暑さ癒えぬなか、きょうで八月も終わり。月並みだが、日々あっという間に過ぎていく。ひと月後には涼風が吹き抜けているのだろうか…。 さて、週明け月曜のきょうもいつも通りの一日が終わった。ひと息ついて、冷した緑茶を飲みながら一服。こんな盤を取り出した。

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920-1995)の弾くショパン。1971年ミケランジェリ51歳のときの録音。この盤が気に入っている理由がある。それはショパンのマズルカがミケランジェリの演奏でまとめて聴けることだ。ぼくはほとんどマズルカ・フェチといっていいくらいマズルカという形式が好きだ。同じ三拍子系ながら、ポーランドの民族舞踏であるマズルカは他の三拍子系とは趣きを異にし、より民族的で感情の起伏に富む。取り分けショパンのマズルカのうち、短調の作品はいずれも深いセンチメンタリズムにあふれている。収録曲は以下の通り。
<A面>
1. マズルカop.67-2 /2. 同op.56-2/3. 同op.67-4 /4. 同op.68-2 /5. 同op.68-1
6. 同op.33-1 /7. 同op.30-3 /8. 同op.30-2 /9. 同op.33-4 /10. 同op.68-4
<B面>
11. 前奏曲嬰ハ短調op.45
12. バラード第1番ト短調op.23
13. スケルツォ第2番変ロ短調op.31
マズルカのいくつかに加え、バラードの1番とスケルツォの2番という選曲がまたいい。最近の愛聴盤であるアファナシエフ盤は、その深く瞑想する表現が素晴らしいが、このミケランジェリの盤は一瞬のインスピレーションによる天才的な感覚が光る。総じてテンポはやや遅めながら、曲の中でしばしば加速減速があるので、実際のテンポよりも動きを感じる。フォルテシモも余裕があり、終始美しい音色だ。
持ち前のよくコントロールされた音で楚々と奏でていく。粒の揃った弱音で消え入るような旋律を繰り出し、すべての指が完璧に一致したタイミングで和音のフォルテを響かせる。10曲収められているマズルカのうち、もっとも規模の大きい第25番作品33の4、そしてショパンが書いた最後のマズルカである第49番作品68の4がとりわけ素晴らしい。
この盤の音源。マズルカ作品67-4。
ポーランドのギタリスト:イェジ・ケーニッヒによるマズルカ作品67-4。 F・タレガ以来、ショパン作品のギター編曲はいくつか存在するが、このケーニッヒはかなりの数の自編演奏をYOUTUBEにアップしている。
この盤の音源。バラード第1番ト短調。
バラード第1番。1962年のミケランジェリ。テレビ収録だろうか。
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先日の日曜日、NHK:Eテレでサン=サーンス「動物の謝肉祭」の演奏を聴いた知人からメールがあった。何でもナレーション入りで同曲を聴いたのは初めてで、中々興味深かったとのこと。「動物の謝肉祭」かあ…そういえば小澤&BSO盤のCDがあったなあと思い出しつつ、音盤棚をサーチしていると、同じサン=サーンスのこの盤と目が合ったので、それではと取り出した。

エルネスト・アンセルメ(1883-1969)とスイスロマンド管弦楽団(OSR)によるの例のボックスセットのフランス音楽編15枚目。収録曲は以下の通り。
・サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 Op.78「オルガン付き」
・サン=サーンス:オンファールの糸車 Op.31
・ベルリオーズ:「ファウストの劫罰」Op.24より
・ベルリオーズ:「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲
今夜はこの中からサン=サーンスの交響曲第3番を選んでプレイボタンを押した。
オルガン付きの交響曲として有名なこの曲。かつては何かキワモノ的でほとんど聴くことも無かったのだが、近年になってその良さを感じるようになった。実質四つの楽章に相当する構成を持つが、前後二つずつの部分を第1楽章と第2楽章として集約している。よく取り上げられるのは最終部の派手なドンパチだが、前半第1楽章の第1部、第2部も充実している。
サン=サーンス(1835-1921)は<フランスのメンデルスゾーン>とも言われるが、この第1部など聴いていると、8分の6拍子にのって展開される美しいメロディーや和声に、メンデルスゾーンの第3番<スコットランド>や<フィンガルの洞窟>に通じるものを感じ、フムフムと納得する。第1楽章の第2部<ポコ・アダージョ>は冒頭オルガンが奏する和音にのって弦楽群が美しく歌う。消え入るような終結部も印象的だ。後半第2楽章はそれまでの静的だった曲想から転じて、一気に音楽が動き出す。スケルツォのトリオに相当する箇所からはピアノ連弾が加わり、さらにプレストに転じると、トロンボーン、チューバ、コントラバスなどの低音楽器が重層的に主題を出して一層音楽は盛り上がっていく。この辺りから最後まではこの曲の真骨頂の展開が続く。
デッカサウンドの全盛期1962年の録音。マルチマイク録音による明瞭な管弦楽の分離、部屋を揺るがすようなオルガンのペダル音など、この曲を聴く醍醐味に相応しい。手元には70年代前半に出ていたLP盤もあるが、CDに勝るとも劣らない高音質。 アンセルメとOSRの演奏は録音マジックに支えられた成果だったと言われることも多いが、半世紀前の当時、演奏・録音ともこれ以上のものは望むべむもなかっただろう。取り分けこの盤の音質は素晴らしい。敬意を表すべき名盤だ。同時に、こういう曲になるとオーディオ的観点からだけでなく、音楽を適確にとらえるためにも、オルガン低音の基音がしっかり出るシステムが必須と感じる。
この盤の音源。交響曲第3番第1楽章前半:Adagio-Allegro moderato
同 第2楽章前半:Allegro moderato-Presto…終わるとそのまま後半がオルガンの響きと共に始まる。
パーヴォ・ヤルヴィとパリ管によるライヴ。会場はパリ管の新しい本拠地フィルハーモニー・ド・パリ。
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先日、都内での仕事を少し早めに切り上げ、上野・入谷にあるギターショップ「アウラ」へ。少し前にKEBONY材という新しい素材を使ったギターが完成したとのことで、その検分でお邪魔した。アウラへは昨年夏に製作家田邊氏に誘われて本家トーレス極上品の検分をして以来だ。
表板は斑入りのスプルース。横裏板にKEBONY材。ヘッドもKEBONY材張り。




KEBONY材というのは、ごく簡単にいうと針葉樹を加工して広葉樹のような材質に変えるというもの。下記HPによれば、アルコールを加圧含浸させて加熱・乾燥処理をすることで、軽く柔らかな針葉樹から重く硬い材質が得られるという。
https://www.barcelona-trade.com/brands/kebony.html
広葉樹、特に熱帯地域に生育するローズウッド系の木は、緻密・堅牢で美しい木目を持つことから古来、家具や調度品、楽器等の材料として広く用いられてきた。とりわけギターにおいては、横・裏に使う材としてブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)を始め、中南米産ローズウッドやインディアンローズウッド等が使われている。
一方でそうした樹木の多くは生育に年月を要し、多用することイコール資源の枯渇につながり、すでに90年代初頭からハカランダ等はワシントン条約の対象として伐採や移動に制限がある。ギターの横裏材としてはメイプルやシープレス(糸杉)なども使われるが、ことクラシックギターに関しては独特の美しい木目をもつローズウッド系の材が、やはり珍重される。材料枯渇は当然価格高騰も意味し、同じ仕様のギターでも通常のインディアン・ローズウッドと使ったものが50万円とすると、マダガスカル・ローズウッド仕様は70万、ハカランダ仕様は100万といった具合に、まるで出世魚のごとく価格アップする。
そうした状況を受けて代替材の検討も種々行われてきたが、今回、先のリンクにある建材等で実績が出来つつあるKEBONY材を使ってクラシックギターを作るという試みがアウラで行われた。クラシックギターとしてはおそらく業界初。詳細は以下のリンクに詳しい。
https://www.auranet.jp/salon/report/kebonyproject/
さてそのKEBONY材のギターや如何に…
出来上がった楽器の外観は通常のものと変わったところはない。原材料の大きさから、裏板は通常の2枚接ぎには出来ず、4ピース構成になっているが、これは古くから使われる手法。横裏材の色合いや木目の調子もあまり違和感なく、写真で見るより実物の方がずっと好印象だ。心配していた加工性も問題ないようで、伝統的な手法での曲げや切断、ニカワによる接着やセラックニスによる塗装も問題なく出来上がったとのこと。基本構造はハウザースタイルでネックもVジョイント。今回使ったKEBONY材の原材料はメイプル。表板は良質なスプルース。塗装はセラック。
肝心の音は…これもまったく違和感なかった。言われなければ、あるいは言われても、元の材料が軽く柔らかい針葉樹を加工して作った材とは思わない。横裏材違いで2台作り、比較しているわけではないので確定的なことは言えないが、加工品という言葉から連想するネガティブな感じはまったくなかった。中高音は反応よく立ち上り、低音のレゾナンスはそれほど低くはないが、6弦ローポジションのボリューム感も十分だった。
今回さらに驚いたのが、この1本のギターをアウラに関係している製作家6名が分業して作ったということ。サウンドホールからのぞき込むと、6名分の製作家ラベルが貼ってある。こんな楽器は初めてだ。この6名はいずれもスペイン流の伝統工法の製作家。また日頃からアウラを核にコミュニケーションもしている間柄で、言わばチーム・アウラという体制で臨んだことも奏功したようだ(6名の製作家がそれぞれ何を担当したかはここでは伏せておく)。
これでコストもグッと下がればいいことづくめだが、コストに関して現時点ではまだ「現状と同等程度」らしく、資源枯渇・熱帯雨林保護という観点では寄与するものの、実際の材料コストへの反映には、よりボリュームの大きい建材用途等での採用が更に進み、加工プラントもより量産対応が出来るようになる必要がありそうだ。また、今回の完成品は当面非売品扱いで、今後動画撮影等行い、より多くの人に周知させたいとのことだった。アウラ石川社長の発案で始まった今回のプロジェクト。今後の展開に期待したい。
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先日聴いた「ジュリアン&ジョン」で思い出し、きょうはこんな盤を取り出した。

モダンギター二重奏の元祖ともいうべきプレスティ&ラゴヤの盤。音盤棚をさっと見回したところ写真の2枚が見つかった。1枚は「プレスティ=ラゴヤ クラシックギター名曲集」と題された「豪華見開きジャケット」(…と帯に書いてある!)のフィリップス盤(日本ビクター発売)、もう1枚は「二つのギターと弦楽のための協奏曲集」と題されたフォンタナ・レーベル(日本フォノグラム発売)の廉価盤。前者は60年代終わりのもの、後者は70年代半ばのもの。共に手に入れたのは十数年前のことで、例によって出張先の大阪梅田の中古レコード店で見つけたはずだ。
イダ・プレスティ(1924-1967)とアレクサンドル・ラゴヤ(1929-1999)のデュオコンビは50年代から活動を開始し、プレスティが亡くなる1967年まで多くのコンサート、録音で活躍した。ぼくがクラシックギターを始めたのが70年初頭だから、二人の活躍をリアルタイムで知っているわけではない。ただ当時から睦まじい夫婦によるギターデュオとして、その録音は度々FMで流れ、雑誌にも載っていたので、親しみをもって接してきた。残された録音も多く、数年前にかつての録音がまとまって復刻された。
手元の日本ビクター盤にはファリャ、アルベニス、グラナドス等の近代作品の編曲物が、また日本フォノグラム盤にはハイドン、ヴィヴァルディ、マルチェルロらバロック期の協奏曲が収められ、クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ管弦楽がバックと付けている。もちろん協奏曲といっても原曲はギターのためではなく、マンドリン(ヴィヴァルディ)やオーボエ(マルチェルロ)のために書かれている。ハイドンの曲が少し珍しく、リラ・オルガニツァータ(手廻しオルガン風の楽器)のために書かれたもの。

ギター用の書かれたオリジナルの二重奏曲としては、19世紀古典ギター隆盛期に書かれた多くの作品があって、このコンビもその中からフェルナンド・ソルやフェルディナンド・カルリなどの定番作品も録音している。しかし、このコンビあるいは以降「ジュリアン&ジョン」を含め、モダンギターによる二重奏が愛好家に取り上げられ、一般の音楽ファンにも親しまれるようになったのは、やはり編曲物があってのことだろう。特に近代スペインのファリャ、アルベニス等の編曲物はギター用のアレンジによく馴染み、ギターの特性が生かされるものが多い。特にこのコンビの演奏表現を聴くと、感興の乗った自在な弾きぶりや軽快な指さばきなど、こうした近代曲のアレンジがよくあっているように感じる。一方で、バロックからの編曲などは、ギター愛好家にはもてはやされるが、純粋に音楽として聴くにはギターである必然性はあまり感じない。またソルやカルリといった19世紀のギターオリジナル作品であれば、今日のように当時のオリジナル楽器(またはそのレプリカ)を使った、よりオーセンティックな演奏の方が好ましく感じる。
このコンビの演奏からは、50年代から60年代という時代性を感じると同時に、モダン楽器を使った今日のクラシックギターおよそ百年の歴史の中で誕生した、モダン楽器によるギター二重奏という形式の一つの完成形がすでにあるように感じる。
ファリャ「スペイン舞曲第1番」
ファリャ「火祭りの踊り」
ハイドンの協奏曲第1楽章
こちらがハイドンのオリジナル「2つのリラ・オルガニツァータのための協奏曲ト長調」(但しオルガン使用)
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週末日曜日。淡々と過ぎゆく前期高齢者の夏。ああ、青春時代はあの夏の日は何処へ…
などと、馬鹿な感慨にふけりつつ、青春の響きを感じさせてくれそうな曲を聴こうかと、こんな盤を取り出した。


ルドルフ・ケンペ(1910-1976)がBBC交響楽団を振った演奏。46年前のちょうど今頃1974年8月30日、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音。1974年8月か…青春真っ只中、大学1年の夏だったなあと思い出したついでに、Wikipediaでその年の8月の出来事をひろってみると、こんな具合だ。
8月8日 ウォーターゲート事件でニクソン米大統領辞任。フォード副大統領が大統領昇格。
8月11日 山形空港の開港10周年記念のイベントでスカイダイビング死亡事故発生。
8月15日 ソウルで朴大統領狙撃事件(文世光事件)。
8月15日 津川雅彦長女誘拐事件(翌8月16日に誘拐犯が逮捕され、人質は保護)。
8月19日 第56回全国高校野球選手権大会は千葉・銚子商業高校が大会初優勝。
8月28日 神奈川県平塚市でピアノ騒音殺人事件。
8月29日 『ベルサイユのばら』が宝塚大劇場で初演(大ヒットになり、以後宝塚歌劇団の代表作の一つに)。
8月30日 東京・丸の内の三菱重工業本社で時限爆弾爆発(三菱重工爆破事件)。
呑気な学生時代で世情にも疎かったろうが、いくつかの出来事は記憶にある。津川雅彦長女の誘拐時間、朴大統領狙撃、銚子商業の優勝(このときの三塁手がのちの巨人:篠塚だった)、当地から出場した前橋工業高校が準決勝まで進み、優勝した銚子商業に敗れたっけ、そのときの前橋工業エースが向田佳元。その後早大~富士重工と進み社会人野球でも活躍したなあ、三菱重工本社爆弾爆発…丸ノ内が騒然となった。
閑話休題。
さてこの盤。しばらく前、といっても二十年近く前だが、BBCの放送録音ライヴラリーからCD化されたシリーズ中の1枚で、ブラームスの4番とシューベルトの5番が入っている。そのうち、きょうはシューベルトを聴いている。これまでもシューベルトの5番は何度か記事に書いている。何よりシューベルトの交響曲の中でももっともお気に入り一曲だからだ。全4楽章がシンプルながらもそれぞれ独自の美しい歌にあふれる。ぼく自身は「未完成」や「ザ・グレート」より気に入っている。穏やかで爽やかな曲想で美しい歌に満ち、和声の移ろいも程よく機知に富む。「青春」そのものだ。。
ケンペとBBC響の演奏は横へ流れるフレーズが滑らかで美しいし、第1楽章などはメリハリも効いていて中々若々しい演奏だ。もっとも音色感はやや渋めのよくブレンドされた響きで、流麗ではあるが軽い感じはない。低弦群も充実した響きでヨーロッパの伝統を感じる。箸休め的になりがちな第3楽章メヌエット(実質スケルツォ風だが)なども聴きどころの連続で飽きることがない。
この盤の音源。全楽章。
以下はフランスの指揮者マルク・ミンコフスキーと彼が設立した<ル・ミュジシャン・ドゥ・ルーブル>の演奏で全曲。バロック・ファゴット出身の彼らしく、古い形式の楽器を使いオケのピッチも低め。しなやかかつフレッシュに歌う。
第1楽章はソナタ形式のお手本。ごく短い導入句ののち第1主題の提示(0:12~)、続いて第2主題の提示(1:14~)。提示部が2:08に終わり、繰り返しで冒頭へ戻る(~4:11)。4:12から経過句を経て展開部へ。第1主題を様子を探るように繰り返し、4:30前後から本格的に展開が動き出す。展開部はごく簡素で、5:06には再現部となって第1主題が奏される。
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先日訃報に接したジュリアン・ブリームで思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。

ジュリアン・ブリーム(1933-2020)とジョン・ウィリアムス(1941-)によるギター二重奏曲集。かれこれ40年以上も昔のことだが、当時人気のギタリストであったこの二人、ブリームとジョンそれぞれが属するレーベルの枠を超え、ギター二重奏のレコードを出して話題になった。「ジュリアン&ジョン」と題したこの盤だ。第1作が好評で2作目もすぐに出た。手持ちの盤は第1作が米RCA盤、第2作が国内RVC盤。
70年代初頭までクラシックギターの二重奏といえば、プレスティ&ラゴヤくらいしか知られていなかった。そこへ当時のトップ二人が二重奏をするということで注目を集めた。個性のまったく違う二人。ソルやカルリといった19世紀古典ギター隆盛期の二重奏オリジナル曲はもとより、エミリオ・プジョールが編曲したアルベニスやグラナドス、ブリーム自身がアレンジしたラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」など多彩な選曲も奏功した。2本のギターを効果的に使っていて、二重奏ってこんなに素晴らしいのかと感心したものだ。 ぼくも学生時代には、このレコードの収められているソルの「アンクラージュマン」やカルリの「ラルゴとロンド」などを友人と合わせた思い出がある。独奏楽器と見られがちなギターだが、スキルが同程度の相棒を見つけ、こうした二重奏を楽しむのもギターの醍醐味の一つだ。
ファリャ「スペイン舞曲第1番」
フェルナンド・ソル「アンクラージュマン」作品34
その後録音されたソル「幻想曲」作品54bis
以下は同曲のライヴ映像。二人の弾きぶりはよくく分かるが、録音レベルが少々低く聴きにくいのが残念。
https://youtu.be/1gSeI9VoKew
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週半ばの水曜日。午後から霞ヶ関某庁にて仕事。予定通り終了。暑さの中の移動で汗だくに。やれやれ気分で帰宅してようやく一服。部屋を冷やしてアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。

アンネ=ゾフィー・ムター(1963-)によるモーツァルト協奏曲集。彼女のデビュー盤。バックは言わずと知れた、ムターを見出し世に送り出したカラヤン指揮のベルリンフィル。1978年フィルハーモニーでの録音。録音技師にはカラヤンの耳といわれた、お馴染みギュンター・ヘルマンスの名がある。
久々に聴いたのだが、何という安定感だろうか。カラヤンが主導したと思われる中庸なテンポ、ベルリンフィルのよくブレンドされた響き、そしてムターの14歳とは思えない成熟して落ち着き払ったソロ。独墺あるいは中欧の伝統的な響きと解釈といったらいいだろうか。昨今、こうした落ち着いたモーツァルトはもう聴けないかもしれない。ピリオド奏法、オリジナル回帰、それぞれに主張あってのことだろうが、18世紀当時からの伝統、そこに19世紀末から20世紀初頭のロマンティックな解釈がのり、更にカラヤンのような20世紀の新しい旗手によりリフレッシュされ…そうした流れの結末にあるような演奏だ。
ムターは14歳のときこの盤で世に出て以来、スター街道を走ってきた。ぼく自身はそれを追っかけてきたわけでもなく、一時期は随分と厚化粧の解釈になった時期もあっようだが、最近またモーツァルトやバロックへの回帰に取り組んでいるとか。キャリアは長いがまだ五十代半ば。まだまだ楽しみだ。
この盤の音源。第5番イ長調第1楽章。
同じく第5番。ムターは十数年前に全曲を弾き振りで再録している。その頃の音源。デビュー盤に比べると主部のテンポはかなり速く、小編成のオケによりダイナミクスの振幅も明快かつ大きい。さらに細部は念入りになって、ときに濃厚な味わい。
この盤の音源。第3番ト長調第1楽章。
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