ハスキルのベートーヴェン



この冬初めての本格的寒波到来で、今週は当地も寒い日が続いた。年末納期の案件も何とか目途が立ち休心。ホッとひと息の週末土曜日。昼をはさんで野暮用外出。夕方近くになって少し時間が出来たので、こんな盤を取り出した。


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クララ・ハスキル(1895-1960)によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調。イーゴル・マルケヴィッチ指揮ラムルー管弦楽団が伴奏を付けている。手持ちの盤は十数年前に今は無きフィリップスレーベルの廉価盤で出た際に手に入れたもの。同じベートーヴェンのソナタ第17番<テンペスト>と第18番も収められている。この盤、以前記事にした同じコンビによるモーツァルト第20番と24番の協奏曲に劣らず、昔から評価が高い。 1959年録音というから、各レーベルのステレオ録音もすっかり完成度が高くなった時期のもので、録音も優秀だ。マルケヴィッチ&ラムルー管の音色は柔らかく穏やかではあるが、音の解像度が高く清々かつ堂々と響く。編成もやや大きくしているかもしれない。低音部の安定した響きも十分だし、音場の広がりも申し分ない。もちろんハスキルのピアノの音色も美しい。

このハ短調の協奏曲は、同じ調性のモーツァルト第24番に似た印象的なオーケストラの導入部で始まる。第1楽章はハ短調という調性が持つ劇的な悲劇性というよりは、まるで静かに悲しみを堪えているかのように聴こえる。第2楽章も穏やかに歌うし、第3楽章もロンドも勢いに任せて突っ走るような気配は皆無。やや遅めのテンポをとり、オケ、ピアノともに実に丁寧に弾き進めていく。こう書くと何となく手ぬるい演奏のように思われそうだが、そうではない。オケもピアノも一つ一つのフレーズをかみ締めるように丁寧に扱っているといえばいいだろうか。もともとハスキルが持っていた資質に、マルケヴィッチがそれを引き出すようなサポートしているのだろう。

併録されているベートーヴェンのソナタも力で押す演奏ではなく、美しい音色と穏やかなフレージングが生きた演奏だ。あのチャールズ・チャップリンをして、「私の生涯に出会った天才はチャーチル、アインシュタイン、そしてハスキルだけだ」と言わしめた天賦の才に恵まれながら、若くして病魔に冒され、ナチスに追われたハスキルの過酷な人生を思うと、晩年のこれらの演奏を裏付けるものが分かるような気がする。


この盤の音源。協奏曲第3番全楽章。


併録されているソナタ第18番変ホ長調の第3楽章:メヌエット。亡くなる3カ月前1960年9月の録音。



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