イッセルシュテットのブラームス第四



秋のブラームス祭りを続ける。今夜はこんな盤を取り出した。


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イッセルシュテットと北ドイツ放送交響楽団による交響曲第4番ホ短調。ブラームスは四つの交響曲を残しているが、中でも3番と4番の深く渋い味わい、鬱々とした表情は今の季節にふさわしい。ブラームスの交響曲を聴き始めたのは、今から四十年以上前の学生時代。当時からベートーヴェンや他の作曲家の交響曲に比して、ブラームスの曲を聴くことが圧倒的に多かった。部屋の音盤棚を見るとLP・CD取り混ぜて、フルトヴェングラー、ワルター、カラヤン、クレンペラー・、ベーム、ボールト、バーンスタイン、チェリビダッケ、ヴァント、ケンペ、バルビローリ、スウィットナー、サバリッシュ、インバル、シャイー…といった指揮者達の全曲盤が収まっている。その他に全集にはなっていない単発の盤も相当数あって、どうにも止まらない~♪状態。その中にあって、このイッセルシュテット&NDR盤は激渋の一枚だ。手持ちの盤は70年代半ばに廉価盤シリーズで出ていたもの。

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(1900-1973)と聞くと、もう名前からしていかにもドイツだ。実際彼はベルリンで生まれ、キャリアのほとんどをドイツで積んだ。英デッカに多くの録音を残していて、ウィーンフィルとのベートーヴェン交響曲全曲やバックハウスをソリストにした同じくベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲は今でもそれぞれの曲のスタンダートたる名盤だ。このブラームスの4番では彼の手兵ともいえるハンブルグの北ドイツ放送交響楽団を指揮している。ハンブルグはブラームスの生地でもある。ぼくのイメージするブラームス=暗く雲が垂れ込めた冬の北ドイツ…というイメージにはオケもぴったりだ。

第1楽章の出だし、ややゆったりテンポと渋い音色で曲は始まる。録音も弦楽器を主体としたオケ全体の響きが良くブレンドされたもので、コントラバスのピチカートも深く響く。時折り遠くから聴こえてくるオーボエやホルンの音色も滋味にあふれていて素晴らしい。アンサンブルなどの機能面や、凄み迫力といった点ではベルリンフィルのようにはいかない。しかし、これこそがブラームスだと合点するのだ。第2楽章の終盤、弦が副主題をトゥッティで奏し、その後オケ全体で盛り上がるひと節がある。ブラームスの4番を聴く醍醐味の半分はこの部分とぼくは思っている。イッセルシュテットはここでたっぷりと弦を鳴らすのだが、といって全開にはならない。バーンスタインやバルビローリだとここぞとばかりに歌うところだ。第3楽章も快調に、しかしバランスを崩さずに進む。そして終楽章。イッセルシュテットはここへ来てようやくオケを少しドライブするかのように力を込める。がしかし決して騒がない。音楽は節度を持って進み、かつ何かが不足する感じはしない。フォルテシモでも爆発せず、絶頂に達しそうで達しない。鬱々と逡巡する。しかし、そんなところこそが渋いブラームスに相応しいと思うのだがどうだろう。


北ドイツ放送交響楽団は現在NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団という名称になっている。首席指揮者トーマス・ヘンゲルブロックとの演奏。第1楽章冒頭に導入句を付した版で演奏している。この導入句はブラームス自身が一旦書き加えたものの、最終的には盛り込まれなかったというもの。 第1楽章冒頭に注目。


イッセルシュテットがBBC交響楽団と残したライブ音源。1971年。



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マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

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