菊池真知子(G)



先日のセゴビア程ではないが、少し懐かしギタリストの演奏。こんな盤を取り出した。


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(写真右:70年代終盤の現代ギター誌増刊広告ページあった写真。左側の女性は2015年に亡くなったギタリスト奥田紘正氏の娘さんで一時期ギターを弾いていた奥田博子かと…)


菊池真知子(1950-)他が奏でる<ギター名曲集>。シャロン・イスビンの弾くアランフェス協奏曲他とカップリングされたベスト盤。収録曲は以下の通り。

1.アランフェス協奏曲ニ長調 (ロドリーゴ)
2.カプリチオ・アラベ (ターレガ)
3.ダンサ・モーラ (同)
4.前奏曲第1番 (同)
5.同第2番 (同)
6.スペイン・セレナード (マラツ~ターレガ編)
7.3つのメキシコ民謡 (ポンセ)
8.スケルツィーノ・メヒカーノ (同)
9.盗賊の唄 (リョベート編)
10.哀歌 (同)
11.4つのヴェネズエラ風ワルツ (ラウロ)
12.カスティーリャ組曲 (トローバ)
菊池真知子(2,6~12) シャロン・イスビン(1,3~5)
黒岩英臣指揮,東京都交響楽団(1)

ごく普通の音楽愛好家が、ギターの曲でも聴いてみようか、というようなときにチョイスする<名曲集>。この盤もアランフェス協奏曲とギターの定番曲が組み合わされ、選曲としては悪くない。この手の名曲集はもちろんヴァイオリンやピアノにもあるが、一般には入門者向けと見なされ、コアなファンは手に取らないことが多いだろう。しかし、ときに意外な演奏家や名演がリストされていることもある。この盤もそんな位置付けで、菊池真知子のギターが聴けるという理由だけで手に入れたもの。20年ほど前の発売された日本コロンビア廉価盤シリーズの一枚だが、収録曲を変えて現在も出ているかもしれない。

ぼくがギターを弾き始めた70年代初頭、菊池真知子はアイドルというほど軽薄な感じはなかったが、年上のおねえさん的なイメージで、人気と評価が高まっていた時期だった。その後70年代終わりから80年代初頭にかけていくつか録音も残した。その頃ぼくはもちろんギターは弾いていたが、レコードに関してはギターより他のクラシック全般のレコードを手に入れる方が優先し、当時のギターの音盤はほとんど手に入れなかった。この盤も2000年過ぎた頃に、隣り町のCDショップで売れ残り在庫のごとく棚の隅にあったものを手に入れた。

当時の記憶も併せてこの盤の選曲を眺め、確かにメロディアスなスペイン・ラテン物を中心に弾いていたなあとを思い出す。ポンセのスケルツィーノ・メヒカーノは彼女がしばしば取り上げていて気に入り、楽譜を買った覚えがある。この盤は80年代初頭の録音と思われ、すでにDENONがオリジナルのPCM録音を導入していた時期のもの。当時まだ30歳になったばかりの菊池真知子のナチュラルで穏やかな弾きぶりが楽しめる。 どの曲も、スペイン物で当時の奏者にしばしばみられたような崩しやこぶしは控えめ。もちろんたっぷりと歌ってはいるが、常に気品を感じさせる同時に、淡いセンチメンタリズムもあって中々聴かせる。
残念なことに80年代以降、彼女の姿は表舞台から消え、演奏に接することが出来なくなった。その理由について不確かな情報は伝え聞いているが、ここに記すことは控えたい。若かりし頃のこの録音を聴くにつけ、古希を迎えた今ならどんな演奏をするのか、願わくばカムバックを期待したい。


手持ちの盤からアップしてみた。以下の2曲。
ポンセ「スケルツィーノメヒカーノ」


マラッツ「スペインセレナーデ」 最後がブツっと切れいているのは元のCDに起因する。



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グノー 歌劇<ファウスト>バレエ音楽



先日、通勤途上で聴いていたNHKFMでグノー作曲の歌劇<ファウスト>のバレエ音楽が流れていた。何気なく聴いていたのだが、その美しい旋律にあらためて心を打たれ、帰宅後、手持ちの盤を取り出した。


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パリの喜び~小澤征爾/フランス音楽コンサートと題された一枚。小澤征爾指揮ボストン交響楽団による演奏による1986年の録音。手持ちの盤は十年程前にグラモフォンの廉価盤で出たときのもの。収録曲は以下の通り。

シャブリエ:狂詩曲≪スペイン≫
グノー:歌劇≪ファウスト≫-バレエ音楽
 1.ヌビアの踊り
 2.クレオパトラと黄金の杯
 3.ヌビア奴隷の踊り
 4.クレオパトラとその奴隷たちの踊り
 5.トロイの娘の踊り
 6.鏡の踊り
 7.フリネの踊り
トマ:歌劇≪ミニョン≫序曲
オッフェンバック:バレエ≪パリの喜び≫
 序曲、ポルカ、 アレグロ、 ワルツ、 アレグロ・ヴィヴォ、 ワルツ、
 アレグロ・ヴィヴァーチェ・ミステリオーソ・レント、ワルツ・モデラート
 カンカン、ヴィヴォ、 舟歌

音楽にひっかけて人生を語るつもりはまったくないのだが、聴いていて幸せな気分になる音楽がある。シャルルグノー(1818-1893)のこのバレエ曲やいくつかのウインナワルツなどは、その筆頭ではないかと思う。バレエ音楽の多くが当然ながら舞踏の付帯音楽として作られ、従って一般的には主役は踊り、音楽は脇役ということになる。脇役の気安さからか、バレエ音楽はカジュアルで親しみやすく、すんなりと耳に入る音楽が多い。いわゆる絶対音楽とは違って、絵画的様相や物語のイメージも持ちやすい。グノーのこの曲もその典型だろう。

ゲーテの原作に対するイメージをどれほど表現しているかぼくにはよく分からないが、ベルリオーズの作品を待つまでもなく、ときにおどろおどろしいイメージが付きまとう<ファウスト>だが、このグノーのバレエ曲はそうしたイメージとは違った<ファウスト>の一面が表現されているように思う。15分程の組曲の体裁になるが、どの曲を聴いても楽しく、心なごむ。
第1曲<ヌビアの踊り>は冒頭、ヴェルディ<運命の力>序曲を思わせる金管のユニゾンで始まるが、すぐに可憐なメロディーが出てくる。以降も19世紀クラシック音楽の美しい和声感と旋律のオンパレード。フランス風といっていい洗練された響き。それらを効果的に表現した管弦楽技法。これぞクラシック音楽の精華といっていいかもしれない。エキゾティックな<ヌビア奴隷の踊り>。もっとも知られる<トロイの娘の踊り>は以前NHKFM午後のクラシック番組テーマ曲だったし、他の曲もいずれもどこかで聴いたことのあるメロディーだろう。
チェリやヴアントあるいは無伴奏曲で内省的に向き合うもよし。こういう曲を万事ハッピーに聴くもよし…。明日もまた、心穏やか楽しく過ごしたいという気持ちになってくる。


この盤の音源。第1曲<ヌビアの踊り>


同 第5曲<トロイの娘の踊り> 30秒過ぎからお馴染みのメロディが。


第1曲<ヌビアの踊り>をバンドリアで弾いているオジサン。


バレエ舞台はこんな感じのようです。



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セゴビアSPコレクション



最近はギターの新録音を手にすることもほとんどなくなり、以前から手元にある古い盤を聴き返すことが多い。60年代以前の多くの録音は、現代の技術レベルからすれば見劣りするものが多い。スタジオでの正規録音でもミスタッチが混じることは稀ではなかった。それでもそうした古い録音に手が伸びる理由は、個性的な音色と演奏スタイル(好き嫌いは横に置くとして)が色濃く残っているからだ。ギターの限らず、他の楽器やオーケストラでも同じようなことが言われること多い。その理由はここに連ねるまでもないだろう。ことクラシックギターに関して、やはりアンドレス・セゴビア(1893-1987)の個性は突出している。先日も彼のLP盤を聴いたのを思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。


202007_Segovia_SP.jpg


セゴビアSPコレクションと称する2枚組CD。80年代の終わりにワーナーパイオニアから出た例のセゴビアコレクション全16巻の番外編として1989年にリリースされた。時すでに第2次大戦真っ只中の1944年1月10日から29日までの3週間に渡って米デッカ(MCA)のために録音したすべての曲が収められている。少々長くなるが収録曲を以下に記しておく。

CD1
1. 第1番 ハ長調作品6の8 /ソル
2. 第2番 ハ長調作品35の13 /ソル
3. ソナタL.352 K.11 /スカルラッティ
4. メヌエット /ラモー
5. 第5番ロ短調作品35の22 /ソル
6. 第4番二長調作品6の1 /ソル
7. 新しいアイルランドの調べ /パーセル
8. メヌエット /パーセル
9. ジグ /モルガン
10. ガリアード /ダウランド
11. アンダンテ /ハイドン
12. 第3番イ長調作品6の2 /ソル
13. 第6番ニ長調作品35の17 /ソル
14. 第9番イ短調作品31の20 /ソル
15. 第10番イ長調作品31の19 /ソル
16. 聖母の御子 /カタルーニャ民謡
17. アメリアの遺言 /カタルーニャ民謡
18. 第19番変ロ長調作品29の13 /ソル
19. サラバンド /ポンセ
20. ガヴォット /ポンセ
21. メヌエット /ハイドン
22. 第12番イ長調作品6の9 /ソル
23. 第15番ニ短調作品35の16 /ソル
24. 第8番ニ短調作品6の9 /ソル
25. 第11番ホ長調作品6の3 /ソル
26. 第20番ハ長調作品29の17 /ソル
27. ダンサ・モーラ /タレガ
28. メヌエット /タレガ
29. ブルガーサ /トローバ
30. アルバーダ /トローバ
31. アラーダ /トローバ

CD2
1. グラナダ /アルベニス
2. スペイン舞曲第10番 /グラナドス
3. パバーナ第6番 /ミラン
4. パバーナ第4番 /ミラン
5. パバーナ /サンス
6. ロマンス /パガニーニ ポンセ編
7. スペイン舞曲第5番 /グラナドス
8. 朱色の塔 /アルベニス
9. トナディーリャ /グラナドス
10. セビーリャ /アルベニス
11. エントラーダとジーグ /ド・ヴィゼ
12. ジーガ・メランコリ /セゴビア
13. ブーレ /ド・ヴィゼ
14. メヌエット
15. カンツォーネ
16. サルタレッロ

こうしてみると後年の再録音やセゴビア編の楽譜でもお馴染みのオハコが並んでいる。CD1ではソルの練習曲(特にセゴビア編20の練習曲)が、そしてCD2ではスペインものが過半を占めている。個々の曲の演奏や解釈は後年、60年代以降の再録音のものに比べ、総じてテンポが速いものの基本は大きく変らない。その解釈については、現代的な視点でみると異論を免れないものではあるが、それよりもこの盤でもっとも注目すべきは、セゴビアの奏でるギターの音色そのものだ。使用楽器はハウザーI世(独1882-1952)。そしてまだナイロン弦はなく、ガット弦が張られていた時期にあたる。つまり、20世紀初頭のスパニッシュギターを範にしたドイツ製ハウザーギターとガット弦の音がよい条件で聴けるアルバムということになる。

SP盤用の録音ということではあるが、1940年代半ばの録音としては音の状態がいい。もちろんSP盤から<板起し>をしたわけでないので、SP盤再生に付いてまわる針音はない。ギターの目前にマイクを置いて録られた音のようで、しかもほとんど残響のないデッドな録音のため、セゴビアのタッチに反応するギターの音色が生々しく聴こえてくる。ハウザーギターとガット弦による音は甘く太く、同時にカリッとした立ち上がりの良さも兼ね備えている。ヴィブラートのかかり具合も現代のギターよりも強い。一方で、サステインは短めでコロコロした音色。6弦低音の音も特徴的で、低めのウルフトーンに支えられ、6弦ローポジションの音がドンッと響く。

94歳で亡くなる直前まで現役であったセゴビア(1893-1987)にとって、録音当時の50歳はまだまだ青春だったかもしれない。時折聴かせる技巧の切れは素晴らしく、また特徴的なタッチとそこから生まれるセゴビアトーンは、後年の録音よりも一層個性的。現代の多くの名手と違って、音を聴いてすぐにそれを分かるセゴビアは、やはりワンアンドオンリーの存在だ。


この盤と同じ音源によるグラナドス<トナディーリャ=ゴヤの美女>


同 アルベニス<朱色の塔>


没後30年の2017年夏、NHK・Eテレでのセゴビア特集。



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エルガー「エニグマ変奏曲」



相変わらずの雨っぷり。連休ど真ん中ながら夏休み感ゼロ。そういえば去年も梅雨明け遅かったなあ…一昨年は早くて六月末に明けたっけ…と、年寄じみたことをつぶやきながら、さて、何かじっくり聴こうかと、こんな盤を取り出した。


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イギリス近代を代表する作曲家エドワード・エルガーの傑作「エニグマ変奏曲」。フランスの大家;ピエール・モントゥー(1875-1964)と、彼と親しい関係にあったロンドン交響楽団による1958年の録音。手元には80年代に廉価盤として再発されたときのものと、60年代にデッカ盤がビクターからリビングステレオシリーズで出ていたときのものがあるが、きょうはそちらの国内初出ビクター盤を取り出した。

第1曲の主題の提示から身体と心の芯にまで染み渡るような響き。充実した管弦楽というのは、まさにこういう曲のことをいうのだろうと思う。主題は意味深く、しかし過度に深刻にならない適度な重みを持つ。弦楽を主体としたオーケストラレーションも常に中庸の節度を保ち、厚く、深く、音を重ねていく。単独でも演奏されることの多い第9変奏「Nimrod(狩猟家=独Jager)」のアダージョは、数ある管弦楽曲の中でも取り分け優れた曲。英国の出版社ノヴェロ社のいたA.J.Jager氏の物静かな人柄を表したという佳曲だ。エルガー自身を描いたとされる終曲では金管群の充実した響きも加わり、壮大なエンディングとなる。この曲の構成・成り立ちについては、ネットの情報でも参考にされたい。1958年の録音ながら栄光のデッカサウンドは素晴らしく、中高音の輝くしい音色と解像度、低域の充実、いずれもこれ以上は必要ないのではと思わせるほどだ。

エルガーにはこのエニグマ変奏曲のほか、チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲など、充実した作品がある。<愛の挨拶>にとどまらずに聴いてほしい曲だ。併録されているブラムースのハイドンの主題による変奏曲も名演。モントゥー&ロンドン響は、弦楽や木管のよくブレンドされた響き、明るい音色ながら突出せずバランスのいい金管群。リズム感やアインザッツも十分ドイツ的で、このブラームスの名曲に相応しい。同コンビは同じブラームスの交響曲第2番でも名演を残している。


この盤の音源。ジャケットも同じもの。


単独で尾演奏されることが多い有名な第9変奏「ニムロッド」。 コリン・デイヴィス(1927-2013)とロンドン響@2004年京都


2台ピアノ用の楽譜付き音源。



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アントニオ・ラウロ「ギターのためのベネゼエラ・ワルツ集」



明日から連休という夜。先程までギターを取り出し練習。スケール・アルペジオ・カルカッシ25の練習曲から20~25番のルーチンをこなし、ひと息ついて音盤タイム。たまたま目が合ったこの盤を取り出した。


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ベネゼエラの作曲家アントニオ・ラウロ(1917-1986)が作ったギター作品集。アダム・ホルツマン(1960-)が弾くナクソス盤の一枚。録音は1998年。収録曲は以下の通り。

セイス・ポル・デレーチョ,マリア・カロリナ,エル・マラビーノ,マリア・ルイサ,アンゴストゥーラ,オクマレよさらば,パペロン,ネリー/ベネズエラ組曲/エル・ニーニョ/4つのベネズエラ風ワルツ/エル・ネグリート/ラ・ガティーカ/トリプティーコ/ベネズエラ民謡による変奏曲/スライ/カローラ

アルバムタイトルに「ワルツ集」とあるが、ヨーロッパの伝統的ワルツとは当然趣きが異なる。ベネズエラという土地柄といえばいいだろうか、いわゆるラテン系の民族的テイストをもったもの。急緩取り混ぜ、収録曲25曲の多くがそうしたラテン系ワルツで構成されている。ギター弾きには「4つのベネズエラワルツ」が有名で、特にその中の第2番や第3番「ワルツ・クリオロ」などは、アマチュア中級以上の輩なら一度はさらったことがあるだろう。いずれの曲のキャッチ―なメロディーが身上。長調曲では明るく楽天的に、短調曲では哀愁を帯び、こういう曲を聴くとギターとラテン民族系音楽の相性の良さを再確認する。実際に楽譜を広げて弾いてみると、音楽そのものは分かりやすいものの、技巧的には中々難しい。上記2曲は比較的取っ付きやすいが、明確なアクセントに加え、4分の3と8分の6が交錯し、それを意識し過ぎるとメロディーラインがぎこちなくなるなど、流麗に聴かせるのは難しい。 このナクソス盤はそんなラウロのギター曲をまとまって聴けるということで貴重。アダム・ホルツマンの演奏も美しい音とラテン訛りのない端正な演奏で好感がもてる。


この盤の奏者アダム・ホルツマンの弾く「エル・ニーニョ」


「アンゴストゥーラ」


歌謡調ワルツとは一線を画す、ラウロの創作意欲が感じられる「ベネズエラ組曲」



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C・ツィマーマンのショパン・ピアノ協奏曲



週明け月曜日。いつもの一日が終わる。帰宅後しばらくして一服。何気なく音盤棚を眺めていたら、こんな盤と目が合い、久しぶりに取り出した。


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クリスチャン・ツィマーマン(1956-)がポーランドの若手演奏家350名の中から自らが選んで組織したオーケストラ(ポーランド祝祭管弦楽団)を弾き振りして、ショパンの協奏曲第1番と第2番を収めた盤。リリースされたのは1999年秋だから、もうふた昔前のことになってしまった。この演奏を最初に聴いたのは車で移動中のFM放送だったと記憶しているが、思わずブレーキを踏んで車を路肩に付けて聴き入ったほどだ。

これほどまでに微に入り細をうがつオーケストラパートの演奏を聴いたことがない。濃厚な表情付け、弦はポルタメントを伴ってすすり泣くように歌い、木管群は深い寂寥感を伴う。アウフタクト大きく引き伸ばされ、その音を受けて次のフレーズではほんの1、2小節の間にテンポは大きく揺れる。ショパンの協奏曲におけるオーケストラパートはピアノソロに比べ、ほんの添え物とさえ言われることが多いが、この演奏を聴くと、結局は指揮者の料理の仕方一つで何とでもなるということを痛感する。そのベースになっているのは、ツィマーマンの同郷であるショパンに対する深い思いだろう。ピアノの妙技を前面に出し、通り一遍の表情付けで破綻無きよう合わせるだけのオーケストラパート、そんな凡百の演奏に一石を投じる稀代の名演だ。


この盤の簡易スコア付き音源。第1楽章だけでも24分を要している。冒頭のアウフタクトの尋常ならざる入り。00:11秒の下降音形でのポルタメント。00:25での休止符の引き伸ばし…スコアの細部を見直し、オケに徹底させた結果だ。00:50過ぎからのホ短調の主題「北の宿から=あなたかわりはないですか~」を切々と歌う。01:30過ぎからのルバートも絶妙。
ギター弾きなら楽器抱えてオケパートをなぞるのも楽しい。調性もギターで扱いやすく、初見大会には絶好だ。


この曲の室内楽版。編曲は複数あるようだが、以下の音源はコントラバス入り弦楽五重奏のバックによるもの。



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A・セゴビア M=トローバ「スペインの城」



長引く梅雨。週末土曜日の昼下がり、宅内野暮用をこなしながら、こんな盤を取り出した。


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久々にアンドレス・セゴビア(1893-1987)のLP。この印象的なジャケットの国内ビクター盤は70年代になってからセゴビアの新譜として発売された。A面にダウランドやヴァイスの編曲物が6曲。B面にはモレノ=トローバ(1891-1982)「スペインの城」とグリークの編曲物が2曲収録されている。

この盤の聴き物はもちろんトローバの「スペインの城」だ。このトローバの録音は1969年で、セゴビアとしてはかなり遅い時期の録音。手元には80年代後半にセゴビアのMCA録音をCDで復刻した「セゴビア・コレクション」の中の同じ盤もあるが、曲の構成がこの国内盤LPとは異なる。

トローバの曲はいずれも珠玉の名品ともいうべき歌にあふれる曲で、それを作曲者トローバから献呈された同世代のセゴビアが美しく歌い上げている。第1曲トゥレガーノや第3曲マンサナーレス・デル・レアールでは快活なテンポの曲想にあちこちに、ときどきキメのビブラートの効いたセゴビア・トーンが響き渡る。第2曲トリーハ(悲歌)や第4曲モンテマヨールは、ギターの特性を生かした音形やポジショニングととりながら、終始美しいメロディーが続く。 あらためてセゴヴィアの演奏を聴いてみると、若い頃には鼻について好感が持てなかったビブラートやポルタメントなど、19世紀的ロマンティシズムに寄った語り口が、何とも心地よく響く。テンポやアーティキュレーションなど、曲の解釈もいたって中庸で安心して聴ける。この曲は中級から上級にかけてのアマチュアギター弾きには格好の曲で、以前参加したmixi仲間による発表会でも何人かがトリーハやモンテマヨールを気持ち良さそうに弾いていたのを記憶している。

この盤の音源。トローバ「スペインの城」 8曲の小品から成る。


セゴビア壮年期の演奏。トローバ<ファンダンギーリョ>。録音に少々難有り。


同じく<ファンダンギーリョ>。おそらくこの盤を録音された60年代終わり、70歳後半のものを思われる。セゴビア・タッチと切れのある技巧はまだまだ健在。 再生ボタンをクリックすると「動画は再生できません」と出るが、下線の「YouTubeで見る」をクリックすると、YouTubeサイトで飛んで再生が始まる。



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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