V・ビリャダンゴス「Tango Argentino」



十月最後の週末金曜日。静かに深まりゆく秋の宵。先回の記事に書いたブラーボのタンゴ曲集で思い出し、今夜はこんな盤を取り出した


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アルゼンチンのギタリスト:ビクトル・ビリャダンゴスが弾くお国物のタンゴ集。ナクソスから出ている一枚。2001年録音。収録曲以下の通り。お馴染みのピアソラをはじめとし、ブラスケス、ガルデル、フリアン・プラサといったアルゼンチンの作曲家によるタンゴ小品が18曲収めされている。

1.凧が飛ぶ夢(ブラスケス)
2.決闘のミロンガ(モスカルディーニ)
3.最後のグレーラ(ピアソラ)
4.リベルタンゴ(ピアソラ)
5.想いのとどく日(ガルデル)
6.帰還(ガルデル)
7.ミリタリー・タップ(モレス)
8.メランコリコ(フリアン・プラザ)
9.ノスタルヒコ(フリアン・プラザ)
10.南((トロイロ)
11.ティリンゴたちのために(モスカルディーニ)
12.アディオス・ノニーノ(ピアソラ)
13.ブエノス・アイレス午前零時(ピアソラ)
14.ハシント・チクラーナ(ピアソラ)
15.勝利(ピアソラ)
16.ラ・レコータ(コセンティーノ)
17.わが愛のミロンガ(ラウレンス)
18.ミロンガ・デル71(ビターレ)

先回の記事にも書いた通り、昨今のクラシックギターの立ち位置は案外あいまいで、クラシックギターの<クラシック>が意味する古典派ギター音楽としてのアイデンティティは次第に薄れてきているように感じる。これは聴く側だけでなく、弾き手側にも共通する。プログラムの多くにラテン系の近現代曲、それも民族色やポピュラリティの強い小品が並ぶことが多くなった。この盤などもその典型かもしれない。その是非はともかく、タンゴの生まれ故郷の奏者が弾くお国物という意味で価値ある1枚だ。ビリャダンゴスはこの盤を含め、ナクソスからラテン系作品を中心に何枚かアルバムを出している。

ギター1本で弾くタンゴは、踊りとしてのタンゴ音楽という気配はなく、ノスタルジックなラテン抒情歌という趣き。ビリャダンゴスは自らの編んだ曲集を出しているだけのことはあり、どの曲も達者な弾きぶり。妙なコブシをきかせたラテン演歌にはなっておらず、節度ある歌い口で好感が持てる。


この盤の音源。A・ピアソラ「勝利」


先回の記事にも貼ったガルデル「想いの届く日」。ビリャダンゴス編のよる大萩康司の演奏。静かに深まりゆく秋の晩の相応しい。画質・音質ともに冴えないのが残念。


クラシカルなレパートリーを弾くビリャダンゴス。トローバのソナチネ第3楽章。



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L・ブラーボ編「タンゴ名曲集」



当地関東地方は先週末からようやく秋らしい日に恵まれるようになった。暑からず寒からず。湿度低く空気も澄んで気持ちがいい。ギターケースを開けて部屋に並べ、楽器も深呼吸。心理的バイアスも働き、出てくる音も天高く響き渡るように感じる。そんな気分の良さに押されて、少し前に手に入れた楽譜を取り出した。


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アルゼンチン出身で現在日本で活躍するギタリスト:レオナルド・ブラーボ(1967-)によるギターのためのタンゴ名曲集。収録曲は以下の通り。

ビジョルド:エル・チョクロ/カナロ:ティエンポス・ビエホス(古き時代)/コビアン:リアチュエロの霧/ピアソラ:チキリン・デ・バチン(バチンの男の子)/トロイロ:下町のロマンス/ピアナ&カスティージョ:シルバンド(口笛を吹きながら)/ガルデル:ポル・ウナ・カベサ(首の差で)/ガルデル:想いの届く日/バルディ:恋人もなく/カロ:黒い花/ピアソラ:アディオス・ノニーノ/ピアソラ:ブエノスアイレス午前零時/モレス:タキート・ミリタル(軍靴の響き)/ビジョルド:エル・チョクロ/マフィア:ベンタロン [二重奏]/フレウリ:テ・バス・ミロンガ [二重奏]/ピアソラ:オブリビオン(忘却)[二重奏]

ぼくはタンゴを含むラテン音楽にはまったく不案内なので、これらの収録曲についてピンとくるものは少ないのだが、解説によれば、タンゴ創成期の曲からピアソラまで幅広く収録されているとのこと。そしてタンゴをよく知らないぼくのような門外漢のために、この手の曲集としては珍しく、ブラーボ氏自身による、かなり詳細は解説が付されている。 いずれの曲もおおむねアマチュア中級から上級の技術レベルを前提としているが、いくつかは初見でも弾き通せて、楽しめる。

ギター属は現代のもっともポピュラーな楽器の一つだが、いわゆる「クラシックギター」となると、その名に反してクラシック音楽全体における存在感は薄い。むしろポピュラー、取り分けタンゴを含むラテン音楽における存在感の方が余程大きいだろう。ブラーボ氏の解説にも書かれているが、民衆音楽としてのタンゴは元々楽譜に記されたものは少なく、多くは奏者や歌手によって伝承されてきた。それをクラシックギター用に記譜することには窮屈さもあるだろうが、記譜することで、そこを基点として、様々な味わい、語法を付け加えて楽しむこともできる。ときにこんな楽譜を広げるのも、ソルやメルツの19世紀古典ギター曲の味わいとは異なる脳内刺激があって楽しい。


この曲集によるCD発売時の記念コンサートを前にしたブラーボ氏


本曲集にも収録されている、古き良き時代のタンゴの代表作ともいえるガルテル作曲「想いの届く日」。林祥太郎によるブラーボ編の演奏。名器アルカンヘル・フェルナンデスが美しく響く。


同曲 オリジナルの歌唱ヴァージョン。 演奏は1分30秒過ぎから 4分20秒過ぎからギターソロも。
パオラ・エルモシンというスペインのギタリストにしてシンガー、ソングライター



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A・シフのバッハ



今週で十月も終わり。相変わらず淡々と日々が過ぎる。
週明け月曜日。いつも通りの時刻に帰宅。ひと息ついて夜毎の音盤ルーチン。今夜はこんな盤を取り出した


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アンドラーシュ・シフ(1953-)の弾くバッハ;パルティータの英デッカLP盤。シフの弾く一連のバッハ演奏はかなり前にCDを手に入れ、一時期よく聴いていたのだが、十年程前の大阪出張の折、例によって梅田の中古レコード店を覗いた際、LPセットが目にとまり買い求めた。

評判通り「歌うバッハ」であるこのシフの演奏。実はその後あまり聴いていない。解釈がロマンティックに寄り過ぎているのが鼻につくようになったからだ。1983年9月に録られたこの録音はデジタル録音の初期とも言える頃で、英デッカにしてはLP・CDとも少々音の抜けが悪く鮮度感に乏しい。残響も多めで、曲の解釈と合わせて、いささかBGM的なのだ。もちろんグールドのバッハとはまったく世界が異なるし、美しい音色でよく歌いながらも中庸をいくマレイ・ペライアのバッハの方が音楽として正対して聴ける。

と、こんな風に書くとシフのバッハは真剣に聴く対象でないかのように思われてしまうが、決してそうではない。「歌うバッハ」としてのシフの演奏はワン・アンド・オンリーに違いなく、こうして夜更けに聴いているとすこぶる安堵を覚える。グールドやペライアと刺激される脳の中の部位が異なるとでもいったらいいだろうか。とりわけ、このパルティータ全曲や、豊かなメロディーにあふれるフランス組曲はシフのよさが出たいい演奏だ。


この盤の音源。パルティータ第1番変ロ長調の第1曲「プレリュード」


同 第2番ハ短調の第1曲「シンフォニア」


ギターによる演奏。パルティータ第1番全曲。



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佐藤弘和「音楽のおもちゃ箱」



週末土曜日。野暮用あって午前中から外出、夕方近くに帰宅した。
夜になってようやく一服。今夜は音盤タイムはお休み。代わってギターを取り出して、ひとしきり楽しんだ。相変わらず、まとまった練習時間は取れず、朝の出勤前にストレッチ代わりのスケール練習をしたり、今夜のように少し時間を見つけては細切れ練習が続いている。練習といっても、暗譜して指板上の運指を覚えて…ということはほとんどやらない。弾ける曲、弾けない曲、いずれも楽譜から目を離さず、楽譜だけを頼りに弾き通す。まあ、練習というよりは、やはりお楽しみタイムだ。このところは、少し前に手に入れたまま手付かずだったこの曲集を開いて楽しんでいる。


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今年1月に出た佐藤弘和(1966-2016)の小品集「音楽のおもちゃ箱」。副題に「初心者のための40のやさしいギター小品集」とある。副題の通り、初心者が取り組むに相応しい技術レベルを想定し、音数は少なめ、規模も1頁に収めてある。しかし佐藤氏らしく、曲のコンセプトが明確で、4つで一組の組曲を成し、組曲が全部で10あって合計40曲の小品が収められている。

佐藤氏は作曲のモットーとして、「弾き易くわかり易くメロディックであること」また「楽器としてのギターを弾くことだけに偏りがちな傾向を打破するために、普遍的な音楽の中でのギターというものを考えていきたい」と表明している。技巧的に無理のない、シンプルで音数の少ない小品でも、豊かなメロディーと気の効いたモダンな和声が施され、弾いていて気分のよくなる曲が多い。この小品集「音楽のおもちゃ箱」もその方針は貫かれていて、初心者向けの限られた技術レベルの範囲を守りながらも、音楽として感興に富む。副題に引きずられず、中上級者も手に取れば、初見でほぼ通せるレベルながら十分楽しめるに違いない。


ページを開いてざっと通して弾いた中で、ト短調のこの曲が印象に残ったので録音してみた。「4つのロマンティックな歌」という組曲の中の第1曲「悲しい花」 楽器はエルナンデス・イ・アグアド1973


同曲 楽器をゲルハルト・オルディゲス2008に替えて。


ここ数年で録音した佐藤作品の再生リスト。全部で25曲。録音条件いろいろ、楽器もいろいろ、下手くそ変わらず…



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ローラ・ボベスコのクライスラー



週半ばの木曜日。関東地方は先週末から一気に気温が下がり、どうしたものかと思っていたが、今週に入って幾分もち直してきた。それでも通勤時の上着はこれまでのリネンから厚手のコットンに替えた。そろそろ秋本番だろうか。さて、本日も程々に業務に精励。夜半前の弛緩タイム。温かい飲み物を片手に、こんな盤を取り出した。


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ローラ・ボベスコによるにクライスラー名曲集。1921年生まれ(諸説あり)のボベスコは2003年に亡くなるまで長いキャリアを持つ。きっとぼくの世代よりも上のオールドファンが沢山いることだろう。ブロンドで美貌のヴァイオリニストとしても知られ、還暦を過ぎた頃の来日時の写真を見てもそれとわかる。この盤は晩年日本で人気が再燃した頃、1984/85年の録音。ピアノ伴奏はフィリップスのプロデューサとしても高名だったウィルヘルム・ヘルベック。手元の盤は十数年前にフィリップスの廉価盤として出たときのもの。収録曲は以下の通り。フリッツ・クライスラー(1875-1962)の主要作品20曲が収められている。

 愛の喜び
 愛の悲しみ
 美しきロスマリン
 中国の太鼓
 ウィーン奇想曲
 ベートーヴェンの主題によるロンディーノ
 ボッケリーニのスタイルによるアレグレット
 クープランのスタイルによるルイ13世の歌のパヴァーヌ
 昔の歌
 ウィーン風小行進曲
 ロマンティックな子守歌
 シンコペーション
 レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
 おもちゃの兵隊の行進曲
 プニャーニのスタイルによるプレリュードとアレグロ
 コレルリの主題による変奏曲
 ルクレールのスタイルによるタンブーラン
 ジプシーの女
 オーカッサンとニコレット
 道化役者のセレナード

第1曲『愛の喜び』が始まってすぐ、その音色に耳を奪われる。特に中音域から低音にかけて豊かで深く、そして濃い。時折り音程の甘さが気になるところがないではないが、それよりも音色の魅力が勝る。引き合いに出すのは適当でないかもしれないが、五嶋みどりなどとは対極といってもよいほどだ。今どきは不適切表現と言われそうだが、十八歳の小娘と大人の女の懐深さの違いとでも言おうか。ぼくのお気に入り「ウィーン小行進曲」も収録されていて、五嶋みどりと比べると面白い。ボベスコの演奏はテンポが二段階くらい遅く、一つ一つの音がたっぷりとしている。低弦のビブラートの揺れに聴く側の心まで揺さぶられそうだ。がしかし、表現としては過度なところはなく、音楽の品格が高い。ゆったりしたテンポ、豊かな音でよく歌うが妙なコブシや嫌味なテンポ・ルバートはなく音楽が自然に流れていき、どこまでもチャーミングだ。懐は深いが厚化粧の大アネゴではない。

ぼくのレコード棚にある女性ヴァイオリン奏者の盤を思い起こしてみた。ローラ・ボベスコ、イダ・ヘンデル、ジネット・ヌヴー、ミシェル・オークレール、チョン・キョン・ファ、ナージャ・ソネンバーグ、ヴィクトリア・ムローヴァ、前橋汀子、潮田益子、五嶋みどり、諏訪内晶子、庄司紗矢香、神尾真由子…。それら美しきミューズ達の中にあって、このボベスコの小品集はひときわ色濃いロマンティシズムをたたえた名盤だ。


手持ちの盤からアップ。愛の悲しみ・美しきロスマリン・ウィーン小行進曲の3曲。



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バッハ「チェロとハープシコードのためのソナタ」



早いもので十月も下旬。相変わらず天候安定せず、秋の好日遠し。何となくこのまま十月も終わってしまうのかしらん…と、そんなことを考えながら、本日も業務に精励。ひと息ついて変わらぬ音盤タイム。今夜はこんな盤を取り出した。


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J.S.バッハ「チェロとハープシコードのためのソナタBWV1027~1029」。ポール・トルトゥリエ(1914-1990)による1963年の録音。ハープシコードはロベール・ヴェイロン=ラクロワ。 トルトゥリエの録音の多くはEMIからリリースされたが、仏エラートにも何枚か録音を残した。これはその中の一枚。手持ちの盤は1965年リリースの国内初出盤LP。例によって十数年前、出張の折にしばしば立ち寄っていた大阪梅田の名曲堂阪急東通り店で手に入れた。

60年代半ばの盤は一様に材質が分厚く重い。そして半世紀を経た今でもノイズの少ないいい音を奏でてくれる。まだまだレコードは高価で貴重な品だった品だった時代で、それゆえにコストも手間もかけて丁寧に作られていたこともあるだろう。その後70年代、特にオイルショック以降の70年代半ばからレコードが終焉を迎える80年後半に向け、レコードはどんどん薄くなり、録音技術のデジタル化と相まって、何となく実在感の乏しい軽薄短小傾向が色濃くなっていった。60年代の盤は、やはりその時期のオーディオセットで聴くのがもっとも相応しい。具体的には二世代くらい昔の、現代的視点からみたらややナローレンジなエネルギーバランスのスピーカで聴くのがベストだ。この盤も以前使っていたダイヤトーン2S-305(昭和30年代初頭の設計)で聴いていたときの印象に比べ、現用のアヴァロンでは少々よそよそしく響く。

さて、それはともかくトルトゥリエのバッハだ。いつもながら彼のチェロの音色は明るく華がある。無伴奏チェロ組曲と異なり、チェンバロを伴って多彩な曲想を展開するのに相応しい音色だ。決して技巧派でならした人ではないので、時折やや音程があやしいところもないではないが、それも音楽的な音程(緊張と解決に伴う音程の取り様)を重視してのことだろう。テンポは中庸だが、第2番の第3楽章アンダンテや第3番のアダージョ楽章では、ゆったりとよく歌っている。名手ロベール・ヴェイロン・ラクロアのハープシコードも華麗な装飾音も交えながら、明るく華やかにトルトゥリエのチェロを引き立てている。

…と、手放しで礼賛しておいてナンではあるが、トルトゥリエはハープシコードとのバランスをよく考えて弾いているものの、それでもなお、やはりモダンチェロとハープシコードという組み合わせは少々違和感があるのも事実だ。オリジナルのヴィオラ・ダ・ガンバで聴くとハープシコードとの響きの相性が格段にいいように感じる。モダンチェロにはやはりモダンピアノの方が、この時代の音楽としても、むしろ不自然さを感じないほどだ。このあたりはバッハを聴いたり弾いたりする際、大きく好みが分かれるポイントかもしれない。


第1番ト長調BWV1027 チェロ(バーナード・グリーンハウス)とモダンピアノによる演奏。


同曲。オリジナル通りのガンバとハープシコード。


第1番BWV1027はトリオソナタBWV1039(フルート2本と通奏低音)が元曲だ。



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ビル・エヴァンス&ジム・ホール「UNDERCURRENT」


週末日曜日。野暮用いくつかこなして日が暮れる。 さて、明日はまた社会復帰かと思いながら夜半前の音盤タイム。今夜はジャズにしようと音盤棚を見回し、この盤を取り出した。


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ビル・エヴァンス(1929-1980)とジム・ホール(1930-2013)によるデュオの名盤「アンダーカレント」。1962年録音。手持ちの盤は80年代後半の再発米盤LP。記憶が正しければ御茶ノ水のディスクユニオンで手に入れたはずだ。ジャケット隅の「Also available on compact disk and XDR cassette」のフレーズが、CD時代への移行期だったあの頃の時代を感じさせる。

印象的なジャケットだ。一度見たら忘れることはないだろう。ジャズのレコードにはそういうジャケットデザインがいくつもある。この盤などはその典型だ。まだ学生時代だった二十歳前後の頃、何かの雑誌でみて以来ずっと気になっていた。

ピアノとギターのデュオ。ベースもドラムスもない。編成としては珍しい。1曲目のマイ・ファニー・ヴァレンタインが少々アップテンポであるほかは、いずれも二人のインタープレイがゆったりと流れる。 ジム・ホールはこの時代以降もサラ・ヴォーンとのデュオや自身のソロによるのアルバムを出すなど、どちらかといえば内省的な演奏をするプレイヤーだった。ビル・エヴァンスしかり。二人のインタープレイは、やや渋めのフレーズを繰り出しながら進む。ありきたりの甘口カクテルジャズにはならないのもいい。アンダーカレントとは「心の底に流れる感情」といったほどの意味らしいが、互いの心情をときに告白しているようであり、ときに探っているかのようでもある。

タワマン最上階の部屋…眼下に広がる都会の灯りを眺めながら、心静かにこの盤を控えめの音量で聴く…なんて光景が似合いそうな盤だが、ぐんまネイティブには縁のない妄想であります…嗚呼


「Dream Gypsy」


「I Hear A Phapsody」


アルバム全曲(Alternate Take含む)は以下
https://youtu.be/QJ3kiFBrKpQ


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プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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