激安ブルックナー全集



実は少し前に家内アクシデントあって野暮用続き。先日の週末土日もあたふたと終了。それでも日曜夕方近くに時間があったので、アンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


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パーテルノストロ指揮ヴュルテンブルクフィルの演奏するブルックナーの交響曲全集。第1番から9番に加え、0番とテ・デウムも収録されている。いわく<激安ブルックナー全集>…CD11枚組で1,132円(購入当時)。千円ちょっとでブルックナーの全集ですよ、オクサン!…という代物。そんなわけで少々ゲスな記事タイトルに…

指揮者のロベルト・パーテルノストロは1957年ウィーン生まれながらヴェネチアの家系とか。ぼくはこの盤で初めて知った。晩年のカラヤンのアシスタントを務めたとのこと。ヴュルッテンブルクフィルは南ドイツ・シュトゥットガルト郊外のロイトリンゲンの本拠地を置く。2001年から2007年まで日本人の飯森範親氏が音楽監督を務めた。この全集は90年代後半から2000年代前半にバロック様式のヴェインガルテン大聖堂でのライヴ録音で2009年にリリースされた。何より注目されたのは全11枚組で廉価盤1枚ほどの値段。こういうCDに激安・爆安のキャッチコピーを付けてセールスが上がるのかどうか分からないが、「あまり知られていない演奏家だがどうだろう。とりあえず聴いてみるか」という諸氏は多い様子。ぼくもその一人。リリースされてすぐに手に入れた。ネットを検索すれば、多くのサイトでこの盤を手にした好事家諸氏の寸評がみられる。

演奏は悪くない。ドイツの地方オケの、日常的演奏レベルの高さを実感する。長い残響を伴う大聖堂での演奏、それもブルックナーとなれば、それだけで70点くらい取れそうな条件だが、実は残響を生かしながら各パートをクリアに録音するのは至難の業に違いない。あまり配慮せずに録ると、風呂場で演奏しているような音になってしまうだろう。この録音には1枚ごとにエンジニアの名前がクレジットされている。おそらく多くのマイクを立ててマルチ録音をした上でミキシングに腐心したに違いない。その結果、それぞれのCDは音の状態に少々違いがある。但し、すべてに言えることは、大聖堂の残響に頼ることなく、かなり細部をクリアに、ときにはオンマイク過ぎるのではというほど音像を近く定位させている点だ。総じて弦楽器は適度な距離感とクリアさを保っている。コントラバスの音程もしっかり聴き分けられる。一方、管楽器群の録り方は盤によってかなり異なる。例えば第7番など、弦楽器群は整ったバランスでよく歌うが、管楽器群はやや前後の遠近感に違和感があり、木管群が遠く、金管が近く感じる。また、所々管楽器群の音程に怪しいところもある。 この盤を聴いたあとでブロムシュテット&SKDの盤を聴くと、さすがに格の違いを感じてしまう。SKDの各セクションの音は実によく整い、ルカ教会での録音も左右の広がり前後の遠近感など万全だ。しかしこの盤は、大聖堂での録り直し無しのライヴという条件を考慮すれば、演奏・録音ともに大健闘だろう。もっともこんな感想は、かなり根掘り葉掘り、重箱の隅をつつくような聴き方が故かもしれない。

この手の盤の常として売り切り御免ですぐに廃盤かと思っていたら、まだ在庫がある様子。ブルックナーは何だか苦手という人に今更薦めるつもりはないが、4,5,7,8,9番しか手元にないといった諸氏はこの盤を手元においてみてはどうだろう。もっとも現時点では、ヴァント&ケルン放響による70年代後半の全集(1番~9番)も同じような値段で手に入るので、ちょっと悩ましい。


手持ちの盤からアップした。第7番・第3楽章


同 第8番・第4楽章<抜粋>



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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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