 間奏曲
4. 歌劇≪道化師≫ 間奏曲
5. 歌劇≪ホヴァンシチナ≫第4幕間奏曲
6. 歌劇≪マノン・レスコー≫第3幕間奏曲
<B面>
7. 歌劇≪ノートル・ダム≫ 間奏曲
8. 歌劇≪タイス≫ 瞑想曲
9. 歌劇≪フェドーラ≫第2幕間奏曲
10. 歌劇≪アドリアーナ・ルクヴルール≫第2幕間奏曲
11. 歌劇≪マドンナの宝石≫第3幕間奏曲
12. 歌劇≪友人フリッツ≫ 間奏曲
オペラはまったくといってよいほど感心のないぼくには、半分以上馴染みのない曲がならぶ。しかし、どれを聴いても瞬時にロマン派オペラらしい甘く切ない旋律に惹かれ、しみじみと聴き入ってしまう。 間奏曲というと幕間の音楽。気分転換、箸休めといった感もあって、そう重い曲想はない。しかしそこはカラヤン。ごくごく短い曲であっても、あくまでシンフォニックに歌う。≪道化師≫ 間奏曲や≪マノン・レスコー≫第3幕間奏曲など、立派過ぎるくらいに堂々として構えが大きい。そしてやはり、お約束のカヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲の美しさは格別だ。いつ聴いても切なく、心に沁みる。
カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲三題。
この盤の音源。ウォルフガンク・マイヤーのオルガンが入る。
かつて群馬交響楽団に来演しチャイコフスキーの名演を残したケク=チャン・リムが指揮する台湾の長栄交響楽団による演奏。濃い口の歌いっぷりが素晴らしい。
ウクレレ女子、もといギタレレ女子の演奏。
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先日来聴いているアンヌ・ケフェレック。手持ちの盤がもう一枚あったので取り出した。


アンヌ・ケフェレック(1948-)が弾くシューベルト。即興曲作品90の4曲と楽興の時作品94が収録されている。1973年1月のリリース。当時まったくの新人としてスカルラッティのソナタ集でデヴューしたケフェレックの2枚目のアルバムで、見開きジャケットには吉田秀和氏のレヴューも記載されている。A面のシューベルト即興曲に関しては、学生時代に聴き親しんだヘブラー盤がインプットされている。記憶に彼方にあるヘブラーの演奏に比べると、このケフェレックの演奏はやや速めのテンポで軽快に進む。この曲はもっと抒情的だったはずと思いながらも、すっきりとしたケフェレックの演奏は当時二十代前半だった彼女の若々しさの表れと思うと、これはこれで心地よい。片面だけにしておこうと思ったが、盤を裏返してB面の楽興の時も続けて聴いた。こちらも同じ方向性の演奏。やや速めのテンポですっきりした解釈。少々淡白といえなくもないが、おそらく19世紀当時のスタンダードな演奏はこれ位のテンポ感覚だったかもしれない。音色も穏やかな印象と感じていたら、ピアノはベーゼンドルファーと記されていた。今宵のナイトキャップにはちょうどよい一枚だった。
この盤の音源。即興曲作品90第3番変ト長調
同第2番変ホ長調
楽興の時第3番ヘ短調
2013年のケフェレックの演奏。バッハ、マルチェルロ、ヴィヴァルディなどを味わい深く弾いている。
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梅雨の末期で西日本中心に大変な雨が続いている様子。当地関東地方は比較的穏やかな梅雨空が続いている。週末日曜の昼下がり、窓の外を眺めながら、明るく伸びやかな曲でも聴こうかと音盤棚をサーチ。こんな盤を取り出した。

オーケストラ・アンサンブル金沢によるモーツァルトの弦楽合奏曲が収められた盤。指揮は長らくアルバン・ベルク四重奏団の1stヴァイオリンを受け持っていたギュンター・ピヒラー。2005年同団のホーム:石川県立音楽堂での録音。金沢は学生時代を過ごした思い出の地。十数年前、出張で久々に訪れた際に地元の老舗:山蓄(2009年閉店)で手に入れた。以下の通り、お馴染みの三曲が収められている。
・セレナード 第13番 ト長調 K.525
・ディヴェルティメント ニ長調 K.136
・ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
先程からディヴェルティメントの二曲を聴いている。
K.136の第1楽章アレグロ冒頭のフレーズが部屋に満ちる。いきなり妙な例えだが、採れたての、生きのいい海老がピチピチと飛び跳ねる様を想像してしまった。ライナーノーツによれば、編成は8-6-4-4-2と室内合奏としては標準的だが、演奏様式はカルテットかと思われる軽快なテンポとすっきりとしたアンサンブル。やや速めのテンポで軽やかに進む。K.138はヘ長調という調性と曲そのもの構成がK.136に比べて技巧的なためだろう、時折り転じる短調フレーズのスパイスも程よく効いて、明るさの中にも落ち着きと深さを感じさせる。
この盤はSACDとのハイブリッド仕様で、SACDモードではマルチチャンネルの再生が可能とある。手持ちのプレイヤー(アキュフェーズDP-560)で通常の2chで聴いているが、録音すこぶる優秀。伸びやかなヴァイオリン群はやや近めにクリアに捉えられ、同時に2本のコントラバスから繰り出される低音の基音が響き全体をしっかり支えていて、まことに気持ちのいい。
さて、あすは週明け月曜日。このディベルティメントにように伸びやかかつハッピーにいきたいものだ。
ディベルティメント ヘ長調 K.138 手持ちの盤からアップした。
水戸室内管弦楽団によるK.136。2012年
1stヴァイオリンに座っている潮田益子は2013年5月に亡くなった。
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先回に続き、今夜もアンヌ・ケフェレックを聴く。取り出したのはこの盤だ。

アンヌ・ケフェレック(1948-)のソロによるラヴェルのピアノ協奏曲ト長調。1976年のリリースでアラン・ロンバール指揮ストラスブールフィルが伴奏を付けている。もう一曲、クラシック愛好家であれば<左手>で通じるピアノ協奏曲ニ長調「左手のための」がカップリングされている。
この曲はアルゲリッチ盤の印象が強いのだが、このケフェレック盤はまた違ったアプローチ。<女性的>と、ひと言で片付けてしまうのは今どきナンだが、フランス音楽の傑作であるこの曲が持っている雰囲気からしたら、こちら方が本来の姿かもしれない。何といってもケフェレックは生粋のパリジェンヌだ。鞭の一打ちで始まる第1楽章など、アルゲリッチ盤だといきなりピアノと管弦楽によるバトルになるが、このケフェレック盤はピアノとオケが寄り添うように穏やかに進む。平和主義者のぼくとしては、こちらの方が心穏やかに聴ける。アラン・ロンバール指揮のストラスブールフィルのバックは、例のストラスブールパーカッショングループのメンバーもいるからだろうか、この曲で重要な役割を果たす打楽器群の音が見事だ。ラヴェルが自身がモーツァルトの五重奏曲を模したと語った第2楽章は、夜の気配とロマンティシズムに満ちていて美しい。
そういえば、ネットを見て知ったのだが、本来であればちょうど今頃来日公演の真っ最中の予定だったようだ。残念ながらコロナ禍で中止。来年あらためて、とのこと。
この盤の音源。第2楽章
同第1楽章
第2楽章の楽譜付き音源。デ・ラローチャの演奏とのこと。
近年の演奏。バッハBWV639。
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週半ばの水曜日。コロナ禍影響の業務遅延を取り返すべく本日も業務に精励。19時過ぎに帰宅した。軽めの夕飯を取り、風呂で汗を流し、さてひと息ついて音盤タイム。久々にこんな盤を取り出した。

アンヌ・ケフェレック(1948-)のショパンアルバム。彼女がまだ二十代半ばだった1973年の録音。日本ではキュートなヴィジュアルも手伝って人気が出だした頃だ。それにしても新人としてのショパンアルバムで、玄人好みのスケルツォと即興曲を選ぶというのは中々渋い選択だ。彼女の意志もあったろうし、取り巻きも単なるスター作りという姿勢ではなかったのだろう。ライナーノーツをみると使用ピアノとしてスタインウェイがクレジットされている。収録曲は以下の通り。
1. スケルツォ第1番ロ短調 Op.20
2. スケルツォ第2番変ロ短調 Op.31
3. スケルツォ第3番嬰ハ短調 Op.39
4. スケルツォ第4番ホ長調 Op.54
5. 即興曲 第1番変イ長調 Op.29
6. 即興曲 第2番嬰ヘ長調 Op.36
7. 即興曲 第3番変ト長調 Op.51
8. 即興曲 第4番嬰ハ短調 Op.66「幻想即興曲」
若々しくスッキリとした解釈のショパン。スケルツォの演奏は技巧と力を前面に出した演奏になりがちだが、そうした力とエネルギーで押し切るようなところがない。フォルテシモの和音も決して重く濁った響きにはならず、速いスケールなどもインテンポでさらりと弾き切る。ゆっくりとして抒情的なフレーズももたれ過ぎないで進む。こうした解釈はポロネーズやマズルカではやや淡白な印象になるかもしれない。もっとショパンのルーツであるポーランドの土の匂いがほしいと。 しかしこの盤のスケルツォや即興曲のように、洗練とインスピレーションをベースにした曲では彼女の資質と解釈をピタリと合っているように感じる。この盤はショパンをフランス側からとらえた演奏と解釈とも言える。70年代仏エラートとのシンプルで上品なジャケットデザインと整った録音もこの演奏に似つかわしい。
この盤の音源。「幻想即興曲」
同スケルツォ第2番変ロ長調
最近の演奏。バッハの協奏曲ニ短調BWV974(原曲マルチェッロ)の第2楽章。
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外出自粛や在宅勤務シフトが無くなってほぼひと月。楽器に触れる時間は3~5月に比べ、やはり減ってしまった。この歳でまだフルタイムで働いていることもあって、平日は中々時間が取れない。週末も野暮用で忙殺されることが多いのだが、きのうの日曜は午後少し時間があったので、こんな曲をさらってみた。

フェルナンド・ソル(1778-1839)が残したギター二重奏曲「喜遊曲」作品34。「L'Encouragement_アンクラージュマン」(はげまし)という副題が付されている。 ソルはギター弾きにはお馴染みの作曲家だ。19世紀初頭の古典ギター全盛期、多くのギター演奏家兼作曲家が活躍した中でも格段に優れた曲を残した。スペイン生まれながら、パリやイギリス、ロシアで活躍し、ギター曲なみならず管弦楽曲やオペラ、バレエ音楽なども残したが、現在ではもっぱらギター曲のみが知られる。
ソルの残した作品でかなり重要な位置を占めるのがギター二重奏曲だ。あるものは生徒と教師のための教育用として、あるものは友人との二重奏用として書かれ、技術的にやさしいものからコンサートプログラムになるものまで幅広い。そして曲の大小に関わらず、いずれも19世紀初頭の古典から初期ロマン派様式感と豊かな和声に彩られ、聴いていても弾いていても、実に美しく楽しい。
そんなソルの二重奏曲にあって、この作品34「アンクラージュマン」は、明るい楽想と程々の規模、中上級者なら苦労より楽しみが勝る程度の難易度などから、昔から人気が高い。ぼくが初めてこの曲を知ったのは高校時代。その後、大学のとき、社会人になってからと、何度か相棒を得て弾いたことがある。
曲はカンタービレ、アンダンティーノ(主題と変奏)、ワルツの3つに部分からなる。元々は生徒用の旋律パートと先生用の伴奏パートに分けて書かれたが、ソルの弟子だったナポレオン・コストが分担を適宜入替え、ほぼ対等な2つのパートに書き改めた。今ではほとんどの場合、その版が使われる。3つの部分すべてがホ長調を取り、明るく穏やかな旋律と、深刻にならない程度の緊張感を伴なって曲が進む。真ん中の変奏曲部分に少しテクニカルな速いパッセージがあるものの、全体としてそれほど厄介なところがなく、その辺りが人気の由縁かもしれない。二重奏曲なので一人で弾いていても…という感があるが、練習課題としてこうした二重奏曲をさらっておけば、いざ相方が得られたときにすぐに遊べるので一石二鳥ではないだろうか。
この曲が書かれた当時の服装・楽器によるオーセンティックな演奏。最初のカンタービレ部分のみ。残念ながら音はモノラル録音でやや冴えない。
モダンギターによる若々しい演奏。
楽譜はこちらに
http://wayback-01.kb.dk/wayback/20101028111758/http://www2.kb.dk/elib/noder/rischel/RiBS1053.pdf
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梅雨入りから三週間余。じわじわと気温上昇中。昼前まで宅内野暮用こなし汗をかく。昼から外出。夜半近くになってようやく一服。やれやれと思いつつこんな盤を取り出した。

ジョージ・セル(1897-1970)指揮クリーヴランド管弦楽団によるメンデルスゾーン作品を集めた一枚。数年前に出たソニークラシカルの廉価盤シリーズ:名盤コレクション1000の中のもの。収録曲は以下の通り。録音時期は<フィンガルの洞窟>1957年、<真夏の夜の夢>1967年、<イタリア>1962年。
序曲<フィンガルの洞窟> 作品26
<真夏の夜の夢>の音楽:序曲・スケルツォ・夜想曲・間奏曲・結婚行進曲
交響曲第4番イ長調作品90<イタリア>
こうして並べると、<真夏の夜の夢>と<イタリア>の間に休憩を入れて、そのまま一夜のコンサートプログラムにもなりそうな選曲だ。38歳で没したメンデルゾーンではあるが、いずれも比較的若い時期の作品。<真夏の夜の夢>に至っては、シェイクスピアの作品に触発され、序曲を17歳のときに書いている。確かに<真夏の夜の夢>は若き青年の作品と素直に理解もできるが、<フィンガルの洞窟>は、その渋く深い曲想が20歳にときの作品とはにわかに信じがたい。それはともかく、いずれの曲も初期ロマン派の薫り高き名曲だ。
セルとクリーヴランド管についてよく言われる特質は<真夏の夜の夢>と<イタリア>に顕著。特に<イタリア>は颯爽としたテンポで、音楽いっさい停滞せず、引き締まった響きとビシッと揃ったアンサンブルで辛口に進行する。第1楽章は提示部を繰り返しながら9分50秒と、おそらく数あるこの曲の盤のうち最速の一つではないだろうか。相変わらず各パートは明瞭に分離し、対旋律が浮かび上がる。そして弦楽器群のデタッシュ、木管群のタンギングの頭まで、きっちりと整った演奏が展開する。こういう演奏と聴いたあと、同じ<イタリア>をカラヤン&BPOで聴くと、まったく別世界の表現であることが分かる。カラヤン盤は各パートの分離より全体のマスの響きが重視され、細かな音形やアインザッツは意図的にぼかされる。フレーズは切れ目なくつながり、管楽器群の音のエッジも丸みを帯びる。セル&クリーヴランドとは方向性がまったく異なることを再認識する。
一方<フィンガルの洞窟>ではこうしたセルの解釈が一転。遅めにとったテンポで深々とした表現を聴かせる。<スコットランド>の名盤:ペーター・マーク&ロンドン響盤にカップリングされている同曲のゆったりとしたロマンティックに寄った演奏が10分2秒なの対し、この盤でのセルは10分55秒をかけていて驚いた。やはり<フィンガルの洞窟>が持つ幻想的な曲想に見合ったテンポと解釈なのだと合点した次第だ。
この盤の音源<イタリア>の第1楽章
この盤の音源<フィンガルの洞窟>
パーヴォ・ヤルヴィとhr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)による2012年のライヴ。
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