山下和仁 ギターリサイタル
昨晩は予定通り山下和仁のコンサート。都内での仕事を5時に終えたあと、晴海トリトンスクエアの第一生命ホールへ向かった。

晴海、久しぶりだなあ…と思いながら大江戸線勝どき駅を出た。幕張メッセや東京ビッグサイトが出来る前、多くの展示会・イベントは今は無き晴海の国際展示場(東京国際見本市会場)で行われた。社会人になって以来、見学や説明担当として幾度となく通ったものだ。当時は大江戸線もなく、銀座線築地駅から歩いて勝鬨橋を渡り、会場に向かったのを思い出す。その晴海周辺もすっかり変貌。かつての国際見本市会場跡には東京オリンピック選手村が、また周辺にはタワマンが林立。すぐ隣りのエリアには豊洲市場が広がる。晴海トリトンスクエアも完成した直後、業界団体の会合で何度か通ったことがあるが、その頃はまだ商業施設が入っていなかった。この四半世紀で随分変わったなあと、群馬ネイティブの述懐…

会場の第一生命ホールへは6時少し前に到着。時間もあったので施設内の回転寿司で小腹を満たし、6時半過ぎに入場。700席余のホールはコロナ感染対策で一席おきの指定。その他会場での案内他、感染対策は万全の印象。クラシック系の演奏会は最近徐々に再開されだしたが、客席との一体化が必須のポップス・ロックのタテノリ系コンサートはまだまだ課題が多そうだ。
7時ちょうどに客電が落ち、ほどなく山下氏登場。白シャツの気取らない姿ながら、落ち着いて礼儀正しく、天才少年と騒がれた70年からの輝かしい歴史を背負った、さすがのオーラが漂う。当夜のプログラムは以下の通り。マヌエル・ポンセ(1882-1948)作曲のソナタ全曲という意欲的プログラム。
ソナタ・メヒカーナ
ソナタ・クラシカ
-休憩20分-
ソナタ第3番
ソナタ・ロマンティアカ
2020年10月9日(金) 19:00~ 第一生命ホール
久しぶりに聴く山下和仁は、やはり山下和仁だった。
強いところはより強く、弱いところはより弱く。速いところはより速く、遅いところはより遅く。そして繰り返される大胆な音色変化。それも、そこまでやるかというほど大胆に…。もはやポンセであろうとソルであろうとバッハであろうと、素材を問わず山下流に料理される感がある。中ではソナタ・クラシカの落ち着いた第1楽章、歌ごころに満ち美しい弱音に彩られた緩徐楽章に聴き入った。一方で終楽章はやはり速すぎるとも感じた。疾走を通り越し、フレーズが耳に入る前に空に飛び去ってしまう。また音色の変化も、ブリッジ寄りの硬めの音と指板寄りのソフトな音とがあまりに頻繁に交錯して落ち着かない。これをもって「ギターの多彩な音色が魅力だ」という聴き手もいるから、私の耳が音色変化の多さについていけないだけのことだろう。
来年には還暦を迎える山下氏。以前は愛器ホセ・ラミレスの表板が削られるほど強靭なタッチで有名だっが、今回久々に接して、その弾き振りは少々変化したように思えた。低音は時折り繰り出されるバスン、バスンという音にかつてのイメージを思い浮かべたが、高音はやや浅めのタッチでさらりと弾く場面が目立った。デビュー以来使っていた愛器ホセ・ラミレスから少し前から替えたリナルド・ヴァッカ作(Rinald_Vacca_伊)のギターは、低音域では山下のタッチに負ける場面があったが、高音域はピュアで伸びのある音が二階第1列中央席にも美しく届いてきた。
何やらネガティブな印象も書いてしまったが、ポンセのソナタ4曲を一夜に聴いた充実感は他に代えがたく、やはり山下和仁でなければかなわない演奏会だった。近年、東京では年に一度の頻度で山下氏らしい意欲的なプログラムでリサイタルが開催されている。来年はどんなプログラムを聴かせてくれるのか。コロナ禍の収束と併せて、心待ちにしよう。
山下氏といえば近年、子供たちを含めたファミリーでの演奏でも知られる。子供たちも成長しそれぞれがギターに関わり活躍。中でも山下愛陽(かなひ:ベルリン留学中)は父を超える逸材とのうわさも聞く。YOUTUBEで聴ける演奏でもその片鱗がうかがえる。 以下は山下愛陽の弾くF・ソル「マルボロの主題による変奏曲」。ややロマンティックによった解釈ながら、アーティキュレーション・ディナーミク・アゴーギクいずれもナチュラルにコントロールされ素晴らしい。
同 バッハのBWV998からプレリュード。23歳とは思えない落ち着いた弾きぶりだ。この演奏で使っているギターが、当夜山下氏も使っていたリナルド・ヴァッカ作のものと思われる。
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