在宅勤務に加え、今週のように途中に休日を挟むと次第に曜日感覚があやふやになってくる。休みが二日続く土日でそのあやふやさを修正している感じだ。とまれ週末土曜日。訳あって少々念入りに部屋の整理と掃除をし、一段落したところで渋茶を啜りながら音盤タイム。たまたま目が合ったこの盤を取り出した。 オトマール・スウィトナー(1922-2010)とベルリン・シュターツカペレによるブラームス「ハンガリー舞曲集」。同コンビによる一連の録音では最後期に属する1989年録音。日本コロンビアとドイツシャルプラッテンとの共同制作による。手持ちの盤は例によってクレスト1000シリーズの廉価盤で出たときのもの。 音楽と人生の一場面が強烈に結びついているという経験は誰にでもあるだろう。きょう久々に取り出したこのブラームスのハンガリー舞曲は、ぼくにとってのそうした音楽の一つだ。具体的には高校1年の冬にフラッシュバックする。クラシック音楽を聴き始めた頃、一日のバイト代千円で買った廉価盤の中にあったハンガリー舞曲を、高校の入学祝いで買ってもらった山水のステレオで何度も繰り返し聴いた思い出がよみがえる。入学からまもなく1年経つというに成績は振るわず、ガールフレンドも出来ず、うつうつとして音楽を聴いていた。高校1年でハンガリー舞曲というのもいささか幼稚に過ぎるかもしれないが、こうして今、歳を重ねてから聴いてもハンガリー舞曲にはいつも心躍る。 手元にはライナー&シカゴ響(ドヴォルザークのスラブ舞曲を交えた抜粋盤)、カラヤン&ベルリンフィル他、いくつかの盤があるが、このスウィトナーとベルリン・シュターツカペレとの盤も格別の味わいだ。冒頭からドライブ感あふれる第1番、憂いに満ちたメロディーで始まる第4、5、6番はいうに及ばずだ。全21曲のうち演奏される機会の少ない後半の曲も民族的な色合いと古典的様式、そしてときに濃厚なロマンティシズムも織り交ぜ、それぞれに味わい深い。日本コロンビアの技術陣による「PCM録音」もノウハウを手中に収めた時期の録音で、スウィトナー&SKBの音色をよく捕らえいて素晴らしい。加えて歌劇場での現場経験が長いスウィトナーの解釈も、ときに即興的でドライブ感あふれるもので、文句なしに楽しめる名盤だ この盤の音源で第1番ト短調。VIDEO 同 第6番ニ長調。VIDEO 滅多に演奏されないが、憂愁あふれる第16番へ短調。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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きょうは建国記念の日で休日。昼をはさんで野暮用外出。三時少し前に帰宅した。夕方までの時間、部屋の片付けをしながら音盤タイム。ゆったり管弦楽の響きを聴こうかと思い、こんな盤を取り出した。 我々世代の日本のクラシックファンにとって最も馴染み深かった指揮者の一人ウォルフガング・サヴァリッシュ(1923-2013)とシュターツ・カペレ・ドレスデンによるシューベルトのハ長調交響曲「ザ・グレート」(昔は9番あるいは7番、最近は8番か)。1967年録音。手持ちの盤は70年代半ばに廉価盤で出ていたときのもの。 さきほどからアンプのボリュームを絞り気味にして聴いているが、スクラッチノイズはほとんど聴こえない。CDで聴いているといってもそれまでだろう。盤の状態がいいこともあるが、CEC製プレーヤー によるところも大きい。SN比が極めてよく、初めてこのプレーヤーで聴いたとき、そのキレの良さに驚いたものだ。このシューベルトの盤でもボリュームを控え目にしているにも関わらず、各パートが明瞭に聴き取れるし、その合間をぬって時おり響くコントラバスの低いピチカートもしっかりと聴こえる。 サヴァリッシュとドレスデンの演奏は終始穏やかだ。この録音のあと録られた同じコンビのシューマンの全集とはかなり趣きが異なる。もちろんチェリビダッケによるこの曲の演奏のような圧倒的な構築力やスケールと一緒に論じるつもりはないが、比べるといささか食い足らない感はある。しかしこれもシューベルの一面で、ウィーン風といえばむしろこのサヴァリッシュ盤の雰囲気が近いだろうし、ドレスデンの音も落ち着いた渋めの音に録られていて、滋味あふれる演奏という表現が適当だろうか。じっくりとこちらから聴きにいくタイプの演奏として捨てがたい魅力がある。 この盤の音源。全4楽章VIDEO ウィーンフィルとのライヴ。ドレスデン盤と比べるとテンポ速め、表情付けもやや濃い口だ。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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きょうは在宅勤務で終日ステイホーム。きっちり、しっかり仕事して(ホントか?)、宅内終業のあと少し時間があったので、先日のデイヴ・ブルーベックの夜想曲で思い出し、こんな盤を取り出した。 カーメン・マクレエ(1922-1994)とデイヴ・ブルーベック(1920-2012)の協演盤。1961年ニューヨークのクラブ「ベイズン・ストリート」でのライヴ録音。客の談笑やグラスの触れ合う音がバックに聴こえてきて雰囲気満点の一枚。収録曲12曲中11曲がデイヴ・ブルーベックの作曲によるもの。いずれも軽いスウィング感のジャズ王道スタイルの曲ばかり。 デイヴ・ブルーベックといえば「テイク・ファイヴ」ということになるが、この盤ではカーメン・マクレエによるヴォーカルヴァージョンのテイク・ファイヴが楽しめる。テイク・ファイヴは、チャイコフスキー悲愴交響曲の第2楽章とならんで5拍子のもっとも有名な曲のひとつだろう。両曲とも聴くたびに5拍子という拍子の自然さに感心してしまう。 相変わらず大アネゴ風情たっぷりのカーメン・マクレエだが、まだドスコイ状態までには至らない時期か、ときにチャーミングな表情もみせる。ライヴということもあってフェイクやシャウトもかなり大胆なところをみせて楽しめる。 この盤の音源で「In Your Own Sweet Way」VIDEO 同 「Take Five」VIDEO 人気のJUJUが歌う「Take Five」VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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きのうきょうと関東地方は暖かで穏やかな日和。いくつか野暮用をこなした他は、のんびりと過ごす。夕方になって部屋の片付けをしながら音盤タイム。久しぶりにこんな盤を取り出した。 デイヴ・ブルーベック作曲の「夜想曲集」。デイヴ・ブルーベック(1920-2012)といえば、5拍子のジャズ名曲「テイク・ファイヴ」の作曲者としてその名が知られているが、実際は中々多彩な活動をした人のようだ。このナクソス盤にはクラシカルなスタイルで夜想曲として作られた小品が25曲収められている。ジョン・サーモン(1954-)というピアニストが弾き、2005年に録音された。いずれも1、2分。長くても5分とかからない規模の曲。曲名の邦題をナクソスのサイトから書き写すと以下の通り。 ・夜想曲第1~17番 青いタホ湖/虹を見て/メキシコの郷愁 奇妙なメドーラーク/レクエルド/柔らかく、ウィリアム柔らかく 4番目における学習/コラール/舞台の奥のルンバ ブルエッテ/月は静かに/失われたワルツ 砂漠と不毛の土地/5本と10本の小さい指/舞い上がる 子守歌/ローラのいない家 ・少女の名前はオリィ ・夜想曲第18~21番 ジョシュア・レッドマン/オードリー/ウィーンの公園の記憶/琴の歌 ・ファッツさん ・夜想曲第22~24番 霧の朝/わかりました、サティ/眠るとき 「子供たちと粋な大人たちのために」書かれた作品だそうだ。ときにやさしく、ときにノスタルジックに、ときにジャジーに、様々な表情を持った小品群が夜想曲というコンセプトのもとに、静寂と安息のイメージをもって続く。アメリカのサティーとも言われたそうだが、さもありなんという曲調。クラシックの素養ももちろんあった人で、フランスのミヨーに師事していたこともあるそうだから本格的だ。つまりは後期ロマン派やフランス近代などの様式は身に付いているのだろうから、こうした小品はそれこそジャズのアドリブのごとく、とめどなくイメージが浮かんで、いくらでも書けたのかもしれない。甘口の小品集ではあるが、いずれの曲も気の効いたひと節があって、夜想曲のイメージ通り、ナイトキャップ代わりに数曲聴いて一日を終わるのは、粋な大人のたしなみとして中々上等ではないだろうか。 この盤の音源。「Blue Lake Tahoe」(青いタホ湖)VIDEO 同 「Strange Meadowlark」(奇妙なメドーラーク)VIDEO 同 「Lost Waltz」(失われたワルツ)VIDEO この盤の演奏者ジョン・サーモンの下記YouTubeチャンネルには多くのブルーベック作品の演奏が公開されている。https://www.youtube.com/channel/UCSLPXCRAf8FR90HAks9xPZA/featured ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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集めるともなしに集まった音盤幾千枚。中にはごくまれにしか聴かないジャンルのものもある。例えばシャンソンなどはそのたぐいだ。イヴ・モンタン、アズナブール、金子由香利らの盤が何枚かあって、時々聴いてみようかと思いながら手に取るまでに至らず終わることが多いのだが、きょうは何故か心定まり、目にとまったこの盤を取り出した。 シャンソン歌手:渡辺歌子のコンサートライヴ盤。かれこれ二十年程前、当地駅前にあった大手スーパー内の新星堂で見つけて手に入れた。新星堂が設立したオーマガトキというインディーズレーベルから出ていた盤。当時オーマガトキからはワールドミュージックほか興味深い盤が随分リリースされていたことを思い出す。この盤は駅前のその店をブラブラしていて、黒髪をかき上げる女性歌手の姿にクラッときてそのままレジに持っていった。しかしジャケットだけに留まらず、中身も期待に違わぬ素晴らしいライヴ盤だった。収録曲は以下の通り。 1. 恋のロシアン・カフェ 2. すりきれたレコード 3. 息子が戦争に行く時 4. スカーフ 5. 時は過ぎ行く 6. 想い出のマリッツァ 7. 最終のトロリーバス 8. 蟻 9. ジョリ・モーム 10. いつかの二人 11. 水に流して 12. 声のない恋 13. ウィスキーが水に 14. 過ぎ去りし青春の日々 15. 赤いポスター プレイヤーのプレイボタンを押すとほどなく会場のざわめきが聴こえてくる。そして美しく優しさに満ちた声でMCが始まる。「みなさま、こんにちは。東京はもうすっかり秋の模様替えをすませておりますけれども…」。やや大きめの音量でリアルに聴くと、まるで自分にだけ語りかけてくれているのではないかと、勝手に錯覚したくなる魅力的な声だ。 シャンソンについて何も知らないぼくは曲を一つ一つ説明することは出来ないが、シャンソンの定番曲に加えて彼女自身が詩をつけたオリジナルも交え、ときに耳元でささやき、ときに高らかに歌う。思えばこの盤が収録された1987年からすでに三十年以上経ている。当時彼女はまだ30代半ばだろうか。若やいだ雰囲気の中にも大人の色香を感じさせ、ジャケ買いの中年オジサンのハートをわしづかみだ。黒いドレスの佳人が黒髪をかき上げながら切ない恋の想いなど歌うの聴いていると、ヨッシャ!わしがなんとかしたるでぇ…と鼻息が荒くなってしまう。(…雰囲気ぶち壊しの妄想でスミマセン) 手持ちの盤からアップした。「恋のロシアン・カフェ」VIDEO 同 「過ぎ去りし青春の日々」VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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きょうは立春。まだまだ寒い日があるものの、夕方の明るさに春の兆しも感じる。 週半ばの水曜日。今週も相変わらず在宅勤務と通常出勤の組み合わせシフトで業務遂行中。きょうは出勤。年度末3月納期の案件がそろそろ気になるところだが、焦っても仕方ないと勝手に店じまい。7時を少し過ぎた頃に帰宅した。ひと息ついて、さて…先月の三シバリから解放されたので、今夜はこんな盤を取り出した。 久しぶりのジャズ。それもド定番中のド定番。名前を挙げるのも恥ずかしいほど有名な「Cool Struttin'」。ソニー・クラーク(1931-1963)のリーダーアルバムにして、おそらく日本でもっとも多くのセールスを記録した盤の一つ。1958年録音。手持ちの盤は90年代初頭の輸入盤。収録曲ほか以下の通り。 1. Cool Struttin' 2. Blue Minor 3. Sippin' At Bells 4. Deep Night 5. Royal Flush 6. Lover ソニー・クラーク(p)、アート・ファーマー(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、 ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) (5.6.はこの盤のみのボーナストラック) 50~60年代ジャズアルバムのジャケットデザインは、当時の気鋭デザイナーの手による力作が多い。この盤のジャケットもそうした印象的なものの一つだろう。朝のNYの街をこれから仕事に向かうのだろうか、タイトスカートとヒールで歩く女。その向こうにはコートをまとった男…。いくらでもストーリーが浮かびそうなデザイン。 ソニー・クラークは当時米国ではほとんど無名といってもいい存在だったそうだ。日本でのこの盤の売れ行きに、当のブルーノート社は驚きをもって接したという。それはともかく、この盤が日本人好みであることに間違いはない。第1曲のタイトルチューン<Cool Struttin'>のミディアム・スローでジャズの流れに身体を慣らし、その後は軽快なテンポの曲が続く。いずれもメロディーが明快でコード進行も分かり易い。難解な語法はほとんどなく、すんなり耳に入ってくる。根っから陽気という感じではなく、適度な暗さと湿度感がある。純粋に曲の成り立ちや個々のプレイに聞き耳を立てると、少々食い足らない感が無きにしもあらずだが、トータルとして万事中庸を好むマイルドな日本人気質にジャストフィットだろう。 <Deep Night>VIDEO <Sippin' at Bells>VIDEO <ジャズの100枚>と称する企画 のプロモーションにこの盤が選ばれMVが作られた。起用されたのはこの人。VIDEO 同メイキング。こうなると、もう曲はどうでもいいかぁ(・_・;…VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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月があらたまって令和三年如月。まだまだ寒い日が続くが、まもなく節分そして立春だ。コロナ禍であらゆることが変則を余儀なくされているが、せめて気分だけでも暦を感じたいものだ。さて今月最初の音盤。一昨年、三十数年ぶりの再会した中学・高校と同窓だったH君から借り受けたこの盤を取り出した。 ポール・ガルブレイス(1964-)が自ら考案した「ブラームスギター」で弾いたバッハ作品集。リュート作品として知られるBWV995から998が収められている。2000年録音。旧友H君はこの盤を仕事で米国に数年間滞在していたときに見かけて手に入れたとのこと。ガルブレイスのHP に詳しいが、このチェロのように構える8弦のブラームスギター(命名の由来についても同HP参照)は80年代終わりから90年代初頭に考案されたそうだ。エンドピンを持ち、更にエンドピンの先には音響ボックスがある。8本の弦は通常の6弦のギターに対して高音側、低音側両方に拡張(±4度)されている。また低音弦側に向かって弦長が長くなっているので、フレットが平行ではない。この楽器のアイデアはおそらく古楽器オルファリオン によっているのではないかと思う。 三次元的にどんな状態なのか、実物に触れてみないとにわかには分からない。それにしてはYOUTUBEで見るガルブレイスの演奏ぶりを見ると、極めて自然に弾いている。この盤で聴くバッハ演奏も楽器に起因する不自然さは感じない。むしろ6弦ギターによるバッハに比べ、弦数が増えることで高音、低音とも左手の動き、特にポジション移動は少なくて済むし、また音響面でも6弦ギターにありがちなハイポジションでのつまりや音程の不安定さから解放されるメリットも感じる。エンドピンを受ける共鳴箱の効果や、拡張された低音弦の効果で全体に音の響きが豊かに聴こえる。一方、右手のタッチは腕や手首の重さを載せることが出来なくなるためか、音一つ一つのエネルギー感はやや希薄になるようだ。横に構える通常にギターで適切なタッチで弾いたときのような浸透力のある音は出にくいように感じる。 ガルブレイスはちょうど一年前に来日し、都内で演奏会を開いた 。コロナ禍がまだ本格化する前のタイミングで、ぎりぎり実現したのだろう。いずれまた機会があれば実演に接してみたい。 BWV997からFugaとDoubleをアップした。VIDEO アルベニス「セヴィーリャ」VIDEO スクリャービンの前奏曲を4曲弾いている。Op.16-4はアレクサンドル・タンスマン「スクリャービンの主題による変奏曲」のテーマになったもの。VIDEO ■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■ ■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■にほんブログ村
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