バッハ「チェロとハープシコードのためのソナタ」



早いもので十月も下旬。相変わらず天候安定せず、秋の好日遠し。何となくこのまま十月も終わってしまうのかしらん…と、そんなことを考えながら、本日も業務に精励。ひと息ついて変わらぬ音盤タイム。今夜はこんな盤を取り出した。


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J.S.バッハ「チェロとハープシコードのためのソナタBWV1027~1029」。ポール・トルトゥリエ(1914-1990)による1963年の録音。ハープシコードはロベール・ヴェイロン=ラクロワ。 トルトゥリエの録音の多くはEMIからリリースされたが、仏エラートにも何枚か録音を残した。これはその中の一枚。手持ちの盤は1965年リリースの国内初出盤LP。例によって十数年前、出張の折にしばしば立ち寄っていた大阪梅田の名曲堂阪急東通り店で手に入れた。

60年代半ばの盤は一様に材質が分厚く重い。そして半世紀を経た今でもノイズの少ないいい音を奏でてくれる。まだまだレコードは高価で貴重な品だった品だった時代で、それゆえにコストも手間もかけて丁寧に作られていたこともあるだろう。その後70年代、特にオイルショック以降の70年代半ばからレコードが終焉を迎える80年後半に向け、レコードはどんどん薄くなり、録音技術のデジタル化と相まって、何となく実在感の乏しい軽薄短小傾向が色濃くなっていった。60年代の盤は、やはりその時期のオーディオセットで聴くのがもっとも相応しい。具体的には二世代くらい昔の、現代的視点からみたらややナローレンジなエネルギーバランスのスピーカで聴くのがベストだ。この盤も以前使っていたダイヤトーン2S-305(昭和30年代初頭の設計)で聴いていたときの印象に比べ、現用のアヴァロンでは少々よそよそしく響く。

さて、それはともかくトルトゥリエのバッハだ。いつもながら彼のチェロの音色は明るく華がある。無伴奏チェロ組曲と異なり、チェンバロを伴って多彩な曲想を展開するのに相応しい音色だ。決して技巧派でならした人ではないので、時折やや音程があやしいところもないではないが、それも音楽的な音程(緊張と解決に伴う音程の取り様)を重視してのことだろう。テンポは中庸だが、第2番の第3楽章アンダンテや第3番のアダージョ楽章では、ゆったりとよく歌っている。名手ロベール・ヴェイロン・ラクロアのハープシコードも華麗な装飾音も交えながら、明るく華やかにトルトゥリエのチェロを引き立てている。

…と、手放しで礼賛しておいてナンではあるが、トルトゥリエはハープシコードとのバランスをよく考えて弾いているものの、それでもなお、やはりモダンチェロとハープシコードという組み合わせは少々違和感があるのも事実だ。オリジナルのヴィオラ・ダ・ガンバで聴くとハープシコードとの響きの相性が格段にいいように感じる。モダンチェロにはやはりモダンピアノの方が、この時代の音楽としても、むしろ不自然さを感じないほどだ。このあたりはバッハを聴いたり弾いたりする際、大きく好みが分かれるポイントかもしれない。


第1番ト長調BWV1027 チェロ(バーナード・グリーンハウス)とモダンピアノによる演奏。


同曲。オリジナル通りのガンバとハープシコード。


第1番BWV1027はトリオソナタBWV1039(フルート2本と通奏低音)が元曲だ。



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