ヨーヨー・マ「SONGS FROM THE ARC OF LIFE」
先日聴いたベートーヴェンの三重協奏曲で若き日のヨーヨーマに触れ、そういえば…と思い出し、こんな盤を取り出した。

数年前にリリースされたヨーヨー・マ(1955-)の比較的新しいアルバム「SONGS FROM THE ARC OF LIFE」。2015年3月録音。ピアノ伴奏は長年のパートナーであるキャサリン・ストット。収録曲は以下の通り。
アヴェ・マリア(バッハ/グノー)
子守歌(ブラームス)
わが母の教え給いし歌(ドヴォルザーク)
蝶々(フォーレ)
ジェラシー(ゲーゼ)
民謡風の5つの小品(シューマン)
夢なりしか(シベリウス)
夢のあとで(フォーレ)
愛の挨拶(エルガー)
プレリュード第1番(ガーシュウィン)
ロマンス(ディーリアス)
ラ・ヒターナ(クライスラー)
ベッラントニオ(ソッリマ)
白鳥(サン=サーンス)
傷ついた心(グリーグ)
―以下は日本盤のみのボーナストラック―
感傷的なワルツ(チャイコフスキー)
イエズスの不滅性への讃歌(メシアン)
美しき夕暮れ(ドビュッシー)
アヴェ・マリア(シューベルト)
ぼくは新録音のアルバムとはほとんど縁がない。若い頃は経済的理由で再発の廉価盤専門。その後も現在に至るまでそのクセが何となく抜け切らない。それでもときどきは新譜に飛びつくこともあって、この盤は久々の新譜買い。それもジャケ買い。足を投げ出し笑みを浮かべたマのリラックスした様子。そんなマに後から応える相方のストット。録音当時、還暦を迎えることになったマ。「キャッシーと僕は何年もの間、自分たちがこよなく愛する曲でアルバムを作りたいと話していたんだ。―中略― 僕たちからオーディエンスへの招待状なんだ。人生のサウンドトラックを僕たちと一緒に想像してもらいたい」。マがライナーノーツにそう記している。
収録曲をみれば分かるように、お馴染みのチェロ小品の体裁ではあるが、演奏はこれらの小品でチェロの音の魅力を伝えよう、自分の表現を聴かせよう、といった雰囲気はほとんど感じない。多くの曲はメゾピアノ以下の音量で弾かれる。朗々と力強くチェロを鳴らす場面は少ない。アルバムのコンセプト通り、マとパートナーのストットが三十年にわたる演奏活動を振り返り、同時にマ自身は六十年の人生を回顧するように、幾度となく弾き親しんだこれらの小品を、軽みを帯びた表現で楚々と弾き進める。明るく穏やかな曲、悲しみに沈む曲、過去を懐かしむ曲、それぞれが万感の思いを抱きつつも、きわめて抑制された表現で演奏される。
ヨーヨー・マは間違いなく現代最高のチェリストの一人だと思うが、あまりの巧さゆえに、ときとしてあざといほどに感じることもあったが、この盤に聴く演奏はそうしたところがまったくない。そして長きにわたってパートナーを務めたストットのピアノもきわめて雄弁で、このアルバムが二人の共同作業であることを強く印象付ける。
このアルバムのメイキングビデオ
ディリアス「ロマンス」
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