令和二年子年回顧



今年も残すところわずか。記事もマンネリとなって久しい本ブログだが、年の終わりの本年回顧。以前は<六弦編><音曲編><覗機関編>の三本立てだったが、もはやあらためて書き残すこともないなあと、以下、簡単に備忘を記す。

■音曲・覗機関編■
音盤あれこれ。去年に続き今年も新規納入はゼロ。もうあまり新しいものに興味もないし、聴く音楽の範囲の段々狭くなっているかもしれない。そもそも手持ち音盤中の未聴在庫も相当数にのぼる。欲しい盤があればあまり躊躇せずに買うつもりではいるが、その欲求にまで至らない。残された健康寿命二十年余は延々と在庫確認、愛聴盤ヘビロテの日々が続きそうだ。
オーディオ装置も変化なし。5年前にスピーカをAVALON社のECLIPSEに替え、3年前にアンプとCDプレイヤーをアキュフェーズに入れ替え、それ以降はまったく手を入れていない。その音に概ね満足し、もはや他の選択肢にも興味がなくなった。定期巡回のごとく眺めていたオーディオ関連のサイトにもまったくアクセスしなくなり、雑誌も買っていない。このままずっと行くのか…と思う。一方で、いずれ訪れる終活に備え、その前哨戦としてビンテージな小型システムにしようか…などと夢想する。


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今年始めのまだコロナ禍が広がる前、何十年かぶりに歌舞伎座へ。若い頃にはコンサートホールより頻繁に通った思いがふと蘇り、一月、二月と続けて舞台に触れた。かつて80年代に観ていた頃の花形役者はすでに幹部・大御所、当時の子役たちが今や花形。そうだよな…ああ、あれから三十年。仕方ないと観念し、これからはせっせと通うぞと思った矢先のコロナ禍。その後中断を余儀なくされている。残念。


■六弦編■
春から夏の自粛期間影響もあって在宅時間が増え、今年は近年になくギターに触れる時間が多かった。とはいえ、課題曲を決めて練習するという王道からは遠く、相変わらずスケール・アルペジオ練習、やさしめのエチュードや初見で弾けそうな小品ばかりで進歩はないのだが、初夏から秋口には朝練もし、ともかく楽器に触れる機会が増えたことだけは、数少ない今年良かったことの一つだ。来年はもう少し気合を入れて大きめの曲に取り組みたいと考えている。

今年の春から秋にかけて録音したものから。
リンク先へ飛んだあと「すべて再生」のボタンをクリック
佐藤弘和氏の小品から。寄せ集めの12曲の再生リスト
https://youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efPpVIczjewGlD4KA6ilMuLo


フェルナンド・ソルのやさしめの練習曲。全8曲。
スマホ録音であちこち音が歪んでいてスミマセン。
https://youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efMkTcydcHolwga6eHzSaCbE


今年の正月休み明けに来宅した笛吹き友人と遊んだときの録音
https://youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efMTSjb2G9qUbL7yJP-JjWMN


ついでながら…
これまで録りためた佐藤作品全28曲
https://youtube.com/playlist?list=PLjAvYRun0efOcNIGHTFQEPoaBXUEPc4qE



…というわけで、結局のところ自分の半径2メートル以内をぐるぐる回っているような、リングワンダリング状態。無為に過ごして悔いなしの若い頃と違い、悔いの連続のような日々が続く。渋茶をすすりつつ、そんな思いにかられる年の瀬ではあります。
最後に…勝手なマイペース与太話といいながら、日々アクセスいただいた方々の後押しも実感する日々。コメント、拍手、バナークリックでの応援、ありがとうございました。お気楽な道楽記事とは裏腹に、世間並みの悩ましき日常もあるにはありますが、そこは本ブログの基本姿勢<人生と天下国家を語らず>。まあ語るほどの人生も知力見識もないだけのことでありますが、来年も引き続き、道楽人生成れの果ての御粗末を続けることにいたします。 それでは皆様、よいお年をお迎え下さい。


最後に年末恒例の長講一席。しみじみと年の瀬の<芝浜>もいいが、冬の話でパッと明るく終わりましょう。何度聴いても面白い古今亭志ん朝の<二番煎じ>を。



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大西順子「楽興の時」



コロナ禍そして公私ともイレギュラーな事情もあって年の瀬感はゼロながら、十二月そして今年もまもなく終わり。何となくホッとしたよな、しないよな…と、ボーッとしながら昼間見かけたポスターで思い出し、今夜はこんな盤を取り出した。


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引退・復活を何度か繰り返したのち現在はまたアクティブに活躍中の大西順子(1967-)。彼女が2010年に復帰を飾ったときのアルバムを取り出した。90年代半ばから人気を博しながら、その絶頂期に突然活動を休止していた大西順子が2009年に11年ぶりに録音した「楽興の時」と題されたアルバム。スタンダードと彼女のオリジナルとがほぼ半数ずつ入っている。手元にある彼女の盤を並べてみたら、90年代に出したアルバムのほとんがあった。彼女が活躍しアルバムを次々にリリースしていた頃、随分入れ込んで聴いていたことを思い出した。それにしても、もう20年以上前にことかと愕然とする。

90年代のアグレッシブでドライブ感にあふれる彼女も実によかったが、このアルバムで聴くやや抑えた表現も味わい深い。シューベルトのピアノ曲「楽興の時」をアルバムタイトルにしていることから、ジャスのクラシカルな味わいを意識しているようにも思う。とはいえ、お馴染みのスタンダードも彼女の手にかかると甘ったるいカクテルピアノに終わらず、脳中枢のあちこちを刺激する音楽に仕上がっていて素晴らしい。一方で90年代の疾走感を期待する向きには食い足らない。一時期の活動休止期間を完全に脱したようで、これからどういう方向へ進むのか楽しみにしたい。


大西順子@2013年。小澤征爾&サイトウキネンとの協演。


1995年人気沸騰のころ。



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A・ピアソラ「タンゴ組曲」



年末も次第に押し詰まり、収束しないコロナ禍もあって息苦しいような年の瀬…と、そんな折も折、うれしいニュースが飛び込んできた。いやいや、まさかと思ったが、今年もやってくれるようだ。万歳!!

★孤独のグルメ 2020年大晦日スペシャル~俺の食事に密はない、孤独の花火大作戦!~★




さらに30日、1日には過去作品から合計12時間半を一挙に放送。すでに前哨戦のごとく、YOUTUBE公式チャンネルでは過去作品が「孤独のグルメ 年末年始に見たい!肉&魚グルメ特集!! 」と題して公開中だ。
https://youtube.com/playlist?list=PLe7yaPWHjEKrfLLj7RbKzG4e_CfECKPN1


さてさて、いつもの本題に戻って…
先日の記事でセルジオ・アサドの曲を聴いて思い出し、きょうはこんな盤を取り出した。


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ラテン系ギターデュオの創始者ともいえるセルジオ・アサド(1952-)&オダイル・アサド(1956-)兄弟による<中南米のギター音楽>と題された1枚。手持ちの盤は十数年前に廉価盤で出た際に手に入れたもの。収録曲は以下の通り。1985年録音。

ピアソラ/タンゴ組曲
 I.Deciso、II.Andante、III.Allegro
ブローウェル/ミクロ・ピエサス
 I.Tranquillo、II.Allegro vivace
 III.Vivacissimo muy ritmico、IV.Sonoro
パスコアール/ベベ
ジナタリ/組曲「肖像」から
 アナクレート・ジ・メデイロス、 シキーニャ・ゴンザーガ
セルジュ・アサド/
 珊瑚の市レシーフェ、ヴァルセアーナ(ワルツ風)
 大鬼蓮、跳躍
ヒナステラ/たそがれの牧歌~バレエ「エスタンシア」から

先程から「タンゴ組曲」を聴いている。この曲の作曲者ピアソラ(1921-1992)は30代になってから、それまで関わっていた伝統的なタンゴ音楽の新開地を求めるべく、クラシカルな世界を学ぼうと渡仏。ナディア・ブーランジェ( 1887-1979)に学んだ。今、ぼくらがピアソラの曲として認知しているのはほとんどがそうした彼の後半生の音楽といえる。 「タンゴ組曲」はピアソラがこの盤の演奏者であるアサド兄弟に献呈した。タンゴ…とあるが、他のピアソラのタンゴ作品同様、舞踏音楽としての要素は希薄で、三楽章からなる自由な形式の組曲。フランスで学んだ成果といえるような近代的な和声感や自由な曲構成、伝統的なラテン的な歯切れのいいリズムやセンチメンタリズムが同居する。演奏には高いレベルの技巧が要求され、アマチュアレベルではまともな演奏は難しい。この盤のアサド兄弟は、高い技巧レベルと持ち前のリズム感の良さ、そして<泣かせる>歌いっぷりをもって完璧に弾きこなし、見事というほかはない。


「タンゴ組曲」全曲。イタリアのデュオユニットによる演奏。


ピアソラの曲をなると今やオリジナルに留まることは少なく、多くのアレンジがなされ様々な楽器で演奏されることが多い。
「タンゴ組曲」の第2曲Andanteをヨーヨーマが弾いた音源。


ピアノソロによる第2曲Andante


先回の記事にも貼った兄セルジオ・アサド作曲の美しい小品「ヴァルセアーナ」



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訃報 なかにし礼



なかにし礼が亡くなった。82歳だった。合掌。
突然の訃報に朝から愕然とした。せめてもの思いをこめて、以前書いた記事を再掲する。


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数年前、発売とほとんど同時に手に入れたCD「なかにし礼と12人の女優たち」を聴いている。彼が手がけたヒット曲を映画・ドラマ・舞台を通じて縁のある女優12人が歌うという企画アルバム。収録曲と歌い手の女優は以下の通り。

01. 常盤貴子 / 恋のフーガ(ザ・ピーナッツ)
02. 水谷八重子 / 時には娼婦のように(黒沢年男)
03. 南野陽子 / 知りたくないの(菅原洋一)
04. 平 淑恵 / 別れの朝(ペドロ&カプリシャス)
05. 浅丘ルリ子 / 愛のさざなみ(島倉千代子)
06. 桃井かおり / グッド・バイ・マイ・ラブ(アン・ルイス)
07. 泉ピン子 / 石狩挽歌(北原ミレイ)
08. 佐久間良子 / リリー・マルレーン(戸川昌子)
09. 高島礼子 / 恋の奴隷(奥村チヨ)
10. 草笛光子 / 行かないで(戸川昌子)
11. 大竹しのぶ / 人形の家(弘田三枝子)
12. 黒柳徹子 / 世界の子供たち(芦野宏)

このリストを見ただけで、還暦男の心は穏やかでなくなるだろう。どうだと言わんばかりの選曲にして人選。まいりましたの一枚だ。彼が手がけた12曲を12人の女優たちが個性豊かに歌う。編曲はいずれも昭和歌謡の王道を逸脱しない範囲で趣味のいいアレンジが施されている。こうして聴くと、当時の昭和歌謡という今となってはノスタルジックに語られる音楽が、実は歌い手の個性をよく表出させる曲そして編曲であったことに気付かされる。

ぼくら、あるいはもう少し上の世代にとって、なかにし礼はちょっとしたブランドだ。生まれ変わったら、なかにし礼的人生を経験してみたいとさえ思う。才能に恵まれ、時流に恵まれ、万事に粋、そして何より女にモテる(ここが重要)。二十代の学生時代からシャンソンの訳詩を手がけ、やがて歌謡曲の作詞家として名を成した。もちろん音楽への愛情も人一倍であったし、クラシック音楽への造形の深さも人後に落ちない。80年代半ばにはN響アワーで、芥川也寸志、木村尚三郎と組んで楽しそうに語り合っていたのを思い出す。
このアルバムがリリースされた数年前、なかにし礼は食道がんが再発したことを告白した。幸いその後回復に向かい、近年再び活動をしていた。 合掌


桃井かおり<グッド・バイ・マイ・ラブ>


水谷八重子<時には娼婦のように>


泉ピン子<石狩挽歌>


N響アワーでの三人衆。今やこんなおしゃべりが楽しめる番組は望むべくもない。



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S・アサド「ギターの為の水彩画」



気付けば12月も下旬。今年も残すところ1週間。カレンダーを眺めてあらためて溜息をついてしまった。早いよなあ…。
さて、きょうも年末納期仕事に鋭意取り組み、7時を少し回って帰宅。ひと息ついてアンプの灯を入れ、こんな盤を取り出した。


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以前も記事にしたことがあるアウグスチン・ヴィーデマンの弾く80年代ギター曲集。最近見かけないBMGグループの廉価盤レーベルARTENOVAの1枚。収録曲は以下の通り。

ローラン・ディアンス
Libra Sonatine (1982)
 •India •Largo •Fuoco
セルジオ・アサド
Auquarelle pour gitarre (1986)
 •Divertimento •Valseano •Preludio e toccafina
ジョー・ザヴィヌル
 •Mercy, Mercy, Mercy (arr. 1989, Helmut Jasbar)
レオ・ブローウェル
EI decameron Negro (1981)
 •La arpa del guerrero
 •La huida de los amantes por el valle de los ecos
 •Ballada de la doncella enamorada
武満徹
•All in Twilight-Four Pieces for Guitar (1988)

ついこの間の80年代…と思っているのはぼくらのような年寄り世代だけで、紛れもなくすでに30年以上が経過している。この間にディアンスも、<黒いデカメロン>そして武満徹<すべては薄明の中に>もすっかり定番曲になった。いくつかの曲を除き静寂が支配する音の世界が広がる。コンサートでこれらの曲だけを並べることはありえないだろうが、そこはCD。コンセプトとしてまとまりのよいアルバムに仕上がっている。ヴィーデマンのギターは柔らかな美しい音色で丁寧に弾き込んでいる。


202012_Assad.jpg


きょうはその中でセルジオ・アサド作曲の水彩画(Auquarelle)が耳に残り、楽譜を広げてさらってみた。といってもこの曲、簡単に初見で遊べるレベルの曲ではない。第2曲Valseana(ワルツ風に)は明確な調性感もあってニ長調のカデンツを意識しながら弾いていけば程々に遊べるが、前後2つ、第1曲Divertimentoと第2曲Preludio e toccafinaは、アマチュア中級の初見能力では歯が立たない。臨時記号に注意しながら恐る恐る手探りで弾いていくしかなく、楽しむところまで全くいかない。


「水彩画」の第2曲Valseana。単独でもよく演奏される美しい曲。


第3曲Preludio e toccafina


第1曲Divertiment 1994年生まれ秋田勇魚氏のデヴューCDから


ピアノソロによる第2曲Valseana


「水彩画」全3曲の楽譜付き音源



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メルヴィン・タンのベートーヴェン



先回の記事で久しぶりにベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴き、やっぱエエなあ、ベートーヴェン…と、いくつかの盤を立て続けに聴いてしまった。そんな中の一枚として、今夜はこんな盤を取り出した。


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メルヴィン・タン(1956-)のフォルテピアノ、ロジャー・ノリントン指揮ロンドンクラシカルプライヤーズによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集。80年代後半の録音。ピアノ協奏曲全曲と同じベートーヴェンの交響曲全集を合せたボックスセット。10年近く前に隣り町のタワーレコードで廉価盤CD1枚分の値段で叩き売られていた。今夜はこの中から第4番ト長調をプレイヤーにセットした。

ぼく自身は、5つあるベートーヴェンのピアノ協奏曲の中では第3番と並んでこの第4番をもっとも好ましい曲と感じていて、実際にプレイヤーする頻度も高い。全曲を貫く透明感、静けさ、落ち着き、憧憬…ベートーヴェンの数から楽曲に中でも独自の魅力を放つ曲だ。このコンビゆえのピリオドスタイルも第4番にこそ似つかわしい。

メルヴィン・タンが弾くフォルテピアノの音は歯切れよく、高速のスケールやアルペジオでも一つ一つの音が明瞭の分離し、ときおり放たれるアクセントでは鋭いくさびを打ち込む。また左手の打弦は思いのほか深い低音を響かせる。こうしてあらためて念入りに耳を傾けると、その表現の幅はモダンピアノよりずっと広いのではないかと感じるほどだ。ノリントン指揮LCPの音も、広がりと深さを感じさせる好録音も手伝って、この曲の魅力を十二分に伝えている。

このコンビによる第3番と第4番の音源。第4番は33分15秒過ぎから。音質はオリジナルCDよりかなり劣化している。


メルヴィン・タンによる演奏。ベートーヴェンが使ったというブロードウッド社のフォルテピアノを復元して弾いている。ベートーヴェン晩年の作品、6つのバガテルOp.126から後半の3曲。テレビのドキュメンタリーのようで音質が少々残念。



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ハスキルのベートーヴェン



この冬初めての本格的寒波到来で、今週は当地も寒い日が続いた。年末納期の案件も何とか目途が立ち休心。ホッとひと息の週末土曜日。昼をはさんで野暮用外出。夕方近くになって少し時間が出来たので、こんな盤を取り出した。


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クララ・ハスキル(1895-1960)によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調。イーゴル・マルケヴィッチ指揮ラムルー管弦楽団が伴奏を付けている。手持ちの盤は十数年前に今は無きフィリップスレーベルの廉価盤で出た際に手に入れたもの。同じベートーヴェンのソナタ第17番<テンペスト>と第18番も収められている。この盤、以前記事にした同じコンビによるモーツァルト第20番と24番の協奏曲に劣らず、昔から評価が高い。 1959年録音というから、各レーベルのステレオ録音もすっかり完成度が高くなった時期のもので、録音も優秀だ。マルケヴィッチ&ラムルー管の音色は柔らかく穏やかではあるが、音の解像度が高く清々かつ堂々と響く。編成もやや大きくしているかもしれない。低音部の安定した響きも十分だし、音場の広がりも申し分ない。もちろんハスキルのピアノの音色も美しい。

このハ短調の協奏曲は、同じ調性のモーツァルト第24番に似た印象的なオーケストラの導入部で始まる。第1楽章はハ短調という調性が持つ劇的な悲劇性というよりは、まるで静かに悲しみを堪えているかのように聴こえる。第2楽章も穏やかに歌うし、第3楽章もロンドも勢いに任せて突っ走るような気配は皆無。やや遅めのテンポをとり、オケ、ピアノともに実に丁寧に弾き進めていく。こう書くと何となく手ぬるい演奏のように思われそうだが、そうではない。オケもピアノも一つ一つのフレーズをかみ締めるように丁寧に扱っているといえばいいだろうか。もともとハスキルが持っていた資質に、マルケヴィッチがそれを引き出すようなサポートしているのだろう。

併録されているベートーヴェンのソナタも力で押す演奏ではなく、美しい音色と穏やかなフレージングが生きた演奏だ。あのチャールズ・チャップリンをして、「私の生涯に出会った天才はチャーチル、アインシュタイン、そしてハスキルだけだ」と言わしめた天賦の才に恵まれながら、若くして病魔に冒され、ナチスに追われたハスキルの過酷な人生を思うと、晩年のこれらの演奏を裏付けるものが分かるような気がする。


この盤の音源。協奏曲第3番全楽章。


併録されているソナタ第18番変ホ長調の第3楽章:メヌエット。亡くなる3カ月前1960年9月の録音。



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Author:マエストロ・与太
音楽とクラシックギターに目覚めて幾年月。道楽人生成れの果てのお粗末。

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