V・ムローヴァのブラームス



先回の記事でクレーメルのブラームスを聴いて、やっぱエエなあブラームス…と感じ入り、今夜はこの盤を取り出した。


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ヴィクトリア・ムローヴァ(1959-)独奏によるブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調。アバド指揮ベルリンフィルがバックをつとめた1992年1月東京サントリーホールでのライヴ録音。手持ちの盤は1998年にミドルプライスで出たときのもの。

何と言ってもまずムローヴァの音が美しい。この録音を残した1992年の翌年彼女はバッハ無伴奏のアルバムを出している。おそらくその後バロック音楽や当時の奏法へ傾倒する予兆とでもいうべき感覚が出始めている時期だったのではないか。控えめなヴィブラート、正確な音程と合せて清涼感のある音色だ。第1楽章、第2楽章ともテンポも総じてややゆっくり取り、終始落ち着いた弾きぶりで、熱く激する気配は微塵もない。それでも第2楽章での歌いっぷりなどは十分ロマンティックでブラームスの緩徐楽章として過不足ない。スタカート、テヌート、アクセントほかフレーズのアーティキュレーションは多彩かつ明確。ラプソディックな第3楽章も丁寧な弾きぶりと美しい音色は変らず。イケイケの単調さに陥っていない。

プライベートでもムローヴァといろいろとあったアバドが指揮するベルリンフィルは、サントリーホールの豊かなホールトーンもあって終始余裕のある響き。第3楽章でティンパニが少々やかましいことを除けば、文句のないバックアップぶりだ。ブラームスのシンフォニックな作品への様々なアプローチがあるだろうが、この盤は後期ロマン派風の構えを感じさせながらも古典的な均整と現代的な美しい音色を併せ持つ素晴らしい演奏だ。


この盤の音源。第1楽章


この盤の音源の元となったサントリーホールでのライヴの模様。ムローヴァのYOUTUBE公式チャンネル(と思われる)のものだが、映像の状態が残念。YOUTUBEに同じ演奏がよりマシな映像でアップもされているが(https://youtu.be/TmlG0JIw4c8)、そちらは音の状態が悪い。


以下は2012年2月と比較的最近の演奏。1978年チャイコフスキーコンクール;ピアノ部門の覇者で今はすっかり指揮に転向したミハエル・プレトニョフ指揮のロシアナショナル管弦楽団が伴奏を付けている。プレトニョフにもムローヴァにも思い出深いチャイコフスキーコンクールの会場であるモスクワ音楽院のホール。冒頭男性二人のロシア語による解説があり、演奏は5分過ぎから。第1楽章の出だしソロに入る前でムローヴァは1stヴァイオリンのパートを一緒に弾いている。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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