G・クレーメルのブラームス
十月も二週間が過ぎた。山々から紅葉の便りも届き始めるころだろうが、当地関東平野部は天候の変化が目まぐるしく、安定した秋の好日は中々訪れない。本格的な秋はもう少し先だ。さて、週半ばの水曜日。きょうも程々に働き、いつもの時刻に帰宅。夜半間になって一服し、何年かぶりでこんな盤を取り出した。

ギドン・クレーメル(1947-)が弾くブラームスのヴァイオリン協奏曲。バーンスタイン指揮のウィーンフィルが伴奏を付けている。録音は1982年@ウィーンコンツェルトハウス。クレーメルにとっては1976年のカラヤン&ベルリンフィルとのEMI盤に続き2回目の録音となる。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲は好きな協奏曲の筆頭といってもいい。手元には10種を下らない盤があるはずだ。このクレーメル盤はもちろん彼のヴァイオリンが主役ではあるが、同時にバーンスタインとウィーンフィルという、70年代後半から80年代初頭にかけて蜜月時代を送り数々の独墺系レパートリーの録音を残したコンビを聴く盤でもある。バーンスタイン&ウィーンフィルのコンビはこの時期にブラームスの交響曲全集を作った。このクレーメルとの協奏曲もその流れを汲むものだ。
曲は冒頭からバーンスタインとウィーンフィルの濃厚な響きで始まる。拍節のアインザッツは深く重量感を伴う。しかしオケの音色は明るめで、北ドイツ風の渋いブラームスではない。クレーメルのヴァイオリンはテヌートを効かせた歌いっぷりで、ブラームスの息の長い旋律をたっぷりと歌う。もちろん頻出する技巧的な難所も難なく弾き切る。新時代の旗手と言われたクレーメルもこうして聴くと、やはり恩師オイストラフ同様、ロシア・ソヴィエト派の継承者らしく十分伝統的で一時代前のスタイルも身に付けていることが分かる。なおこの演奏では、第1楽章のカデンツァにはよく弾かれるヨアヒムのものではなく、マックス・レーガーの「前奏曲とフーガ・ニ短調作品117第6」から、その前奏曲が使われている。
第2楽章アダージョでは冒頭のオーボエソロを始め、随所でウィーンフィルの美しさが光る。第3楽章はジプシー風のロンド。バーンスタインの指揮はロンドの軽やかさとは無縁で、どっしりと腰を据えた響き。いささか付点音符が重く、フレーズを引きずる感じもあるが、ロンドとはいえやはりブラームスの曲。これ位の重量感があっていいのだろう。全編聴き終えると、演奏のイメージ同様ずっしりとした充実感が残る、正に重量級の名演だ。
この盤の音源の元となっているウィーンコンツェルトハウスでのライヴ。CD化に際して一部編集しているように感じる。
この盤の音源
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