G・セルのメンデルスゾーン
梅雨入りから三週間余。じわじわと気温上昇中。昼前まで宅内野暮用こなし汗をかく。昼から外出。夜半近くになってようやく一服。やれやれと思いつつこんな盤を取り出した。

ジョージ・セル(1897-1970)指揮クリーヴランド管弦楽団によるメンデルスゾーン作品を集めた一枚。数年前に出たソニークラシカルの廉価盤シリーズ:名盤コレクション1000の中のもの。収録曲は以下の通り。録音時期は<フィンガルの洞窟>1957年、<真夏の夜の夢>1967年、<イタリア>1962年。
序曲<フィンガルの洞窟> 作品26
<真夏の夜の夢>の音楽:序曲・スケルツォ・夜想曲・間奏曲・結婚行進曲
交響曲第4番イ長調作品90<イタリア>
こうして並べると、<真夏の夜の夢>と<イタリア>の間に休憩を入れて、そのまま一夜のコンサートプログラムにもなりそうな選曲だ。38歳で没したメンデルゾーンではあるが、いずれも比較的若い時期の作品。<真夏の夜の夢>に至っては、シェイクスピアの作品に触発され、序曲を17歳のときに書いている。確かに<真夏の夜の夢>は若き青年の作品と素直に理解もできるが、<フィンガルの洞窟>は、その渋く深い曲想が20歳にときの作品とはにわかに信じがたい。それはともかく、いずれの曲も初期ロマン派の薫り高き名曲だ。
セルとクリーヴランド管についてよく言われる特質は<真夏の夜の夢>と<イタリア>に顕著。特に<イタリア>は颯爽としたテンポで、音楽いっさい停滞せず、引き締まった響きとビシッと揃ったアンサンブルで辛口に進行する。第1楽章は提示部を繰り返しながら9分50秒と、おそらく数あるこの曲の盤のうち最速の一つではないだろうか。相変わらず各パートは明瞭に分離し、対旋律が浮かび上がる。そして弦楽器群のデタッシュ、木管群のタンギングの頭まで、きっちりと整った演奏が展開する。こういう演奏と聴いたあと、同じ<イタリア>をカラヤン&BPOで聴くと、まったく別世界の表現であることが分かる。カラヤン盤は各パートの分離より全体のマスの響きが重視され、細かな音形やアインザッツは意図的にぼかされる。フレーズは切れ目なくつながり、管楽器群の音のエッジも丸みを帯びる。セル&クリーヴランドとは方向性がまったく異なることを再認識する。
一方<フィンガルの洞窟>ではこうしたセルの解釈が一転。遅めにとったテンポで深々とした表現を聴かせる。<スコットランド>の名盤:ペーター・マーク&ロンドン響盤にカップリングされている同曲のゆったりとしたロマンティックに寄った演奏が10分2秒なの対し、この盤でのセルは10分55秒をかけていて驚いた。やはり<フィンガルの洞窟>が持つ幻想的な曲想に見合ったテンポと解釈なのだと合点した次第だ。
この盤の音源<イタリア>の第1楽章
この盤の音源<フィンガルの洞窟>
パーヴォ・ヤルヴィとhr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)による2012年のライヴ。
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