ヨーヨー・マ 「Inspired by Bach」
週末金曜日。今週もあれよあれよという間に終了。人生もあれよあれよだなあ…嗚呼。
さてさて、芋づる式音盤ルーチン。先回の続きでヨーヨーマの盤を聴こう。取り出しのはこの盤。

ヨーヨー・マの弾くバッハ無伴奏チェロ組曲。「Inspired by Bach」と題されたこのアルバムは1994年から1997年にかけて、映画監督、建築家、俳優など当代を代表する様々なアーティストとコラボレーションした映像作品から、その音源のみを取り出したアルバム。第5番では坂東玉三郎が参加して話題になった。
滅多に新譜を買うことはないのだが、この盤は発売早々に手にした記憶がある。しかし実のところあまり聴いていない。これはまったくぼくの個人的な思いだが、そもそもバッハの無伴奏作品はチェロであれヴァイオリンであれ、聴き手に相当の負荷を強いる。つまりあまり安穏とは聴けない。もちろんBGMにもならない。他方、その重い負荷とヨーヨー・マの巧すぎる演奏とのマッチングに何かしっくりしないものを感じ、あまり取り出すことがなかった。しかし、きょうこうして第4番を聴いてみて、その浅はかな認識をあらためた。
この4番の演奏でヨーヨー・マはとても控え目で、まるで自省するかのように弾いている。プレリュードは通常この曲でよく聴く演奏に比べ半分程度かと思うような音量で始め、最初のピークに向かって1分近くかけてゆっくりと登っていく。巧いプロとアマチュアの決定的な違いは何か。弱音のコントロールは間違いなくその一つだろう。名人中の名人であるヨーヨー・マとアマチュアを比較するのは見当違いもはなはだしいが、この4番を聴いていると、あらためてその感を強くする。弾き急がず、鳴らし過ぎず、曲の持つフレーズ感のうち最も大きく長いそれに照準を合せて、しかしそれと悟られないように自然に歩みを進めていく。巧さを通り越して、時にあざとささえ感じるヨーヨー・マだが、この演奏はそうではない。もしかするとそれは、他のアーティスト、それも音楽家以外の人との共同作業という過程で、ヨーヨー・マの意識の何割かが相手側へのアプローチや配慮、相手側から得るインスピレーションといったものに向けられたためではないか。第4番の演奏は曲の性格もあるのだろうが、とりわけその感が強い。
手持ちの盤からアップした。第4番変ホ長調のプレリュード
同 第6番ニ長調のプレリュード
この盤の元となった映像コラボレーション。玉三郎と第5番のサラバンド。
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