徳永兼一朗(Vc)



時々下手くそなギター演奏や手持ち音源の断片などをYouTubeにアップしている。まったく脈絡なく記録保存しているだけのチャンネルなのだが、このところ登録者が増えてきた。もちろん世のYouTuberなどとは比較にもならないが、長らく50名に満たなかったチェンネル登録者が今年に入ってから少しずつ増え、現在170名ほど。何がきっかけなのか調べてみると、どうやら以前アップした徳永兼一朗の音源であることが分かった。…というわけで、きょうはその音源の盤を取り出すことにした。


202102_Tokunaga.jpg


NHK交響楽団チェロ首席奏者だった徳永兼一郎(1941-1996)の弾く小品集。
70年代から80年代のN響にテレビで、あるいは時にはライブで接してきたぼくには、いくつかの懐かしい顔がある。コンサートマスターの田中千香士・徳永二男、ホルンの千葉馨やフルート小出信也・宮本明恭、クラリネットの浜中浩一等々。当時の各パートトップの顔が今も浮かんでくる。そして指揮台には岩城宏之、外山雄三、サヴァリッシュ、スウィトナー、マタチッチ、ブロムシュテット。名前を連ねるだけで当時の空気まで思い出す。そんな中の一人にチェロの徳永兼一郎がいた。同じ頃コンマスだった徳永二男の兄にあたる。その彼がまだ若かった70年代初頭に録音した小品集。神谷郁代のピアノ伴奏。1971年2月東京青山草月会館ホールでの録音。収録曲は以下の通り。お馴染みの小品が並ぶ。

1.サン=サーンス:白鳥
2.フォーレ:夢のあとに
3.バッハ/グノー:アヴェ・マリア
4.ベートーヴェン:メヌエット ト長調
5.カサド:愛のことば
6.ルビンシュタイン:ヘ調のメロディ
7.ポッパー:ハンガリー狂詩曲
8.ヘンデル:ラルゴ
9.メンデルスゾーン:歌の翼に
10.バッハ:アリオーソ
11.ケーンズ:スケルツォ Op.12-2

チェロトップの彼はいつも指揮台のすぐ前に座り、実によく指揮者を見ていた。そして「燃えない、冷静、エリート臭い」と言われた当時のN響メンバーの中にあって、ときに抱えたチェロがほとんど垂直になるほど身体を前のめりにし、ひとり気を吐いていた。しかし彼はそのキャリアのピークに癌に侵され、1996年5月に55歳で世を去る。亡くなる直前、入院先のホスピスで最後の力を振り絞って演奏する彼の姿がNHKで放映されたのを覚えている輩も多いだろう。この盤は1971年彼が30歳のときの録音で、チェロの有名なショートピースを演奏している。オンマイクの録音がより一層リアルにチェロの音をとらえ、目前に彼がいるかのような錯覚におちいる。録音当時30歳の彼は正に前途洋々であったろう。その後の悲劇など彼自身はもちろん、誰も知る由もない。アルバムジャケットのこれ以上ないほどの素晴らしい笑顔をながめ、そしてチェロの美しい小品を聴いていると思わず胸が詰まる。小品集でありながら慰安として聴くには重いこのアルバムではあるが、ときに取り出したくなる貴重な記録だ。

<付記>
この盤でピアノ伴奏を弾く神谷郁代は、隣り町群馬県伊勢崎市出身であることを付記しておく。


手持のCDからアップしたもの。夢のあとに、ヘ調のメロディー、アリオーソの3曲。動画に対する高評価数=107はアップしている動画中最高値。いずれ続編をアップしようか…


スウィトナー&N響による「魔弾の射手」序曲。ホルンの序奏に続き、3分前後から徳永兼一郎率いるチェロセクションの登場。


NHKで放映されたもの



■ にほんブログ村ランキングに参加中 ■
■↓↓↓バナークリックにご協力を↓↓■
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
関連記事
プロフィール

マエストロ・与太

Author:マエストロ・与太
ピークを過ぎた中年サラリーマン。真空管アンプで聴く針音混じりの古いアナログ盤、丁寧に淹れた深煎り珈琲、そして自然の恵みの木を材料に、匠の手で作られたギターの暖かい音。以上『お疲れ様三点セット』で仕事の疲れを癒す今日この頃です。

カレンダー
01 | 2021/02 | 03
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 - - - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
検索フォーム
月別アーカイブ
QRコード
QR
閲覧御礼(2010.10.01より)